2019年07月10日 公開

【おうち探究学習】マリオ型?ゼルダ型?AI時代に活躍できるのはこんな人!

これからやってくるAI時代に活躍できるのは、どんなタイプなのでしょうか。日本ではじめてのSTEM教育スクール「ステモン」を主宰する中村一彰さんに、パパママ世代になじみが深い3つのゲームに例えて解説していただきました。連載「おうちでできる探究学習」の3回目です。

これからやってくるAI時代に活躍できるのは、どんなタイプなのでしょうか。日本ではじめてのSTEM教育スクール「ステモン」を主宰する中村一彰さんに、パパママ世代になじみが深い3つのゲームに例えて解説していただきました。連載「おうちでできる探究学習」の3回目です。

おうちでできる探究学習【全4回連載】

日本で初めてのSTEM教育スクール「ステモン」主宰の中村一彰です。

「AI時代がやってきたら、こんな世の中になる」という話題をよく耳にされるのではないでしょうか。
「今ある仕事のうち〇%はAIに奪われる」という話を聞いて「わが子をAI時代に活躍できる子に育てなければ!」と焦ってしまう方も多いかもしれません。

それでは、「AI時代に活躍できる人」とは、どのような人なのでしょうか。
パパママ世代にもなじみが深い3つのゲームから、考察していきたいと思います。

「人の行動タイプ」には3つパターンがあります

人の行動タイプはゲームに例えて「初期スーパーマリオ型」「ゼルダの伝説型」「マインクラフト型」の3つに分けることができます。
まずはそれぞれのタイプについて解説していきましょう。

「初期スーパーマリオ型」の特徴

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Thanaphat Kingkaew / Shutterstock.com
初期のスーパーマリオのゲームをしたことがある方はイメージがつくと思いますが、進むべき方向が決まっており、ゴールも明確なのが特徴です。その途中の通る道すらも決まっていて、途中の障害を乗り越えながらゴールを目指す、誰にでもわかりやすいゲームです。

そういった意味で「初期スーパーマリオ型」に当てはまる人は、答えや正解を求めやすく、例えば先生から「何を作っても自由だよ」と言われたとき、ゴールがないので何を作っていいのか分からず戸惑ってしまうことが多いです。

「マインクラフト型」の特徴

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Aratehortua / Shutterstock.com
マインクラフトは、ブロックを用いて建造物を作ったり、キャラクターを動かしたりして遊ぶゲームです。
このゲームには、目的や制約がほとんどなく、「ゴール」や「クリア」という概念もありません。
レゴのデジタル版のようなイメージで、自分が作るものを自分で決めて、それに必要な情報を集めたり、自由に新しいものを作っていくゲームです。

「正解」という概念に縛られず、自分の好きなように自由に表現できることが「マインクラフト型」の特徴です。

「ゼルダの伝説型」の特徴

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Casimiro PT / Shutterstock.com
「ゼルダの伝説」というゲームはマリオとマインクラフトの間をとったような特徴があります。
最終的なゴールは決まっていますが、クリアするまでの過程でどういう道に進み、どんな謎を解くのかの順番は決まっていません

ゴールが定められていて、そこに向かってどうすれば辿り着けるか、と考えていく思考の人が、「ゼルダの伝説型」に当てはまります。

AI時代にはマインクラフト型が活躍する。理由は?

「初期スーパーマリオ型」「ゼルダの伝説型」「マインクラフト型」のうち、AI時代に活躍できるのがどのタイプでしょうか。
これからの時代に求められるのは、「マインクラフト型」です。
それはなぜでしょうか?

AIは統計や計算が得意で、過去の情報を収集して分析することにおいては人間よりも優れています。しかし、過去の延長線上にない未来を作ることや表現をすることはできません。
つまり、「今までにはない、新しいものをつくる」という発想ができる人が、AI社会でも活躍できるのです。

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metamorworks / Shutterstock.com
「初期スーパーマリオ型」は、与えられた環境で目指すべき方向性も決められている中での活動になるため、AIが得意とする仕事と領域が重なります。そのため、AIに置きかわりやすくなってしまうのです。
「ゼルダの伝説型」も、ゴールを設定してもらう必要があるため同様です。

「マインクラフト型」は、答えもゴールもない、何もないところから自由な発想で作り上げていくことができ、これはAIにはできない、人間だけができることです。AIにはとって代わられることはなく、AI時代に活躍できる人だと言えます。

