先進国の中でもトップレベルの出生率を誇るフランス。2015年時点でその合計特殊出生率(ひとりの女性が一生に産む子どもの平均数)は日本が1.45なのに対して、フランスは2.0です。そんなフランスも、実は1994年に戦後最低の1.66を経験したことがあります。以降、改革を続けたママに優しい国フランスを現地からリポートします。
妊娠・出産の自己負担ゼロ!
それもそのはず、フランスで公立病院で平均的な医療サービスを受けて出産する場合(私立の場合、医者への追加報酬や個室代がかかる)、自己負担はゼロなのです。
産婦人科検診、エコー、血液検査、歯科検診、出産準備クラス、麻酔科検診、出産費、入院費、産後検診、産後の骨盤リハビリ。この全てが国の負担で社会医療保険から支払われるのです。
また出産後も、6歳までの子どもの医療費はほぼ無料です。
私立病院を選んだ場合も、よっぽど高級な病院でない限り、国民全員が入っている社会医療保険の追加で加入する、共済保険が負担してくれます。この共済保険は、正社員でない期限付き契約の社員も、アルバイトの社員も、会社が雇用者義務として負担してくれます。
それらに加えて、出産祝いとして国から923,08€(約11万4000円)がもらえます。
「お腹を痛めない」出産
1970年代から始まった人工中絶や人工受精を必要医療とする女性解放政策とともない、1980年代からはエコー・胎児のモニタリング・無痛分娩をセットとした出産の医療化が進められました。1994年より無痛分娩が全額、国の医療負担となり、無痛分娩は経済状況に関わらずフランスに住む女性全員の「権利」となったのです。
出産にともなって、ママの肉体的・精神的負担をいかに取り除くか、ということが国家レベルで重視されているように感じます。
産休・育休はどうなるの?
産休の場合
またこの産休手当は、医療保険の管轄なので、雇用主と交渉を行う必要がないというのも大きなポイントです。
育休の場合
この間、雇用契約は中断されますが、CAF(家族手当基金)という公的機関から毎月補助金が支払われます。完全育休の場合は、390,52€(約4万8000円)程度、短時間勤務を選んだ場合、145,63€(約1万7800円)程度支払われます(子どもひとりの場合)。
また補助金なしでの育休は、子どもが3歳になるまでとることができます。
パパにも産休?育児に強制参加!
出産有給休暇が終わると、次に始まるのが11日間の「子どもの受け入れ、父親休暇」です。父親休暇の間のお給料は社会保険より支払われます。
この合計2週間がパパの産休になります。
さらに前章で書いたように、世帯収入は減ってしまいますが、育休も6ケ月間補助金付きでとれるため、ママの育休と交代でとって、子どもが保育園に入るまで乗り切るという選択肢もあります。ただ現実にはパパの育休取得率はフランスでも低く、フランス国内でも問題視されているようです。
子どもの教育は国の負担。教育費はかからない
筆者はフランスで国立の大学院に行ったのですが、年間の合計学費が日本円で4万円程度だったのに驚きました。もっとも高い私立のビジネス・スクールでも、日本の一般的な大学の学費程度だということです。
だから子どもが増えているフランス♪
フランスの場合、全人口の12.4%が移民であり、この移民家族が出生率を上げているという声も耳にします。しかしここで注目すべきことは、国による少子化対策は、国民誰にでも(国民・移民・一時滞在者含めて)適用される、ということです。それを利用するかしないか、「選択肢がある」ということです。
子どもを産むか産まないかは個人の自由です。何歳で産むことにするのかも自由です。フランスではこの個人の選択において、精神論で語られることはありません。むしろ、産むと決めたときに、出産・育児費用においても、不妊治療においても、最小限の自己負担ですむ社会保障の仕組みを作る、という点を日本の少子化対策にも生かすべきではないでしょうか。