みなさんのご家庭では、お子さまの抜けた乳歯をどのようにしていますか?最近では乳歯を思い出として残しておける箱が市販されていたり、地域の風習を大切に実践されているご家庭もあると思います。
イギリスやアメリカでは、乳歯が抜けたらトゥースフェアリーがお金と引き換えに持って行ってくれるという言い伝えがあります。今回の英国すくすくレポでは、トゥースフェアリーがイギリスの子育てにどう関わっているかを、現地子育て体験談を通してお届けします。
抜けた乳歯は、枕の下に
乳歯がぐらぐらし始めたとき、我が家の子どもたちは、それはもう大騒ぎでした。ぐらぐら不安定で食事がしにくく、固形物を食べると痛いようで、本人たちも早く抜けて楽になりたい気持ちがあるものの、抜けるその瞬間の恐怖を思うとまだ抜けてほしくないという二つの気持ちの間で揺れ動く日々。歯も揺れる、心も揺れる…。
ちなみに、ぐらぐらする歯の事を英語で、wobbly tooth (ウォブリートゥース)と言います。
そんな中、子どもがお友達やイギリスの家族から聞きつけてきたのは、「歯が抜けるとトゥースフェアリーが来て、歯を持って行く代わりにお金を置いていってくれる」という言い伝えでした。学校でお友達の家にトゥースフェアリーが来た報告を数件聞くうちに、娘たちもだんだんと「よし!もう抜く。頑張る。ママ、歯に糸結んで引っ張って!」と言うように。
(その頃には歯が90度に倒れるほど、よくまだ歯がついているなぁと思うくらいグラグラの段階で、少し引っ張っただけで即抜けました。)
子どもながらに期待と恐怖の間で葛藤したものの、トゥースフェアリーが来てくれると心から信じているので、最後には勇気が出たようでした。
さて乳歯が抜けたら、その夜、枕の下に歯を置いて寝ます。眠っている間に、トゥースフェアリーが来て歯とお金を交換していってくれるので、朝起きたら毎回お祭り騒ぎ。「妖精さんが来た!コインが置いてある!すごーい!」と大喜びする姿は、微笑ましいものです。
しかし…、
我が家では娘たちのもとに、妖精さんが来なかったことが1回ずつあります。どちらの日も枕の下の歯の事をすっかり忘れてしまい、妖精役を全うせずに寝てしまったんです。翌朝、子どもたちが「えー!!妖精さんが来なかった!歯がまだある~」という起床時の声で「しまった!!(忘れてた…)」ということがありました。
「きっと、妖精さんが歯があることに気づかなかったんだね。枕の下で転がってしまって、うまく見つけられなかったのかな?」と声をかけて、「また今晩トライしてみよう!」と促すと、娘は「うん、そうだね…。きっと今夜は来てくれるよね。私、妖精さんにお手紙書こうかな。」と気を取り直してくれて、ホッ。
今夜は忘れないようにと、スマホのリマインダーをセットする妖精役なのでした…。
フェアリーとお財布事情!?
トゥースフェアリーが歯と引き換えにいくら置いていってくれるのかは、家庭によってそれぞれ違うようです。
小さい妖精さんなので、コインを置いていくことが多く、家庭によっては一番最初の歯だったり、奥歯か前歯かで金額が変わることもあるようです。
我が家は1ポンド(感覚的には100円硬貨ですが、現在のレート換算では160円程)で、妖精さんのお財布の紐は硬め(笑)。
この「トゥースフェアリーは歯に対していくら払うか?」というのは、イギリスでも悩みどころで、インターネット上では情報交換が行われていたりします。ちなみに、地域によっても平均価格に差があるようで、
Edinburgh – 75 pence
Nottingham – £1.00
Manchester – £1.20
Bristol – £1.25
London – £1.50
Leeds – £1.50
Harrogate – £2.50
というアンケート結果が出ています。
あるご家庭では「一本につき20ポンドあげている」ということで、驚きの声とともに新聞に載っていました!乳歯の数は20本なので、合計するとなかなかの金額…!このお家の妖精さん、リッチですね。娘のお友達の中にも、5ポンドもらったお子さんがいて、娘たちはとても羨ましがっていました。私が「コイン5枚は、運ぶのが大変なんじゃない?」というと、「大丈夫だよ!5ポンド札なら軽いもん。」との答え。「なるほど…。」いろんな意味で、子どもたちは知恵が働くようです(!?)
