小学校就学前の幼児期は脳・身体が急成長し、人格形成の基礎が培われる期間。幼児教育は学習・運動・コミュニケーション能力など「人生を生きていく力」を養います。幼児教育によって脳と心身をバランスよく形成するには、いつ頃からどのように始めれば良いのでしょうか。
幼児教育とは
幼児教育というと、英会話・四則計算・漢字の読み書きなどの早期教育を思い浮かべるパパママも多いかもしれません。あるいは水泳・ダンス・将棋・プログラミングのような「習い事・お稽古」を未就学児にさせることを幼児教育とする考え方もあります。
文部科学省の定義によると、幼児教育の意義と役割については以下のとおりです。
幼児教育とは,幼児に対する教育を意味し,幼児が生活するすべての場において行われる教育を総称したものである。具体的には,幼稚園における教育,保育所等における教育,家庭における教育,地域社会における教育を含み得る,広がりをもった概念として捉えられる。
幼児教育は費用対効果が高い?
脳科学において「5歳までの教育で脳の基礎が完成する、子どもの地頭が良くなるかどうかは5歳までが勝負」という定説があるように、脳の80%は5歳までに完成します。この時期はスポンジが水をぐんぐん吸収するように、知識・経験を糧に脳が急成長していくのです。
また心身を使った遊び・スポーツを行うほど頭と体の連携がスムーズになり、将来の運動機能がぐっと底上げされるという研究も。幼児期に適切な生活・学習習慣・スポーツ・音楽・芸術などに触れることは、中学生以降に同じ教育するよりも効率的と言えるでしょう。
習い事・おけいこ以外の日常生活や遊びのなかにも、幼児教育の機会はたくさんあるはず。五感を刺激する体験、楽しさ・幸福感を実感できる遊びは、脳の神経伝達物質「ドーパミン」の分泌を活発にします。ドーパミンは運動・ホルモン・快の感情・学習意欲などに関わるもの。幼児期にドーパミンを分泌しやすい脳を育成することで、「EQ(生きる力)」と「IQ(知能指数)」の高い人に育ちやすくなります。
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幼児教育にはどんなものがあるの?
さまざまな幼児教育のなかから、どれを選んだら良いかわからないというパパママもいるのでは。0歳から始める早期幼児教育もありますが、一般的には2歳くらいから始める家庭が多く見られます。
幼児教育を始める時期は、教育内容・レベルが子どもの成長に合っていれば1歳からでも問題ありません。お子さまとご家庭の教育方針に合った幼児教育を選んで、能力・可能性を広げるきっかけにしましょう。
幼児教室
未就学児を対象にした教育施設です。読み・書き・計算など知識詰め込み型の「勉強」教室よりも、音楽・お遊戯・集団遊びを行う情操教育がメインの教室が多く見受けられます。
小学校受験を見据えた学習を取り入れた教室では、遊びながら知識を深めるのが特徴。子どもの自主性を尊重し、主体的な学びを目指しています。家庭とは違う環境で他の子と学べるため、社会性・コミュニケーション能力を高めることもできるでしょう。
幼児教材
生活習慣・一般常識・就学前の基礎学習など、教材を使って学びます。通信教育(紙・タブレット)や市販のドリル、DVDとテキストなど形態はさまざま。子どもの年齢・成長に合わせて教材を選べるのがメリットです。保護者の見守るなかで学習することで、集中力向上・情緒の安定が望めるでしょう。
子どもの体調・機嫌の良いときにいつでも行える半面、親子ともに「続ける努力」が必要になります。
習い事
水泳・バレエ・将棋・プログラミング・英会話ほか、心身を使うスポーツ・論理的思考力を磨くゲーム・母国語以外の言語など「家庭で正しく、深く教えることが難しいこと」を専門家から習います。どの習い事が子どもに向いているのか見極めるには、複数の習い事に体験入学するのも一案。好奇心・探究心が強い幼児期にいろいろな体験をさせた結果、子どもの特性を見つけることにもつながります。
ただし、どんな習い事もすぐに上達するとは限りません。「ほかの子どもと比べてできが悪い」からといって、すぐに不向き・不得意と判断しないようにしましょう。子どもが楽しんでいるようなら続ける価値はあり、目先の結果にとらわれず継続することで花開く才能もあります。
幼稚園や保育園=幼児教育ではない?
