大学入試センター試験の改革や、学習指導要領の変更など、教育の現場はいま転換期を迎えています。そんななか、2020年の教育改革で新設されたのが「理数探究」です。ここでは理数探究の先進例である「SSH」の取り組みを例に、理数探究のねらいや内容などをご紹介します。
どうして理数探究ができたの?
その理由は現在、文系の注目度が高いため。文系の就職率が回復したこともあり、就職に有利とされている法学部・経済学部の人気が特に高まっているようです。
それと同時に、理系の人材不足は今後ますます進むと予想されます。大学側でも理系の募集枠を増やすなど対策に乗り出していますが、理系の人気はなかなか回復しません。この課題を打破すべく、高校で新たな教科を新設したものが「理数探究」です。
理数探究のねらいは?
講義中は、これまでのようにただ知識を与えられるだけの受け身ではなく、課題に自ら向き合い、考え抜くことが必要となるでしょう。
理数探究の狙いを、文科省は以下のように述べています。
①様々な事象に対して知的好奇心を持つとともに、教科・科目の枠にとらわれない多角的、複合的な視点で事象をとらえ(総合性)、
②科学的な見方・考え方や数学的な見方・考え方を豊かな発想で活用したり、組み合わせたりしながら(融合性)、
③探究的な学習を行うことを通じて(手立て)
④新たな価値の創造に向けて粘り強く挑戦する力の基礎を培う(挑戦性、アイディアの創発)
理数探究の授業ってどんな感じなの?
そこで娘の高校の取り組みから、理数探究の授業がどういうものになるのかをご紹介します。なお、学校によってやり方はさまざまですので、一例として参考にしてみてください。
SSHの取り組み
1年生の間は、グループで話し合ったり、実験をしたりといった活動が多く設けられます。またパワーポイントを使って、プレゼン資料を作る課題も何度かありました。課題探究のために必要なことを、多角的な視点で身につけるのです。
2年生になると、いよいよ課題探究が始まります。自分で課題を見つけ、1人~数人のグループで探究を行うことになるでしょう。科学的に検証できれば課題は自由で、娘のグループの場合「固いどろ団子を作るにはどうしたらいいのか」を調べていました。これを、2年生~3年生にかけて取り組みます。
先生も助言はしてくれますが、基本的に自分たちだけで、試行錯誤しながら実験を進めなければなりません。これにより子どもたちは課題に向き合い、考える力を身につけるのです。
理数探究の良さと課題は?
SSHを導入した高校ではプレゼン能力が磨かれるためか、推薦入試やAO入試でも成果を挙げていました。AO入試でのパワーポイントを使った自己プレゼンや、英語の小論文に取り組む際にも活かされるようです。普段授業で取り組んでいる内容ばかりのため、抵抗感もありません。
なお現状未定ではありますが、今後大学入試の新テストの科目にする案も出ているようです。
理数探究でも挙げられているような狙いは、娘の高校を見る限り達成されているでしょう。
ただし、課題もあります。このような学習を行うためには、教員側にさらなる専門的知識が必要になることです。教員の数、施設や設備も要するでしょう。これらが整わなければ、思うような成果が出ないことも考えられます。
娘の高校では、理数系学科にてSSHを行っていたため、先生の質も設備も整っていました。しかし、全部の高校で同じ環境を整えることは、難しいかもしれません。
今後の変化を見据えてお子さまの教育を
ただ知識を詰め込むだけではなく「自分で考える力」を身につけることが、重要なカギとなるのかもしれませんね。