2020年08月18日 公開

絶対音感は子どもに身につけさせるべき?音感を養うと良いこと

お子さまに絶対音感を身につけさせたいと考えたことはありますか?2〜6歳が臨界期といわれ、この時期に訓練すれば絶対音感が身につくと聞けば興味が湧きますよね。絶対音感と相対音感の違い、絶対音感を持つことのメリットやデメリット、取得方法や時期、方法などについても詳しくご紹介します。

お子さまに絶対音感を身につけさせたいと考えたことはありますか?2〜6歳が臨界期といわれ、この時期に訓練すれば絶対音感が身につくと聞けば興味が湧きますよね。絶対音感と相対音感の違い、絶対音感を持つことのメリットやデメリット、取得方法や時期、方法などについても詳しくご紹介します。

音感とは?絶対音感と相対音感

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Stefan Rotter / Shutterstock.com


音感とは、音の高低や長短、強弱、音色などを聞き分ける能力や感覚のこと
です。

音高に関する音感には、補助手段なしに音の高さを聞き分ける「絶対音感」と、他の音との比較において音の高さを判断する「相対音感」とがあります。

絶対音感があると、他の音と比較することなく、音の高さをピッチ(周波数)ごとに厳密に聞き分けることができます。

英語では絶対音感は”perfect pitch”や ”absolute pitch”と表され、相対音感は、”reference pitch”となります。”absolute pitch”は直訳で絶対的な周波数。パーフェクトという単語で誤解が生じやすいようですが、相対音感より、完璧だとか、優れているという意味はありません

ちなみに、周波数を表す単位はヘルツ(Hz)です。1939年の国際規約で20℃の時のA音(ラ)が440 Hzと定められ、それを基準に他の音も決められるようになりました。実際は、状況や好みなどで440〜444Hzなどと、ある程度幅を持って調律されます。日本では442Hzで調律されることが多いようです。

固定ド=絶対音感、移動ド=相対音感?

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Oleika / Shutterstock.com

日本では、音名はイタリア語式「ドレミファソラシド」が一般的に使われています。固定ドは、調に関わらず「ド」を音名のCに固定して考える方法や唱法です。「移動ド」は、その調の主音を「ド」として旋律を捉え、「ドレミ」を音名ではなく階名として考えます。

ピアノなどの楽器演奏をする場合は「固定ド」の場合が多く、歌う際、またクラリネットやホルンといった管楽器などの移調楽器には「移動ド」もよく使われます。

移動ド唱法というのは、全てのキーをCのキー(ハ長調)のように歌う方法です。絶対音感保持者だと、移動ド唱法が苦手になってしまうこともあることを指摘する考え方もあります。

音痴とは?

では音痴とはなんでしょうか。音に対する感覚が鈍く、音のズレを耳で認識できずに、音程を外して歌ってしまう場合にいわれることが多いようです。

一般的に、多くの人は音の高低はわかるもの、その精度には大きな個人差があります。

しかし、聴力と歌唱力はまた別なので、絶対音感があり、耳では正確な音を把握していても、それを歌で正確に表現できるかどうかは別なようです。

どうしたら絶対音感があると判断できる?

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Worawee Meepian / Shutterstock.com

基準音なしに、ランダムに出された音を、高い正答率で答えることができれば、絶対音感を持っていると考えて良いでしょう。正式に認められたテストや試験はありませんが、アプリやwebでテストを行うものがあります。

ドの音だけがわかる、ピアノの白鍵の音だけがわかる、基準音が無くてもいつも同じ高さで歌える、などというのは、音感が鋭いものの、厳密には絶対音感を持っているとはいえないようです。

絶対音感は先天的なもの?