保育園・幼稚園の定義は以下のとおりです。
保育園:保護者の委託を受けて乳幼児を保育する施設
幼稚園:幼児の保育・適切な環境下で心身の健やかな成長を促進する施設
これだけ比べると保育園は保育を、幼稚園は保育と学びを目的としているように見えますが、実際は園によって教育方針・内容が大きく異なります。リトミックや英会話に力を入れている保育園もあれば、外遊び中心ののびのびした幼稚園もあるでしょう。
最近の幼稚園・保育園では読み書きや計算のほかに、英語・水泳・リトミックなどの課外活動を行うところも多いもの。そうなると、あえて教室・教材を利用する必要はない気がするかもしれません。
幼稚園・保育園に共通する点は「集団保育」であること。いかに子どもの個性を尊重し、きめ細やかな指導内容の園であっても「さまざまな能力の中央値に合わせた教育法」になりがちです。子どもの個性・特性を見つけ伸ばしていく適切な方法は、家庭や外部施設における幼児教育で見つかりやすいとも言えます。
そもそも幼児教育は必要?
幼児期は「脳と体の能力・可能性を最大限に伸ばすための基盤作り」の時期。特に周囲の大人や兄弟姉妹、友人との関わりから生まれる幼児教育が必要です。親や祖父母から生活習慣や一般教養を学ぶことで、生きる力を身につけることができます。また同世代の子どもたちと幼稚園・保育園・幼児教室などで関わることで、協調性・共感力・コミュニケーション能力を伸ばせるでしょう。
体全体を使った外遊びも重要な幼児教育です。鬼ごっこ・ボール投げ・フラフープなど、できるだけ多くの遊びを経験させることは反射神経・持久力・瞬発力を高め、運動能力を伸ばします。
子どもが楽しんでいることが大事
勉強系・芸術系・スポーツ系、どんな幼児教育を行うにせよ「子どもが楽しむこと」が一番大事です。楽しみを継続して行うことで集中力が育ちます。
文化人・スポーツ選手など各界で活躍する人は、幼児期に「熱中できること・得意なこと」があったという人も少なくありません。幼児期に集中力を伸ばし、自己肯定感・達成感を繰り返し感じることで「EQ(生きる力)とIQ(知能指数)」を高めていけたのでしょう。
2019年10月から幼児教育・保育が無償化に
少子化対策・子育て支援政策の一環として、2019年10月から幼児教育・保育が無償化になります。ただし全未就学児のすべての幼児教育・保育が無償化というわけではありません。利用する施設ごとに上限額が定められていて、その範囲内での補助となります。
【幼稚園・認定子ども園・認可保育所など】
住民税非課税世帯の0歳~2歳、3歳〜5歳が無償。一部の無償化対象外の幼稚園は月額25,700円を上限に無償化になります。
※幼稚園の一時預かり・延長保育などは「自治体からの認定がおりた児童」に限り、月額11,300を上限に無償化
【認可外保育所・認可外保育サービス(ベビーホテル・ベビーシッター利用など)】
3歳〜5歳児は月額37,000円を上限に無償化。住民税非課税世帯の0〜2歳児は42,000円を上限に無償化されます。
また無償化対象となるのは施設利用料のみです。給食費・教材費・通園パスなどの費用は対象外となります。
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五感を使う幼児教育で可能性を広げよう
我が子が賢くあって欲しい、できれば運動の面でも苦労しないで欲しい、親なら誰しも願うことかもしれません。勉強も運動もそつなくこなす子は、集中力・思考力が高く、脳と体の使い方が効率的です。この能力を伸ばすなら、幼児期に五感を刺激する幼児教育を行うことが有効になります。
英会話教室・学習塾・幼児教室などで知見を広げることにも意義はありますが、日常生活のなかでの幼児教育も大切。パパママの読み聞かせや粘土遊び、おえかき、外遊びなど「五感を使って楽しめるもの」をできるだけ多く経験させることが子どもの能力を高め、可能性を広げてくれるでしょう。