2019年07月12日 公開

イマージョン教育でバイリンガルに!メリット・デメリットは?

社会のグローバル化が進むと予想される今後、学校でも英語教育に一層力を入れようとしています。そんななか、バイリンガルを効果的に育成できると注目を集めているのが、イマージョン教育です。そんなイマージョン教育の詳細や、メリット・デメリットなどをご紹介します。

社会のグローバル化が進むと予想される今後、学校でも英語教育に一層力を入れようとしています。そんななか、バイリンガルを効果的に育成できると注目を集めているのが、イマージョン教育です。そんなイマージョン教育の詳細や、メリット・デメリットなどをご紹介します。

イマージョン教育って?

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イマージョン教育の「イマージョン」とは、英語で「浸すこと」という意味です。目標言語に浸りきってその言語を習得するイメージから、この名で呼ばれるようになりました。1960年代のカナダで、英語とフランス語のバイリンガルを育てるべく国家プロジェクトが取り組まれたことが発端です。この取り組みが成功したことを受け、アメリカなどさまざまな国に広がっています。

一般の英語塾などでネイティブの先生が教えていたとしても、イマージョン教育とは呼びません。直接的に目的の言語を習うのではなく、「目的言語を使ってほかの教科を学ぶこと」がポイントです。対象言語を学ぶことを目的とするのではなく、ほかの学習のための手段として用いるところが、これまでの言語学習とは大きく異なります。

カナダでの取り組み

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カナダにはフランス語と英語、ふたつの公用語がありますが、国民の大半の母語は英語です。そこで国は、フランス系住民への配慮のためフランス語を使える人を増やそうとしました。こうして始まったのがイマージョン教育です。

カナダのイマ―ジョン教育では、幼稚園から小学校低学年まではフランス語のみの授業が行われます。その後、少しずつ英語の授業を増やして小学校高学年になる頃に、英語とフランス語の授業を半々に。こうしたカナダでのイマージョン教育は、成功例として多くの調査や研究がなされました。研究によると、以下のような結果が得られています。

・第2言語であるフランス語でのコミュニケーション力がついた
・算数や社会などをフランス語で受けた子ども、第1言語の英語で受けた子どもを比べるとどちらも学力に差はない
・英語力は最初には遅れるがのちに遅れを取り戻し、読解力はより高くなる
・創造力や思考力が、モノリンガルの生徒に比べると優れている

フィリピンでの取り組み

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フィリピンでは多言語・他民族問題を解決するひとつの方法として、1974年以来バイリンガル教育政策が採用されています。現在のフィリピンは小学校~高校まで、文系科目はフィリピン語、理系科目は英語で学んでいるのです。ちなみにフィリピンは英語力の高さで有名な国。一見するとバイリンガル教育がうまくいっているようですが、問題点も少なからずあります。

大きな問題のひとつが、英語の能力が未熟なため、理数科の習得がうまくいかない点です。フィリピンにおいて子どもの多くは、小学校入学で初めて英語の学習をします。にもかかららず突然、算数や理科の授業を英語のみで行われたら、うまくいかなかったとしても自然なことでしょう。

一方、裕福な家庭では英語教育にしっかりと取り組めるため、社会的格差が広がっていることも現実です。

日本で行われているイマージョン教育

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日本のイマージョン教育の先駆者となったのは、沼津市の加藤学園です。現在は以下のような学校でイマージョン教育を受けることができます。
・加藤学園(幼稚園・暁秀初等学校・暁秀中学校・高等学校)
・西武学園文理小学校
・佼成学園(女子中学校・高等学校)
・緑ヶ丘女子中学校
・立命館宇治高等学校
・ぐんま国際アカデミー
・英数学館小学校
・明泉丸山幼稚園
・明泉高森幼稚園
・ホライゾンジャパンインターナショナルスクール仙台校
・ホライゾン学園仙台小学校
・JCQバイリンガル幼稚園
・福岡のリンデンホールスクール(小学部・中高学部) など
最近は、国際バカロレアを取り入れた学校や、スーパーグローバルハイスクールのカリキュラムを取り入れた高校で、イマージョン教育に似た教育方法が取り入れられているケースもあります。インターナショナルスクールは、イマージョン教育の一種とも考えられるでしょう。