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Alila Medical Media / Shutterstock.com

2019年2月にトロントのヨーク大学とデラウェア大学の神経科学者による共同研究チームが、絶対音感についての研究結果を医学誌『Journal of Neuroscience』に発表しました。

その研究によると、絶対音感を持つ音楽家は聴覚野(Primary auditory cortex)の反応が大きいことが判明。特に、音の周波数を認識する脳の領域の体積が大きめであることを明らかにしています。

また、研究に参加した絶対音感の持ち主のうち、20%は7歳までに全く専門的な音楽教育を受けていなかったことから、遺伝学的な要素が絶対音感の有無を決定するのではという仮説を立てています。

ただし、日本のスズキメソードを受けた生徒は、より高い数値を取得していることなどからも、環境要因も大きいのではとも述べられているので、先天的な要因だけであるとはいえなさそうです。

一方、2018年11月に、新潟大学が、音楽専攻学生を対象にした絶対音感と相対音感の国際比較研究の結果、日本の音大生は絶対音感の能力が優れている人が多い反面、相対音感の能力が弱いことを明らかにしています。

日本は絶対音感を重要視する音楽教室が多く、そのための訓練を幼少時から行うことが他国より比較的多いようです。

日本の音楽学生は絶対音感が優れているが相対音感が弱いことが国際比較から明らかに​

絶対音感のメリットとデメリット

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デメリットとして危惧されること

絶対音感があることで、微妙なピッチのズレが気になりすぎて、日常生活に支障をきたすケースがあるというのが、デメリットとしていわれることの代表格でしょうか。

自然の音や生活音も全て音名で聞こえてしまい煩わしい、調律が狂った楽器での演奏を聴くことが生理的に耐え難くなる、カラオケが原曲キーでないと気持ち悪いという話もあります。体調が悪くなった時や投薬で、半音下がって聞こえるなどという人もいます。また、現在の基準音に設定されていない古楽器や民族音楽などでの演奏を楽しみにくいという側面を指摘する声もあります。合唱でハモる時にはむしろ無い方がいいということも。

ただし、絶対音感保有者でも、特性やレベルはさまざま。上記のことがまるで当てはまらない保持者もいれば、苦しみ、悩む方もいるようです。

先天的な能力ではなく、学習によって絶対音感を身につけた人の場合、頭の中のスイッチを切り替えるように、聞き分けようとするかしないかと意識を変えれば問題ないという人も多いようです。

メリットとして見込めそうなこと

多くの絶対音感保持者はピアノなどの楽器レッスンと共に絶対音感を学習しているので、聴いた音やイメージした音を楽譜に書いたり楽器で正確に再現したりできる人が多いようです。耳で聞いただけの音楽を楽譜なしに演奏できる、いわゆる“耳コピ”ができるようになるのです。楽器を演奏する上では役に立つ能力でしょう。

聴音(ソルフェージュ)も苦労なくできることが多いようです。将来的に音楽家など音楽関係の職業、音大を目指すなどの場合も役立つでしょう。

また、脳の発育に良い、英語などの語学取得に良いとする説もあります。

絶対音感はトレーニングで身につく?

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訓練なしに先天的に絶対音感を持つ人の数は非常に少ないという調査結果が多いこと、モーツアルトやバッハ、ベートーヴェンは絶対音感を持っていたといわれていることからも、絶対音感の保持者は天才、音楽の才能の持ち主イコールであるようなイメージがありますが、日本では、絶対音感を身につけるためのメソッドがさまざまにあります。

適切な年齢の時期に毎日聴く訓練をすれば、どんな子どもでも最短で3カ月で絶対音感が身につくと主張されている指導者やスクール、プログラムもたくさんあります。いずれも、子どもの発達が影響し、訓練の時期と順序が重要とのことです。

絶対音感を身につけられる時期はいつ?

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人間の感覚神経には、臨界期という成長が著しい時期があり、聴覚中枢の発達は、2歳から5歳くらいまでが臨界期といわれています。

絶対音感を身につけるためのトレーニングは、この前後である2歳から6歳半には、スタートする必要があります。7歳を過ぎると難しく、10歳では不可能という説も。ただし、相対音感をすでに身につけていないことも条件になります。

また、一度身につけても衰えるので、維持するためのトレーニングも続ける必要があります。

大人になってからの訓練では相対音感は身につけられますが、絶対音感は無理だとされています。ただし、研究によってその可能性を示した論文もいくつか発表されているようです。

絶対音感を身に付けるにはどのくらい訓練が必要?