人間は過去の延長線上にない未来を作ることができます。その時に大事になってくるのが、意志や表現なのです。「こんなものがあってもいいじゃない」と自由な発想ができるのがマインクラフト型であり、こうした発想を子どものうちから育み、失わないようにしたていきたいものです

わが子を「マインクラフト型」に育てるためには

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ここまで読んでいただきながら、「わが子は何タイプだろうか」と考えている読者の方も多いのではと思います。

「うちの子、すぐに答えを知りたがる『初期スーパーマリオ型』かもしれない」と思う方もいらっしゃるかもしれません。
実は、子どもはみんな、元々は自由に表現できる「マインクラフト型」なのです。

ですが、学校での教育や親の関わり方で、「初期スーパーマリオ型」へと変わってしまいます。

親や先生が「こうすべき!」という価値観を日常的に子どもに押し付けたり、大人が作った評価基準に慣れてしまうと、「先生やパパママが求めているのはこういうことだよね」と正解を探すようになります。

そうすると「こんなものがあってもいいんじゃないか」という自由な発想が薄まり、学校や組織が求める「正解」への道筋をたどる「初期スーパーマリオ型」になってしまうのです。

この世界に「正解」というものはない

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Herschel Hoffmeyer / Shutterstock.com
そもそも、この世界には「正解」というものはありません。

2019年5月に1kgの定義が変わりました。「重さ」という絶対的だと思われていたものが、実は定義次第で変わることがあるのです。

また、我々親世代が子どものころは、ティラノサウルスは尻尾を引きずりながら歩いていた巨体の恐竜だったと思われていましたが、近年研究が進み、小型な時期があったことがわかっています。

さらに、数十年前までは「女の子はいずれ嫁ぐのだから勉強しなくていい」という風潮がありましたが、現代では、そのような価値観は「非常識」だといわれるようになりました。

このように、これまで「当たり前」「常識」「正解」と言われていたとしても、テクノロジーや研究の進歩、ライフスタイルの変化で大きく変わる可能性があるのです。

ですので、「当たり前は当たり前ではない」ということを柔軟に受け止めて、親が思う「正解」を押し付けず、子供なりに幸せになるための努力や判断をするはずと信じることが大切なのです。

子どもが興味を持ったことをそっと見守り、自由な発想を大切にしましょう。

自由な発想を育むことこそ、これからのAI時代に活躍できる子どもに育つためにもっとも大切なことです。

最後に……「本当の賢さ」とは?

「本当の賢さ」とは何だと思いますか?

これまでの「賢さ」の定義は、学校で評価される学力とほぼイコールでしたが、これからの時代では賢さの再定義が必要になってきます。

そのために必要な力は6つ。一体どんな力なのでしょうか?次回、第4回目でお届けします。

中村一彰先生プロフィール

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-STEM教育スクール「STEMON(ステモン)」代表
-小学校教員免許
-LEGO® SERIOUS PLAY® facilitator
埼玉大学教育学部卒業後、民間企業に就職。大手企業を経てITベンチャー企業に転職。創業期から東証一部上場までの成長期にて新規事業開発や人事責任者を担当した際に、「学び続ける力」や「IT教育の重要性」を感じ、教育事業を行う株式会社ヴィリングを創業し日本初のキッズ向けSTEM教育スクール「ステモン」を主宰。
2017年度は小金井市立前原小学校にて5年生の理科講師としても勤務。
2児の父親。
著書:「AI時代に輝く子ども」(CCCメディア出版)

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欧米で重視されている「STEM教育」、すなわち 「Science(科学)」「Technology(先端技術)」 「Engineering(工学技術)」「Mathematics(数学)」の 頭文字に、これらをONするという意味で「ステモン」と 名付けた教育を展開している著者による、「AI時代に 輝ける子ども」を育てるための教育論&教育実践。2020年より小学校でのプログラミング教育が必修化されるなか、公立小学校でのプログラミング授業実施実績では日本一という「ステモン」の考え方と、プログラミングやロボット工作を手段として「トライ&エラー」を繰り返す中で学びを深めていく方法論を紹介。
中村一彰さんが主宰するSTEM教育スクール「ステモン」はこちら
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(取材・文/池本エイミー 構成・編集/洪愛舜)

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