2023年06月26日 公開

【英国すくすくレポ】褒め言葉への返答にハッ!英国の育児で感じたこと

イギリス文化にだいぶ慣れてきたと思った矢先に、自分の先入観・固定観念にハッと気づかされたできごと、カルチャーギャップをイラストつきでご紹介します。また、子育てで真似したいと思った言葉がけや対応などについてもレポート!

育った環境や文化によって、コミュニケーションや会話のパターンに違いがあると感じたことはありませんか?
筆者はイギリスに移住し、子育てを始めてから、ますますそういったカルチャーギャップを感じる機会が増えました。それによって、自分がいままで「あたりまえ」「これが普通」と思っていた思い込みや価値観が、ガラガラと崩れるような気づきも…。

今回の英国すくすくレポでは、イギリスで子育て中にハッとした、コミュニケーションや言葉がけについてレポートします。

子どもや自分が褒められたときの反応

イギリスでの文化にだいぶ慣れてきたとはいえ、今でもときどき自分が先入観・固定観念にとらわれていたと気づかされるときがあります。つい最近のことなのですが、知り合いのママさんとバッタリ会いました。そのとき、その方の娘さんが別の日に私に言った言葉がとても印象深く、感銘を受けたので、素直な気持ちでそれを伝えました。

すると、そのママさんはとても嬉しそうに「そうなのよ、本当に良い子でね。自分なりに最近~を頑張っているのよ。」と教えてくれました。このときに、なぜか私の感覚は以前日本に住んでいたときの感覚に戻っていたようで、「相手の子どもを褒める」と相手の方は「いえいえ」「そんなことないのよ」と第一声が謙遜になるのを勝手に・自動的に脳が予想してしまっていました。そして「そうなのよ。」というポジティブな第一声に一瞬戸惑うというか調子が狂ってしまいました。

謙遜は日本独特の文化で、美徳ではあるけれど、人前で軽くけなされたり否定された子どもが傷ついてしまうという話を聞いたこともあります。また子どもだけでなく、大人社会でも同じで、外国人の方の前で奥さんを「愚妻」と言って、「なんで自分の大事な奥さんをけなすの!?」と相手にショックを与えてしまったというのは有名な例。もちろん、自慢が続くような会話はイギリスでも好まれませんが、誰かに家族を褒められたら、「ありがとう。そう、〇〇のおかげで助かっているのよ。」などと軽く肯定してから、別の話に繋げていくようなスマートな会話術は見習いたいところです。

また、SNSなどを見ていても思うのですが、家族への愛を伝える人がとても多い印象です。最高の娘、宝物の息子、最愛の夫など、日本人だとちょっと照れ臭くなるような投稿もときどきありますが、そうやって愛情表現された家族はきっと絆がさらに深まることでしょう。私はなんとなく恥ずかしくて、人目につく投稿などでは、そういった言葉を投稿することを躊躇してしまいますが、家族に直接言葉として伝えるように心がけています。あなたに感謝している、愛している、大切に思っていると伝えてもらえたら、きっと家族も自信がつくし、明日もまたきっと頑張れる気がするからです。また、そういう言葉をこちらから発することで、相手からも同じように伝えてもらえるので、とても良い循環に繋がります。

公共の場で子どもが泣いたり大声を出したら…

スーパーや公共交通機関、公園などの公共の場所で、子どもが機嫌を損ねたり大泣きしたりするのは、イギリスもやっぱり同じです。我が家も何度「うわぁ、どうしよう、始まってしまった」と内心泣きそうな気持になったことか。イギリスの他のママパパさん方はどんな対応をしているのだろうと、今までいろいろと観察してきたところ、あることに気づきました。

子どものイヤイヤ、癇癪、喧嘩などで、子どもの気持ちが乱れているとき、多くのママパパさんはまず、「どうしたの?」と落ち着いた声で訊ねてから、子どもの気持ちを我慢強く聞きます。ここですごいなぁと思ったのは、子どもの話を聞いていると、だんだんと大人の方もイライラしてしまったり、それはあなたが悪いとジャッジしたくなるような場面でも、子どもを人前で叱りつけたりしない方が多いことです。「あーもう!(怒)いい加減にしなさい!」と声を荒げてしまいそうになる場面でも、イギリスのママパパさん方は、かなり我慢強く接している気がします。「もう、そんなに泣くなら置いていっちゃうよ!」とか、「お店の人に怒られちゃうよ!」というような、その場しのぎの言葉かけもほぼ聞きません。どうして困るのか、どうして危ないのか等、理由でしっかり伝えることが一般的です。

小さい子であれば、気持ちをそらす言葉がけに変換してみたり、その場(店や公園)を一時離れて気持ちをクールダウンして戻ってくるような対応をとるのをよく見ます。人前で叱られるのは大人だって恥ずかしいし嫌なことですよね。子どももに対してもそれは同じで、気持ちを尊重して、人目がある場所では子どもの自己肯定感、想いを尊重していかなくてはいけないと気づかされました。