日本でもグローバルな人材の育成には力を入れており、今後こうした取り組みが増えていく可能性はあります。国際バカロレア、スーパーグローバルハイスクールの詳細は、以下をご覧ください。

国際バカロレア機構(本部ジュネーブ)が提供する国際的な教育プログラム。
国際バカロレア(IB:International Baccalaureate)は、1968年、チャレンジに満ちた総合的な教育プログラムとして、世界の複雑さを理解して、そのことに対処できる生徒を育成し、生徒に対し、未来へ責任ある行動をとるための態度とスキルを身に付けさせるとともに、国際的に通用する大学入学資格(国際バカロレア資格)を与え、大学進学へのルートを確保することを目的として設置。
現在、認定校に対する共通カリキュラムの作成や、世界共通の国際バカロレア試験、国際バカロレア資格の授与等を実施。
 高等学校等におけるグローバル・リーダー育成に資する教育を通して、生徒の社会課題に対する関心と深い教養、コミュニケーション能力、問題解決力等の国際的素養を身に付け、もって、将来、国際的に活躍できるグローバル・リーダーの育成を図ることを目的としています。
スーパーグローバルハイスクールの高等学校等は、目指すべきグローバル人物像を設定し、国際化を進める国内外の大学を中心に、企業、国際機関等と連携を図り、グローバルな社会課題、ビジネス課題をテーマに横断的・総合的な学習、探究的な学習を行います。

イマージョン教育のメリット

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カナダでの調査結果を見てもわかるように、イマージョン教育にはさまざまなメリットがあると考えられます。

英語にふれる機会が増える

一番のメリットは、自然と英語に触れる機会が増えることです。日本で普通に生活していると、英語を使う場面はほとんどありません。そのため通常の英語の授業だけでは、圧倒的に英語に触れる時間が足りないのです。

アメリカの国務省は、アメリカ人が外国語を習得するまでにどれくらいの時間を要するかを調査しました。その結果、フランス語やドイツ語など、英語と近いとされる言語は比較的短期間(600時間ほど)でマスターできるのに対し、日本語のマスターには2,200時間以上もかかると述べています。

この結果から、日本人の英語習得に関しても同様に時間がかかると予想されるでしょう。英語をマスターするためには、単純に英語に触れる時間を増やすことが重要だと言えます。

創造力や思考力が伸びる

これはカナダのイマージョン教育の調査から、明らかになっています。母語以外の言語も使うことで、脳が活性化される効果も期待できるでしょう。

日本語の読解力も高まる

イマージョン教育などのバイリンガル教育において懸念されるのが、母語の発達が阻害されるのではないかという点です。しかしカナダの例でその課題は否定されており、むしろ読解力が高まったという結果が確認されました。これは母語と第2言語の違いを見極め、より深く母語をとらえられるようになるからだと考えられます。

イマージョン教育のデメリット

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メリットの多いイマージョン教育ですが、もちろんデメリットもあります。

・やり方次第では、教科指導が不十分になる
フィリピンの例を見てもわかるように、やり方次第では教科の指導がうまくいかないこともあります。イマージョン教育を効果的に行うには、第一に取り組み方が重要です。

・お金がかかる
現在日本でもイマージョン教育を行う学校はありますが、そのほとんどがインターナショナルスクールや私立学校です。お金がかかることは、最大のデメリットとも言えます。

・質の高い教師の確保が難しい
筆者の娘の高校は、娘の卒業後に国際バカロレア認定校となりました。当初はすべての教科を英語で行うことを検討していたそうですが、それができる教師をなかなか確保できなかったとのこと。このように日本でのイマージョン教育は、指導できる教師の確保が課題となることが想定されます。

グローバル化を見据えた教育方法の選択を

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これからの日本はさらにグローバル化が進み、外国から多数の人材が流入してくると考えられます。それを見据え、子どもたちにどのような教育を与えるのが良いか考えることが大切です。どんな教育方法があるのか幅広く知っておくと、お子さまにより最適な方法を選択できるのではないでしょうか。

いろいろな教育方法をチェックし、家庭で取り入れるほか幼稚園や学校選択にも活かしてみてください。

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この記事のライター