「受験勉強は、日常の生活で役立たない知識をつめこむもの」という悪いイメージを持っている方は、少なくありません。しかし筆者自身、高校の受験勉強で得た力が、大人になった今も役立っていると感じています。受験勉強を通じて、どのような力が鍛えられるのかを振り返ってみました。
忍耐力と工夫する力
受験勉強を通じて、「地道な努力を続けた結果テストの点数が上がった」という体験ができれば、忍耐力が養われます。また「単調でつまらないけれど、やらなければならない」ことに直面したときに、「では、おもしろく続けるにはどうすれば良いか」という方法を考える訓練にもなります。
受験勉強で覚えた生物や歴史の知識は、日常生活の中では話題に出ることもないかもしれません。でも、知識を習得する過程で身に着いた忍耐力や工夫する力は、日々の生活の中でも十分に活かされ得るものです。
分析力
優秀な子と自分は何が違うのかー、筆者は難関校を目指す同級生たちをよく観察してみました。そこで、「知らない問題に向き合ったときの対応の仕方」が、全く違うということに気づきました。
筆者は、見たこともない問題が出てくると、「これはわからない」と解くのを止めていました。でも同級生たちは、国語ならヒントとなりそうな文章に線を引いてみる、算数なら図を描いてみるなど、「わかることを書き出して整理する」のが習慣になっていたのです。
受験勉強のために通った学習塾でも、繰り返し「あきらめずに、まず理解できることを抜き出してごらん。それから答えを出すためには何が足りないのかを考えて、それを1つずつ埋めていけばいいよ」と教わりました。
受験勉強だけではなく、仕事でも日常生活でも、生きていればさまざまな問題にぶつかります。「状況をわかりやすく整理し、答えを導くために足りない要素は何かと考え、大きな問題を小さな問題に分けて解く」という分析力を身に着けることで、複雑にからみあった問題からも、逃げずに対応できる力が得られます。
要点を把握する力と推察力
時間内にすべての問題を解き終わるためには、「この問題は何が要点なのか、何を答えさせたいのか」を即座に判断しなくてはなりません。
受験勉強のときにこの訓練を繰り返すことによって、「話の要点は何か、相手が求めている答えは何か」ということを自然と考えられるようになります。
誰かと話をしたり、仕事をしたりするときに、この「要点を即座に把握し、相手の望む答えを推察して返す力」はとても重要です。「頭が良い」といわれる人の多くが、この力に長けています。
改善する力
受験勉強を行う期間は長いですし、その間に何度も模試や定期考査があります。そのたびに、自分の現状を把握し、学習計画を立て、実行に移し、結果を確認し、次の試験ではより良い成果が残せるように改善する、というプロセスを繰り返すことによって、効率化や改善する力を身に着けられます。
受験勉強のときは、基本的には1人で試行錯誤することになりますが、仕事となればこの「改善する力」をチームで発揮していかなければなりません。家庭をうまく回したり、子育てをしたり、もっと大きな意味でいえば「より自分にとって望ましい生き方をする」上でも、この「改善する力」はとても重要です。
受験勉強で得た力は無駄にはならない!
今後は知識力だけでなく、思考力や表現力の重要性が高まり、受験勉強で学ぶことと、実生活で求められる力は、よりつながりを持つようになるでしょう。「受験勉強は役に立たない」という言葉は、今以上に古い考え方になっていくのかもしれません。
筆者の高校受験で振り返ってみたので、「幼稚園受験」「小学校受験」とは共通しない部分も多いですが、お子さまが中学校や高校の受験を迎えた際には、「志望校に受かっても受からなくても、受験勉強で経験したことや得た力は無駄にならないよ」と声をかけた上で、応援してあげてくださいね。