娘たちの通う学校では、春夏の季節、森みたいな場所も作られている大変広い一面芝生の校庭で昼休みに遊べるようになります。昼やすみの時間を子どもたちが安全に遊べるように、この遊びの時間のパトロール&けが等の応急処置をする仕事というのがあるのですが、筆者は去年からこのチームに入りました。自分の子どもたちが遊ぶ姿はもちろん、顔見知りの子どもたちが元気よく遊ぶ姿を見るのは、とても癒されます。

そんな中、さっきまで仲良く遊んでいたのに急に喧嘩が始まったり、泣き出したり怒ったりという子ども社会あるあるなできごとは、毎日起こります。このとき、校庭でときどき見かけるのは、学年が上の生徒たちが小さい学年の子ども達(4歳から7歳くらい)の間に入って、中腰になって目線を合わせてから、小さい子の気持ちを聞いてあげている場面です。
学年が上と言っても、小学校中学年~高学年で、彼らもまだまだ子ども。それでも、小さい子どもの目線に合わせるように、自分たちが少し身をかがめて、我慢強く小さい子どもたちの気持ちを聞いてあげることができるのは、この子たちが小さい頃から、周りの大人に同じように対応してもらってきたからなのだろうなと感銘を受けました。

年齢問わず、褒め上手

学校で働き始めて気づいたもう一つのことは、大人も子どももみんな「褒め上手」だということ。先生方もスタッフの方も、「あら、今日の洋服似合ってるね!」「髪型変えた?いいね!」と挨拶にプラスして褒め言葉を交わすのが日常。もちろん日本でも友達同士で褒めることはよくあると思いますが、「〇〇先生、おはようございます。今日の△△素敵ですね。」と定期的に言うのは、あまり無い事ではないでしょうか。

「褒めること」を何も思いつかなければ、無理に何か言う必要はありません。ただ、相手の素敵なところ探しが上手にできたり、逆に相手から褒められたとき「ありがとう」と気持ちを受け取れたら気持ちが良いですよね。褒めることは媚びることではなく、「私が良いと思ったから、良いねって言っただけ」という、なんともさっぱりしたイギリス的な理由がそこにあるだけなので、とってもシンプルなんです。

先生方も、子どもたちに関して「いいね!」と思ったことはすぐ言葉に出して伝えてくださっていますし、登下校時は先生方と保護者の方もよくそういった会話を交わしています。そういう毎日の会話を見たり、言われて育ってきているイギリスの子どもたちは、もうすでに褒め上手。筆者はアクセサリーを作るのが趣味なのですが、新しいイヤリングをつけていくと子どもたちに「そのイヤリング素敵ね~」とキラキラの目で褒めてもらえます。女の子も男の子も、小さい頃からこうやってコミュニケーションスキルを育んでいるのですね。

外見や持ち物だけではなく、褒めるところは周りにあふれていますね。笑顔が良いね、いつもお手伝いしてくれるね、〇〇頑張ってるね!など、子ども達の魅力だなと思うところ、やさしいなと思うところを声に出して伝えると、子どもたちとの心の距離が縮まっていくように感じています。

まずは「大人が手本を見せる」ことの大切さを痛感

「ポジティブな言葉を心がけて日々会話をする」こと、「叱るときは相手を尊重した方法で」など、イギリスでの子育てを長年観察していると、この考え方は子育てだけではなく大人になって働くようになってからも活かせるスキルと繋がっているなぁと実感します。実際、イギリスで上司が部下を注意したいときに、攻めるような言い方は避ける傾向にあり、「こういうところが問題だと思うんだ」「この部分を改善してくれると良いと思うんだけど」というような、交渉に近いような言い方をします。ビジネスのコーチングと子育てのコーチングは繋がる部分があると聞いたことがある方もいらっしゃるかもしれませんが、まさにその通りだとイギリス生活を通して感じます。

私も一人の親として、つい感情が爆発したまま子どもに怒ってしまったり、「さっきの言い方は良くなかったな…」と反省多めの日々ではありますが、まわりの真似したいと思う言葉がけ、伝え方、叱り方をなるべく思い出すようにして、子どもの自己肯定感を伸ばしながら育児を進めていきたいと思っています。

日本とは文化的背景や慣習の違いがありますから、全部をまねできるわけではありませんが、人前でも相手を褒めたり認めたり、自慢にならない程度に家族や子どもを肯定できる文化が少しずつ浸透していくのは、結果的に気持ちの良い社会に繋がっていくのかもしれませんね。

■いしこがわ理恵さんのイギリス漫画レポートの記事はこちら↓↓↓

\ 手軽な親子のふれあい時間を提案中 /

この記事のライター

いしこがわ理恵
いしこがわ理恵

在英12年目ハンドメイド好きの2児の母。武蔵野美術大学卒業。現在は教育に携わる仕事の他に、日本にルーツのある子どもたちを対象とした日本語子ども会活動・児童文庫活動も行っています。興味の範囲が幅広いので、常にいろいろな方向にアンテナをはりつつ情報収集が日課です。ハッピー子育てに役立つ情報をみなさまにお届けできれば嬉しいです。Instagram @rie.ishikogawa