子どもは、無理やり何かをわからせようとするとなかなか自分から動かないもの。自分で面白くなると動き出すのです。そして自分から動かないとその子の発達にはならないのです。日常生活の中で子どもに考えさせたり、発見させたりする習慣をまずは親が意識し、身につけるためにまず知っておいてほしいことを立教大学・黒澤俊二教授に語っていただきました。
黒澤先生は長年学芸大学附属小学校で教壇に立たれた後、常葉大学教授を経て2016年4月からは立教大学文学部教育学科教授として教鞭をとられています。そのかたわら、「かず・かたち図鑑」等監修書籍を多数出版されており、算数・数学教育を中心に幼児教育や教育心理学に造詣が深く、各地で講演も行なわれています。
子どもはどうしてそんなに動き回るの?
生きて動いている限りは何かが発達します。例え、高齢者でも動くと、その動きに伴って何かが発達するものなのです。
子どもは特によく動きますよね。これから、もっともっとたくさん生きようとしているから、大人よりも活発に動くのです。
例えば、子どもはすぐ走ります。疲れを知らないように動きます。子どもは多くの動きによって、多くの発達を得て生きているからです。逆に捉えると、より多くの「発達」を得るために、子どもは大人より活発に動いているのだといえます。
子どもの心や脳も日々フルスピードで発達しています
身長や体重の変化はその代表です。目に見える子どもの体格の成長は、文字通り目を見張るものがあります。
同じように、目には見えない、あるいは目には見えにくい心や脳など体内の発達も、子どもは私たち大人より大きな割合で変化させながら動き、生きているのです。
より良い方向へ発達を進めるために…
例えば、歩くという動きによって、足の筋肉が増えるという方向へ変化して発達し、さらに歩く力が強くなるという発達をするのです。
また、見る、聞く、触る、舐める、嗅ぐ、などの動作によって、体内の感じる力は敏感になる方向へ変化し、発達し、考える力は深くなる方向へと変化し、発達します。
ですから、プラスのより良い方向へ効果的に発達を進めるには、その方向へ変化させると予測できる「動き」を、意図的に仕掛けたり、仕組んだりすると良いのです。
人は他人の命令に従って動く生き物ではないのに…
心臓をはじめとして多くの内臓は、無意識、いわば自動的に動いています。人の意志という意識も自然発生とするなら、すべての動きはその人自身からの命令で発動することになります。その命令は、本人が意識するしないを問わず、出所はその人本人からなのです。
本来、人は他の人の命令に従って動く生き物ではないということですね。
だから、日々の生活のなかで、必要感から何気なくより良い方向の発達につながるように、子どもの方から自然発生的に動くのが理想的なのです。
しかし、理想とは違うのが現実の生活ですよね。
私たち人間には、もっと効果的に、もっと確実に、理想に近い発達を狙い、より良い方向へ子どもを変化させたいという願いと求めを持ってしまいます。
そしてその願いから、何らかの発達を目論み、その発達につながる動きを意図的に子どもに仕掛け、仕組み、子ども本人から自然発生したかのように、促すことに陥りがちです。
子ども発の「動き」に伴う「発達」を適切に判断するのが大事!
ひとつは、偶然、自然発生的に子どもから出た動きのなかに、発達を見出す方策です。
もうひとつは、ある発達を伴う動きを促す状況をセットし、子どもが必然的に動いたときにその発達を見出すことです。
偶然でも必然でも、子どもから出てくる動きを、適切に選択判断して「キャッチ」し、効果的に目標に向けて「フィードバック」することによって、その動きに伴う発達が効果的に進みます。
でも、子ども発の動きを、適切に選択判断してキャッチし、効果的に目標に向けてフィードバックするとはどうすることなのでしょうか。そもそも、「キャッチ」と「フィードバック」は何を指すのでしょうか。