美食の国と呼ばれるフランスは、料理や食文化を伝承していくために、国を挙げて普及活動・教育活動をしています。その一環として行われているのが味覚教育や栄養教育。味覚週間や味覚の授業、離乳食までご紹介します。
味覚教育とは?
2010年にユネスコの無形文化遺産に指定されたフランス料理。その価値を伝えるため、学校教育においてもまずは食材のルーツを把握し、味の違いを判別・表現する能力を学び、培っていくわけです。
特に「味覚教育」においては、学校の教育現場だけではなく国を挙げて取り組みを行っています。
毎年10月に開催される「味覚週間」
「味覚週間」のそもそものはじまりは、1990年10月15日に開催された「味覚の1日」。次世代を担う子どもたちにフランスの食文化をきちんと伝えようと、パリのシェフたちの協力を得て行われたもので、料理評論家のジャン=リュック・プティルノー氏が、子どもたちを取り巻く食文化の乱れに危機感を抱いたことに端を発します。
味覚の授業
味覚がより発達している段階にある小学生には、料理のプロフェッショナルたちがボランティアで講師を務め、味の基本を学べる機会が提供されます。
子どもたちは目隠しをしたりしながらいろいろな味覚に触れ、味の違いを判断します。そして基本とも呼べる「しょっぱい(塩味)」・「すっぱい(酸味)」・「にがい(苦味)」・「あまい(甘味)」という4つの味を学びます。
味覚教育は離乳食から始まっている!?
フランスでは、「離乳食」に当たる表現は「diversification alimentaire(食の多様化)」といいます。「離乳食によって栄養を多様化させていく」という意味合いです。日本語で表す「離乳食」と、かなり違いますよね。
フランスでは乳離れさせるために与える食事というよりも、母乳・ミルク以外の食事で必要な栄養を補うとともに、新しい味覚と食感を発見させることを目的としています。
フランスの離乳食は、ニンジン、ホウレンソウやズッキーニなどの野菜からはじめます。そして、1つ1つの食材の味を感じさせるために、そしてアレルギーがないか確かめるために、離乳食初期では食材を混ぜることは推奨されていません。
こういった離乳食の習慣が、グルメを育てる味覚教育の第一歩といえるかもしれません。
家庭でもできる味覚教育
フランスの家庭では、出されたものは全部食べきらなくてもよいから、できる限り全部を味見するように子どもに促します。こうすることで食材の味を知るとともに、見た目だけで食べないと判断していたものでも、食べてみたら実は美味しかった、と食べられるようになることがあります。
そして何より、大人が率先して食を楽しむこと!
フランスでは大人がいろいろな食に触れ、堪能しようとしている姿をよく見かけます。お母さんお父さん、家族のみんなが食を一緒に楽しんでいる様子が、一番の味覚教育になるかもしれませんね。