ママ絵本作家のほんえすんです。今回は2018年7~9月に発刊された新刊絵本の中から、「こんな絵本が!?」という驚きいっぱいの絵本を4冊選びました。どれも子育てをもっと楽しく、もっと面白くしてくれるおすすめの絵本です。連載『絵本はお友だち』Vol.06です。
2018年7~9月に発刊の絵本からピックアップ!
もちろん、何十年もの間世代を超えて愛されているロングセラー絵本はどれも素晴らしいものばかりですが、魅力ある絵本はそれだけではありません!
「今」の感性から生まれた新刊絵本にも、ステキな作品がたくさんあります。
今回は2018年7~9月に発刊された新刊絵本の中から、ママパパに特におすすめの4冊をピックアップしてご紹介します。
好きなもの×好きなもの=大興奮!
虫にんじゃ
著者:大塚健太(作)、マスリラ(絵)
出版社:パイ インターナショナル
子どもって、どうしてあんなにダンゴムシが好きなんでしょうか。公園や散歩の途中で見つけたときには、もうそこで時間が止まることが確定し、「そんなにも!?」というくらい魅了されていますよね。
そして、私の独自の調査では「子どもの将来の夢に一度は登場する確率ナンバーワン」ではないかと思うくらい、子どもたちにとって憧れの存在である「忍者」。
「好きなもの」と「好きなもの」が組み合わさったこの絵本に、子どもたちはきっと大興奮することでしょう!
それにしても、「ダンゴムシの忍者」という発想は、どこからやってきたのでしょうか。作者の大塚健太さんのお話では、「頼りない忍者にしたかった」とのこと。「ダンゴムシは、得意技が『丸まることだけ』っていうのが面白いなと思ったんです」と話しています。
絵本では、「丸まる」ことしか得意技がないダンゴムシ忍者が、仲間を助けるために他の「虫にんじゃ」のもとで「必殺技」を修業し、さまざまな技を身につけていきます。たとえばナナフシやアメンボ、クモなどの虫が登場するのですが、それぞれの特徴を見ると「確かにこれって忍術っぽい!」と納得。
私は、ライターとして育児雑誌の仕事で専門家の先生に取材をしているのですが、取材の中で「今の子どもたちは、親から「完ぺき」を求められている。それによって息苦しい思いをしている子が多い」という話をよく聞きます。
この絵本は、一生懸命やってきたことが上手にできなくても失敗してしまっても大丈夫なんだ、と思えてくる、そんなストーリーです。息苦しい思いをしている子がもしいるなら、この絵本を読むことですっと心が軽くなるのでは、と感じました。
発行日:2018年8月
縦25×横22.1cm/32ページ
まさかまさか、「魚の切り身」が絵本に
きりみ
著者:長嶋 祐成
出版社:河出書房新社
わが家の上の子も例にもれず魚が苦手です。理由はよくありがちな「骨があるから」。
苦手を克服するためには、まずは知ること!
そんなときはやっぱり絵本です。
この絵本は、「身近な魚料理」→「その魚が捌かれた姿」→「もとの魚の姿」という順番で、サケやマグロ、ウナギなど、さまざまな魚を紹介しています。
この絵本の作者である長嶋祐成さんは、魚しか描かない画家である「魚譜画家」。幼少期から魚をはじめとする生き物の魅力にひかれて、コミュニケーション・プランニングのプロデューサーなどの仕事を経て画家を本業として石垣島に移住されました。
出身校は京都大学という異色の画家で、なんと一度も専門的に絵を学んでいないそうです。それでこの絵が描けるのだから、まさに愛のなせる業……。
(ちなみに魚についても専門的に学んでいないとのこと!)
長嶋さんは、ご自身のwebサイトの中でこのように書いています。
食用魚でも観賞魚でも、
あるいは人の暮らしに直接かかわりのない魚でも、
かれらの美しさや愛らしさ、格好良さ、気高さを、
絵という形にして表現してゆくこと。そうしてもしも、絵に触れることで
ほんの少しでも魚というものを見る目が変われば、
スーパーの鮮魚コーナーを覗くのが楽しみになったり、
水族館が癒しだけでなく好奇心を満たしてくれる空間になったり、
電車の窓から見える波打ち際を泳ぐ魚の姿を想像するようになったり、日々の暮らしの中に、小さくとも新たな豊かさを得る
きっかけになると信じています。
それぞれの魚について細かいところまで描きこまれているので、絵の隅々まで親子で一緒にお楽しみくださいね!
発行日:2018年7月
縦26.7×23.2cm/32ページ
こんなにも長ーいしかけ絵本があったでしょうか?
なが~くのびる しかけえほん とんでった
著者:たかい よしかず(作・絵)
出版社:株式会社KADOKAWA
絵本作家さんにお会いすると、「いい絵本のアイデアは、ロングセラー絵本で出尽くしている。これから出版して支持を得るには、今までにない新しいアイデアを考えなくてはならず、それがどれだけ大変か」というお話をよく聞きます。
確かに、「ホットケーキの絵本」といえば「しろくまちゃんのほっとけーき」(わかやま けん著・こぐま社刊)。赤ちゃん向けのしかけ絵本といえば「いないいないばああそび」(きむらゆういち著・偕成社刊)。同じ分野でロングセラーの大定番絵本を超えるのはとても難しいものです。そのため、今の絵本作家さんたちは、「今までにない絵本」を考えます。
3冊目に紹介する本作は、「新しいしかけ絵本のアイデア」が詰まった絵本です。
どんなしかけかというと、2段階に長く伸びるのです!
パタ、パタ、パタと開いていくと……な、長い!
さらに、絵本の中に出てくるキャラクターも魅力的。タイトルの通り「とんでった」をテーマに「小鳥が飛んでいく」「風船が飛んでいく」など6つの場面で構成されており、動物や乗り物、宇宙人やおばけ(!)など、子どもが好きなものばかり登場します。
また、「絵探し」も楽しめるようになっているので、それぞれの見開きで「何匹あるか数えてみようっか!」「この中でどれが一番好き?」など、親子のコミュニケーションを楽しみながら読むことができますよ。
発行日:2018年9月
縦15×横15cm/20ページ
みんな大好き「顔はめパネル」が絵本に!
かおはめえほん たすけてー!
著者:岡本よしろう(作)
出版社:あかね書房
うちの子たちは、見つけたら100%やります。一度もやらなかったことはありません。もう一度言いますが、100%、顔をはめるのです(笑)
4冊目に紹介するこちらは、「顔はめ絵本」に物語の要素が加わった、親子で遊べる絵本です。ワニに食べられそうになっているサル、桃太郎軍団に追いつめられる鬼、猛獣に囲まれる飼育員など、「たすけて!」と叫ばずにいられない11種のシーンを、顔をはめて楽しめる(笑)ようになっています。
親も子も、顔をはめて思い切り大きな声で「たすけてー!」と叫んで遊びましょう!
これ、ただ遊ぶだけでなく、「いざというとき」に助けを呼ぶときの練習にもなるのでは、とも思いました。遊びながら子どもを守る。絵本はそんなことまでしてくれる強い味方です!