2017年10月02日 公開

『小学校入学前にことばの力をつける魔法の本棚』はどう作る?

『小学校入学前にことばの力をつける魔法の本棚』の著者は、国語の授業、また受験問題が良問だと評判の有名私立「麻布学園」の国語科教師で、一児の父。教師として、親としての経験をもとに、「ことばの力」とは何か、小学校入学前、入学後に、絵本の読み聞かせなど家庭でできることがまとめてありますよ。

『小学校入学前にことばの力をつける魔法の本棚』の著者は、国語の授業、また受験問題が良問だと評判の有名私立「麻布学園」の国語科教師で、一児の父。教師として、親としての経験をもとに、「ことばの力」とは何か、小学校入学前、入学後に、絵本の読み聞かせなど家庭でできることがまとめてありますよ。

ことばを大切にしながら子育てを楽しむために

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タイトル:小学校入学前にことばの力をつける魔法の本棚
著者:中島克治
出版社:小学館
2013年に発行された本ですが、SNSの絵本好きな方たちの間で、必読書として話題になっていたので、読んでみました。『できる子は本をこう読んでいる 小学生のための読解力をつける魔法の本棚』(2009)『中学生のための読解力を伸ばす魔法の本棚』(2011)に続く、シリーズ3冊目にあたります。

「ことばの力」とは何か、小学校入学前、あるいは入学後に、家庭内でできることがまとめてあります。

御三家中学の一つで、入試問題が良問だと評判の麻布学園。さらに、国語教育には定評がある名門です。そんな麻布学園の国語科教師で一女の父でもある中島さんが書かれた本、とあっては期待も高まりますが、「いい学校」に入れるための受験に役立つことばの力をつけることを薦める本ではありません。

むしろ、子どもに、こうあってほしいと願うあまり、到達してほしいゴールから、今やっておくべきことを割り出してプランニングしていくようなことはしない方が良いと書かれています。そうすると、願いとは逆に子どもの可能性を狭め、親の期待に応えようとすることの反動が幼稚園や学校で出ることが少なくないというのが理由です。

中島克治さんプロフィール

麻布中学・高校を経て、東京大学文学部卒業。東京大学大学院人文科学研究科博士課程に進んだ後、麻布中学・高校国語科教諭に。その他の著書に『できる子は本をこう読んでいる 小学生のための読解力をつける魔法の本棚』『中学生のための読解力を伸ばす魔法の本棚』、『20歳からの<現代文>入門 ノートをつけながら深く読む』(NHK新書)『本物の国語力をつけることばパズル』(小学館)など。

「ことばの力」って何?

では、そもそも「ことばの力」とは何でしょうか?中島さんは「ことばの力は生きる力」として、さまざまな例を出して、この力を身につけることの利点を説いています。
本当のことばの力とは、日々の生活の中できちんとものごとを理解し、考え、自分のことばで表現する力のことなのです。
via 『小学校入学前にことばの力をつける魔法の本棚』14ページ
また、この「ことばの力」は、幼児期から少しずつ養われるもので、単に単語や熟語、漢字の知識量が多ければ良いということではなく、ドリルなどで勉強すればいいという訳でもなく、一朝一夕に身につくものでもないとしています。

その上で、親子のコミュニケーションを中心に、どういうシーンで、どうやれば、「ことばの力」を育てていけるのかについて具体的なアドバイスを多くされています。

「ことばの力」を育てるために未就学児のうちに家庭でできること

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aijiro / Shutterstock.com
では、小学校入学前の子どもに「ことばの力」を育ててあげるために親ができることや注意点はどんなことがあるのでしょうか。

こちらの本には、普段からの子どもへの関わり方、会話から、暮らしのヒント(季節の行事を大事にする、自然に触れることとの大切さ、お手伝いのすすめなど)、または遊び方の方法までさまざまな提案と注意点があげられています。

中でも重点を置いているのが「絵本の読み聞かせ」です。絵本の選び方や図書館の利用方法、同じ絵本を繰り返し読む意味や、子どもが絵本を嫌いになる理由にも触れられています。

絵本の役割はことばと心(感情)をつなぐこと!

