学校の授業時間が短いにも関わらず、世界トップクラスの学力を維持しているフィンランド。教育レベルだけでなく、子どもの幸福度も非常に高いことから、今注目が集まっています。フィンランド教育の特徴や、メリット・デメリットをご紹介します。
世界一のフィンランド教育とは?
経済協力開発機構(OECD)は、3年ごとに学習到達度に関する国際調査「PISA(Programme for International Student Assessment)」を実施しています。この調査は、各国の15歳児を対象に、読解力、数学的リテラシー、科学的リテラシーを測定するものです。
PISAの国際ランキングにおいて、2006年の調査では、フィンランドは読解力は2位、数学的リテラシーは2位、科学的リテラシーは1位と、世界トップクラスの成績をおさめました。
また、2018年の国際英語能力ランキングも8位と非常に高く(日本は49位)、多くの国民が英語を話せます。
1960年代には低迷していたフィンランドの子どもたちの学力ですが、学校や教師に大きな裁量権を認めるといった先進的な教育改革を進めた結果、学力の大幅な向上に成功したのです。
フィンランドの教育制度
大学まで授業料は無償
フィンランドでは、初等教育の1年前から始まる就学前教育学校から大学院まで、学費はかかりません。
お金の心配をすることなく、子どもたちは教育を受けられます。
なおフィンランドにおいては、有料にはなりますが、親の就労状態に関わらず0歳から保育園に通うことが可能です。
就学前教育学校(エシコウル)が保育園と小学校をつなぐ
エシコウルは、年長児(6歳児)を対象とした、小学校入学前の準備教育をする施設です。
保育園や小学校に併設されていることが多く、子どもたちが幼児教育から学校教育へスムーズに移行できるよう配慮されています。
7~16歳までが基礎教育(Basic Education)
多くの学校は小中一貫校で、基本的に同じ学校で9年間過ごします。
高等教育は単位制
普通高校は、大学のような単位制です。生徒は自分で学習計画を立て、3年ほどかけて必要単位を取得します。
職業高校では、学校や職場などで職業訓練を受け、就職に必要なさまざまな資格の取得を目指します。
大学は学士課程と修士課程がセット
実践的な力を重視する応用科学大学(ポリテクニック)もあり、こちらは3~4年半かけて学習・実習を行い、学士号取得後に3年以上就労すると、修士課程への出願が認められます。
フィンランド教育の特徴
平等主義・格差のない教育
また、各学校で優劣が生じないよう、均一のレベルを保つための制度も整えられています。
どのような経済状況でも、どの地域に住んでいても、子どもたちが平等な教育を受けられるように配慮されているのです。
優秀な教員による自律性の確保
大学の教育専攻に合格できるのは10~50%程度ともいわれており、教員は高度な教育を受けた専門家として尊重されています。
全国共通のカリキュラムはあるものの、学校の教員の裁量権は大きく、教員の自由な発想や計画で教え方を決めることができます。
「ボランティア追加基礎教育(Voluntary additional basic education)」が設置
通常、基礎教育課程は9年間ですが、もう少し勉強をしたい、自分のキャリアについてもっと考えたいといった場合は、ボランティア追加基礎教育(Voluntary additional basic education)という「10年目」を追加できます。
ボランティア追加基礎教育は、留年のようなマイナスイメージではなく、学びの質を担保するためのセーフティネットであり、ポジティブなものとして受け止められているそうです。
成功したゆとり教育
他国と比べると学校で過ごす時間が短いため、子どもたちは脳を十分に休ませて、自由な時間を楽しむことができます。
クロスカリキュラム
実際の社会で起きる問題は、複合的な要因がからみあっているものです。各教科の内容を連携させて効果的に理解させるとともに、得た知識を組み合わせて問題解決のために使うことで、より実践的な学習が行えます。
フィンランド教育を支える力
読書量が多い
図書館も多数あり、自由時間も多いので、自発的に自分の興味のある本を選んで読む子どもたちが多いようです。
マインドマップ導入で高度な読解力が身につく
マインドマップとは、紙の中心に主題を書き、そこから放射状に線とキーワードを書いていく、思考プロセスを反映したノート術のこと。
マインドマップを活用することで、子どもたちは読解力や思考力を鍛えることができます。
フィンランド教育のデメリット・問題点
校則やルールがほとんどなく自由すぎる
そのため、授業中におしゃべりをしたりスマートフォンを触ったりする生徒も中にはいます。
もちろん教師は都度注意をしますが、生徒の自主性にゆだねられている部分が多いため、厳しくしかることは少ないようです。
競争意識が低い
マイペースに勉強が進められるという点ではメリットですが、競争意識が育ちにくいという意味においては、デメリットともいえるかもしれません。
天才が生まれにくい
そのため、より高度な教育を求めて海外の大学を目指す学生も少なくないようです。
日本の公教育とフィンランド教育の違い
子ども中心の教育
一方で、フィンランドでは義務教育のときに留年するのは珍しいことではありません。「わからない部分があるのならきちんと理解してから上の学年に上がった方がいい」と、留年は前向きにとらえられています。
日本の「履修主義」に対して、フィンランドは「修得主義」。フィンランド教育では、「すべての子どもが等しく理解するまで学べる」仕組みを大切にしています。
「違い」「個」を大切にするフィンランド教育
一方でフィンランド教育は、子どもたちの違いや個性を引き出し、伸ばすことに重きを置いているそうです。
美術や演劇、音楽といった「正解のない科目」を、フィンランド教育では大切にします。
子どもたちが自分の創造力を思う存分発揮して、それを互いに認め合うことで、豊かな個性を尊重できる人の育成に努めているのです。
日本でフィンランド教育が受けられる園
ムーミンのキャラクターを「大使」として採用し、子ども1人ひとりに合わせた教育(パーソナライズド・ラーニング)をベースに、質の高い早期教育の実践を目指しています。
幼児教育の重要性に注目が集まっている今、フィンランド教育を取り入れた園も増えてくるかもしれませんね。
フィンラインド教育のメリットを取り入れてみよう!
・読書の機会を増やす
・子どもの進度にあった学習ペースを守る
・マインドマップを活用する
・創作活動や芸術に触れる機会を設ける
こういった方法を通じて、フィンランド教育が大切にしている「子どもを中心とした学び」の環境を整えることができるでしょう。
家でできそうなことから、ぜひ取り入れてみてはいかがでしょうか。