3カ月で、和音や単音を聞き分けられるようになる子もいるそうですが、多くは1年半から2年ほどかかるそうです。

絶対音感を身につけるには?絶対音感の習得方法

絶対音感のトレーニングは主にピアノを使って行われます。家にピアノがあることも望ましいでしょう。定期的に調律したアコースティックピアノか電子ピアノが良いようです。

ただし、インターネットなどを通じて通信教育を受ける方法もあります。一音会ミュージックスクールなど専門の音楽教室やスクールも全国各地にあり、自宅で親が行うためのメソッドを紹介する本もあります。

自分の子どもに絶対音感を身につけてほしい?

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筆者は、音感が悪いことで、好きだった音楽の部活動で苦労した経験があります。音痴といわれたこともあります。ピアノも高校生くらいになってから、挑戦したものの指も動かないし、なかなか上達しませんでした。楽器の演奏技術や音感は幼い頃からやらないと身につかない力だと痛感しました。

自分が親になった時、好きか嫌いか、続けたいかどうかは後で子どもが判断するとしても、機会だけは適切な時期に与えてやりたいと考えるようになりました。

柔軟でバランスの良い音感を身につけられれば、音楽をより深く味わうことができ、楽しみの幅を広げられるのではと思ったからです。耳での記憶力や理解力が少々乏しいように感じられ、何か音感を伸ばすための方法を探していたこともあります。

そのため、絶対音感に関する本は10冊くらい取り寄せて読み、音楽家の知人や絶対音感を保持する友人の話も聞きました。結果、主張や理解、説もさまざまで、メリットやデメリット、訓練の方法まで、非常に客観的な判断が難しい分野であることはよくわかりました。

その上で「レッスンも楽しかったし、その後いいなあと思った曲を自分で弾けたし、どんな曲でもハモって歌えたりしたのは楽しかったよ」という音感の良い友人の言葉に背中を押され、江口メソードの絶対音感訓練を行うミュージックスクールに子どもを通わせました。

絶対音感を身につける訓練をして感じたこと

こちらのメソードは、親が、1日に1〜6回ほど複数の和音を弾いて子どもに聞かせることを毎日続けるので、実はかなり大変です。音を比較して判断してはいけず、強制してもいけず、間違えて怒ってもダメです。

でも毎日同じ音を意識的に聞いているのは予想外に楽しかったです。親子でピアノに触れる良い機会にもなります。押し付けや強制ではなく、音を聴いて楽しむ機会を作るのにも良いなあとは思います。

個人的には、絶対音感を身につける訓練を幼い子どもにすることがベストな音感教育だとは思いませんし、必須であるとも思いません。うまく行かなくてもしょうがないかな、とも感じました。

ただし、音感教育や音楽教育の機会の一つとしてメリットやデメリットなど含めて親が知っておいても良いのではと感じます。

参考文献:
『新装版 6歳までの脳は「絶対音感」で育つ』譜久里 勝秀/コスモ21
『絶対音感をつける本』絶対音感研究会編/株式会社双葉社
『新・絶対音感プログラム』 江口寿子、江口彩子/全音楽譜出版社
『絶対音感Q&A』江口彩子/全音楽譜出版社
『子どもがどんどん賢くなる「絶対音感」の育て方』鬼頭敬子

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この記事のライター

志田実恵
志田実恵

エディター/ライター。札幌出身。北海道教育大学卒業(美術工芸)。中高の美術教員免許所持。出版社でモバイル雑誌の編集を経て、様々な媒体で執筆活動後、2007年スペイン留学、2008〜2012年メキシコで旅行情報と日本文化を紹介する雑誌で編集長。帰国後は旅行ガイドブック等。2014年6月に娘を出産。現在は東京で子育てしながらメキシコ・バスクの料理本の編集のほか、食、世界の子育てなどをテーマにwebを中心に活動中です。