ところで「歯が抜けた」は英語でなんと言うかというと、「抜けた fell out」を使って言うこともできますが、もっとよく聞くのが lostを使った表現です。
lostだと「失くした」という意味になりそうですが、I lost my tooth yesterday! 昨日、歯が抜けたんだよ!と言って、娘のクラスメイト達が見せに来てくれるので、もっと自然な表現のようです。
学校もトゥースフェアリーの伝説に優しい
ぐらぐらの歯が、いつどんなタイミングで抜けるかは、誰にも予測ができません。(もちろん、自分で抜いた場合は別ですが。)
子どもたちの中には、学校にいる間に抜けてしまう子もいるようで、娘たちは時々「〇〇ちゃん、お昼ごはんのチップス(フライドポテト)食べてたら抜けちゃったんだよ。」とか、「〇〇くん、フットボールしてたら、歯が抜けちゃったの!」という話をしてくれます。
そんなある日、長女の歯も学校で抜けてしまいました。放課後のお迎えの時間に、長女が誇らしげに学校のかばんから出したのは、小さな白い封筒。そこには妖精のシルエットが描かれており、
「歯が抜けちゃったら、なくさないようにって、先生が特別な封筒に入れてくれたの。」とのこと。
学校の事務所に、特別な封筒が用意してあるのだそうです。
歯をなくしてしまったら、その夜に妖精さんが来てくれないなんて、子どもたちにとっては一大事!学校や先生もその気持ちを分かっていて、家まで無事に歯を持って帰ることができるようにしてくれているのですね。ありがたいなぁと思いました。
子どもによっては、アクシデントで歯が抜けてしまってなくしてしまうお子さんもいるようです。ご飯を食べている間に抜けてしまって歯を飲み込んでしまったり(筆者の甥っ子もそうでした!)、遊んでいる途中で抜けてしまい、手や玩具に当たった歯がどこかへ行ってしまったり(筆者の次女はこのケースで、白い石がたくさんある場所に落としてしまったので、石の中から歯を見つけるのに一苦労しました!)と、後になれば笑い話だけれど、そのときはパニックになるできごともあります。
歯を飲み込んでしまったり、歯をなくしてしまった場合、枕の下に置いて眠れないのでトゥースフェアリーは来てくれないのか?というと…
家庭にもよるようですが、多くの場合はトゥースフェアリーさんがおまけしてくれたり、お手紙と交換可能にしてくれたりと、みなさんいろいろ工夫しているようです。
「歯を大事にしよう!」というモチベーションUPにつながる
トゥースフェアリーが来てくれることでお金がもらえるという欧米の文化は、日本で育って筆者にとって驚くものでした。しかし、その伝説を上手に子育てに活用すれば、日ごろからの歯の衛生管理のモチベーションアップにつなげることができ、歯磨きを嫌がったり面倒くさがる年齢の子ども達に「歯を大事にしよう」という気持ちを芽生えさせる良いきっかけになります。
「虫歯の歯だったら、妖精さんもガッカリしちゃうよね。毎日ピカピカにして、素敵な歯を保とう!」と歯磨きの習慣作りに役立ちます。
歯磨き以外にも、「妖精さんにお手紙を書こう」と言って、文字や文章を書いたり、字の練習をする練習に活かすこともできます。なにより、大人が想像するよりも怖いらしい「歯が抜ける」というできごとを、勇気をもって乗り切ることができるのもメリットだと思います。
ぜひ、歯磨きの習慣やその他のモチベーションアップに、トゥースフェアリーの伝説を取り入れてみてくださいね!
■いしこがわ理恵さんのイギリス漫画レポートの記事はこちら↓↓↓