新型コロナウイルスの流行により、国内外のウイルス感染の正しい防ぎ方に興味を持っているご家庭も多いでしょう。筆者が住むオーストラリアでの、感染拡大を防ぐために個人で気をつけるポイントを紹介します。人にうつさない方法や心がけについて、日本の違いも考察しています。
オーストラリアのウイルス感染対策は?
2019年12月に中国で発生し、世界各国で感染者が増えている「新型コロナウイルス」。日本国内でも陽性者の報告が後を絶たず、どんな対策をすべきかと情報を集めているご家庭も多いでしょう。
筆者は西オーストラリア州・パースに住んでいますが、こちらでも、新型コロナウイルスは、一般市民の大きな関心を集めています。
今回の新型コロナウイルスに限らず、オーストラリアでも、毎年季節性のインフルエンザが流行します。しかし、日本と違って、こちらでは、そのような時期でもマスク姿の人を街中で見かけることは滅多にありません。オーストラリアの人々は、どんな対策をしているのでしょうか?
この記事では、「オーストラリアで行われている、個人で感染症を防ぐためにできること」を、日本との違いに注目しながら紹介します。
感染を防ぐための基本的な行動とは
・手を衛生的に保つ
・くしゃみや咳のしかた
が挙げられています。
手洗いはこまめに行い、石鹸と流水を使って20秒以上行います。水が使えない場合は、アルコールハンドジェルを使ってもよいです。
咳やくしゃみをする時は、ティッシュで口と鼻を覆います。使ったティッシュは、すぐにゴミ箱に捨てること。ティッシュがない場合は、下の絵のように、二の腕やひじで口を覆う方法があります。このような方法は、こちらの幼稚園や学校でも教えられています。
Infection Control – Cover Your Cough and Sneeze
手で口をカバーする人も多いですが、【手を使ってはいけません】。やむを得ず手を使った場合は、すぐに手を洗いましょう。
他にも注意すべきこととしては、目、口、鼻を触らないようにしましょう。
症状がありそうな人と近距離での接触は避けます。目安は、最低でも1メートル以上の距離を取ること。同様に、自分が感染しているかもしれない場合は、人と接近しないようにします。
これらは、インフルエンザの予防策と同じです。
参考
Novel coronavirus (COVID-19)– information for Western Australians
https://healthywa.wa.gov.au/Articles/A_E/Coronavirus
西オーストラリア州のサイト Healthy WA。新型コロナウイルスに関する情報を、家庭向けに発信。
We don’t need face masks for coronavirus. But there are other ways to protect ourselves – Health – ABC News
https://www.abc.net.au/news/health/2020-02-17/coronavirus-face-masks-hygiene-prevention/11958878
マスク以外で、ウイルスから私たちを守る方法を紹介している、オーストラリア放送協会(ABC)のニュース記事。
オーストラリアではマスクはしない?
日本では、インフルエンザなどウイルス性の病気が流行すると、多くの人が予防のために「マスク」をつけますが、オーストラリアでは、一般の人がマスクをつけることは滅多にありません。
こちらでは、(医療従事者でない)一般の人で、感染が疑われるような症状がない人が、予防のためにマスクをつける必要はない、といわれています。
では、一般の人は、どんな時にマスクをつけるべきでしょうか?
・健康な人でも、ウイルスに感染している人(またはその疑いがある人)を看護する時にはマスクをつける必要がある
・もし自分が感染している可能性があり、人と接触しなければならない場合は、マスクをする必要がある(感染して自宅療養している最中に、病院へ処置を受けにいかなければならない場合など)
以上の2パターンとされています。
「うつらない」より「うつさない」が大切
筆者はオーストラリアに住んで7年になります。その間、毎年インフルエンザが流行する時期にも、誰もマスクをしていませんでしたが、周りの子が次々と感染したり、日本のように学級閉鎖をしたりするような経験はまだありません。
筆者個人の推測として、こちらではワクチン接種が薬局で手軽に受けられることや、人口密度が低いこと、などが原因だと考えられますが、加えて、日本のように「具合が悪くても、がんばって学校や仕事に行く」という文化がないからでは?と思います。
体調が悪い場合、無理に学校や仕事へは行かず、休む人が多いです。学校では、他の児童への感染を防ぐため、体調が悪い子は休ませるように言われます。先生も、具合が悪くなると途中で帰り、その後お休みします。
職場では、有給休暇の他に「病欠」が取得でき(フルタイムの場合で年10日)、自分が病気の時のほか、病気の家族を看護する時にも使えます。そのため、自分や子どもの病気のために有給を使わなければならない日本の労働環境と比べ、休みやすいといえます。
また、効率重視の働き方なので、上司も、部下には病気で朦朧としながら仕事されるより、しっかりと治してから実力を発揮してほしい、という考え方があるかもしれません。
一つ言えることは、人にうつす可能性のある病気にかかったら、「周りにうつさないために休む」ことが個人の取るべき行動だ、という考え方があるのではないかと、筆者は感じます。
人にうつさない方法も家庭で話し合おう
オーストラリアの感染症対策を見ていると、感染しないために個人でできることは、実は身近での小さな対策が主であり、一人一人の「他人を感染させない行動」が同じくらいに、あるいはそれ以上に重要なのでは、と筆者は感じました。
今回の新型コロナウイルスのような流行があると、誰もが不安になり、自分がうつらないためにどうしたらよいか、と考えます。しかしながら、同時に「人にうつさないように気をつける」ことも欠かせません。社会全体がその意識を共有することによって、結果的に自分や家族が守られます。
新型コロナウイルスの場合は、感染してもすぐに症状が出ない場合があり、予防を難しくしています。そのため、過去の渡航歴や感染者との接触から感染の可能性があると思われる人は、「症状がなくても、仕事や学校、お店や旅行などに行かず、14日間自宅に留まる」よう、オーストラリア政府は求めています。
この機会に、「自分を感染から守る方法」と同時に、「人にうつさない方法」についても、ご家庭で話し合えるとよいですね。