絵本の大きな役割は、子どもが登場人物と自分を重ねた時に、漠然と感じていた感情や気持ちが、具体的なことばで表現できることではないかと、中島さんは伝えています。

絵やストーリーの助けもあって、あの時自分がこう感じた気持ちは、この絵本のキツネさんが感じてる「うれしい」と同じだ!と気づいていける、というわけです。

喜怒哀楽の感情を的確なことばで整理できるようになることで、嬉しくて大笑いしたり、大きな声で癇癪をおこして辛かったり、泣いたりした経験も、さらに広がりを持ったり、落ち着けたり。また、その時の気持ちをより伝えやすくなったり、他の人の気持ちを理解したりすることにもつながっていくのですね。

小学校に入学してからできることとは…!?

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wong sze yuen / Shutterstock.com
本のタイトルからすると、この本を読むのは、小学校に入学してからでは遅いように感じますが、実は、入学後も、具体的で有用なアドバイスがたくさんあります。

授業で書いたノートを見直す習慣のつけ方から、読書ノートのつけ方、はじめての国語辞典の選び方、読書感想文の書き方まで親ができるアドバイス方法が充実。さらには、「おすすめ国語自由研究」など、小学校入学当初から、低学年・中学年になっても役に立つこと、その時にまたこの本を読み返してみたくなるヒントや親の寄り添い方がたくさん書かれています。

また、入学前に読むと、小学校生活で何が必要とされるのか、だいたいイメージして把握しておけるので、そのために準備したり意識したりしておくべきことが、あらかじめわかるという利点もありますね。

つまり、子どもが幼いうちにこの本を買ってから、ずっと本棚に置いておいておき、成長に合わせて定期的に読み返しておきたくなる本だということです。

魔法の本棚を自宅に整えるためには……

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Creative Images / Shutterstock.com
実際に読み聞かせる絵本や、子どもに与える本はどう選んだらいいのでしょうか。

こちらの本の巻末には、赤ちゃん向けの「はじめての絵本」から、「かずあそびと科学」「いろいろな季節と自然」について、または「図鑑・辞書」まで、小学校低学年向けを含むおすすめが8ジャンルに分けられて223冊紹介されています。

子どもの頃に読んだ名作含めて、親も読んでみたくなる本がたくさんあってワクワクしました。本屋さんや図書館に漠然と足を運んだだけでは見つけにくい、良書選びの参考になりますよ。

最後に

国語力や文章力を飛躍的に高める技術が書かれているわけではありません。ものすごく画期的な方法が提案されているか、呪文を唱えればすぐに身につく「魔法」の方法が書かれているのでは、と期待されるとちょっと違うかもしれません。

毎日の会話や生活をあらためて見直し、「子どもとのやり取りを大事にしましょう」ということが主なメッセージであるように受け取りました。毎日絵本の読み聞かせを行っているような絵本好きな方から、逆に苦手で、子どものことばの力が育っていないのでは、と不安に思う方まで、優しく寄り添ってくれる本ですよ。

\ 手軽な親子のふれあい時間を提案中 /

この記事のライター

志田実恵
志田実恵

エディター/ライター。札幌出身。北海道教育大学卒業(美術工芸)。中高の美術教員免許所持。出版社でモバイル雑誌の編集を経て、様々な媒体で執筆活動後、2007年スペイン留学、2008〜2012年メキシコで旅行情報と日本文化を紹介する雑誌で編集長。帰国後は旅行ガイドブック等。2014年6月に娘を出産。現在は東京で子育てしながらメキシコ・バスクの料理本の編集のほか、食、世界の子育てなどをテーマにwebを中心に活動中です。