今回の記事のテーマは「子どもの足が速くなるトレーニング」。
幼児から小学生の子ども向けの”短距離走”に特化したトレーニングをご紹介いたします。脚力をアップするので長距離走のタイムも上がります。
小学生くらいまでの「仲間内で重要視されるスペック」と言えば足の速さ。
足が速いと運動会、体育、外遊びの時に活躍できるのはもちろん、いろいろなスポーツにも有利。
足の速い子は筋力、柔軟性、瞬発力が高いため、その他の「投げる・跳ぶ・打つ」などの運動能力全般が高い傾向があります。
コーディネーショントレーニング実践方法 子どもの運動能力を伸ばそう!
足の速さは遺伝要素だけではない
親御さんの中には「足の速さは遺伝だから頑張っても仕方ない」とお考えの方も多いかと思います。確かに2歳くらいの小さな子同士でも足の速さには差があります。
幼児の足の速さの差は遺伝もありますが、それだけではありません。「発達度合い」や「毎日の運動習慣」によって速さに差が出ています。
現時点での脳や体の成長度合い、性格、1日の運動量・・・それらの違いが「足の速さ」の差として現れているだけ。元気に楽しく走れていれば、どの子も100点満点です!
厚生労働省の 生活習慣病予防のための健康情報サイト「e-ヘルスネット 身体能力と遺伝(遺伝子多型)」では身体能力と遺伝の関係を以下のように推察しています。
例えばトレーニングをしていないヒトを対象にVO2maxの遺伝率を算出したところ、約50%以下の遺伝的要因が関与しているという報告がなされています。またみんなが同じ相対的強度においてトレーニングを行った際のVO2maxの増加率の遺伝率は、47%であったと報告した研究もあります。しかしながら遺伝的要因は10%と低い割合であるとする報告もあります。
しかしながら一方で、人の身体能力は遺伝的要因のみにより決定されるわけではないことを十分認識しておくことも重要です。
引用文献:厚生労働省 生活習慣病予防のための健康情報サイト e-ヘルスネット「身体能力と遺伝(遺伝子多型)」立命館大学 スポーツ健康科学部 教授 村上 晴香 一部抜粋
「うちの子は運動神経が悪い」
「足が遅いのはパパ似だ。」などと決めつけずに、「足が速くなるトレーニング」を一緒にしてあげましょう。
脳と体が成長過程である幼児期、学童期のうちはトレーニング次第で、運動能力を高めることは可能です。
遊びやスポーツをもっと楽しむために、今より足が速くなるトレーニングをはじめてみませんか。
足が速い人の5つの特徴と姿勢
足が速い人の5つの特徴と姿勢をご紹介します。
【股関節が柔らかい】
股関節の可動域が広いことで、腸腰筋、大腿四頭筋、大腿二頭筋・半腱様筋・半膜様筋などの筋肉を効率的に使えます。ストライドも広くなります。
股関節が柔らかいと転倒時の怪我もしづらいです。
【瞬発力が高い】
瞬発力とは瞬間的に発揮できる筋肉の力、それに伴う手足のばねの力のことです。
瞬発力と言えば、スポーツテストの垂直跳びや立ち幅跳びがよく知られています。
また短距離走、投擲競技、跳躍競技、サッカー、野球、水泳などのスポーツ全般で必須な能力ですね。
短距離走はスタートダッシュが要。瞬発力を高めて、一瞬で筋肉の最大の力を出し切ることができれば運動会でも活躍できるはず。
【腕を90度に曲げて、後ろに引くことを意識して振っている】
「腕をしっかり振って走りなさい!」と言われた経験のあるママパパもいらっしゃるかもしれません。
腕を振ることで推進力が生まれ、体のブレを抑え、姿勢を整えます。
また腕の角度は90度が最適とされています。
これは体幹のブレを抑えて、重心を安定させるためです。一般的に60度以上に曲げることでブレが抑えられると言われています。
ためしに45度くらいで振ってみていただくと、体が左右に持っていかれる感覚があるはずです。
腕を振る時に後ろに腕を引くことを意識するのは、足を上がりやすくするため。右腕を後ろにしっかり引くことで、左足の引きつけが良くなります。これを左右繰り返すことで地面をしっかり蹴ることができ、反発力を高めます。
また腕を振ることで走りにリズムも生まれます。
【まっすぐ前を向いている】
未就学児や小学校低学年のお子さまが徒競走でまっすぐ走ることは簡単ではありません。集中力が未熟なため「隣の子をチラ見してしまう」、「応援しているママパパの方に体が向いてしまう」、こともあります。また筋力や身体コントロール能力も未発達なので体幹もぶれやすいです。
足の速い子は視線を遠くにして、ゴールを見て走っています。視線は前だけ。走ることに集中しています。
体幹のブレは、遠くの1点を見つめることで抑えられます。
「人と比べない」「周りの雑音はシャットアウト」することで、集中力も高まります。
【前傾姿勢である】
胸を張って走るよりも、前傾姿勢の方が空気抵抗を減らせます。特にスタート時は前傾姿勢で加速したいところ。
ただし肩・腰・膝・足首の関節が一直線になるように心がけます。前傾し過ぎて、腰が曲がってしまうのはあまり良くありません。筋肉の力を地面に効率的に伝えられなくなってしまいます。
「幼児~小学生向け」すぐに始められる俊足トレーニング
運動会、体育の授業で行われる短距離走で活躍するには、以下の3点を強化するトレーニングを行うと良いでしょう。
速く走るためには、肩回りの筋肉、大胸筋、三角筋、上腕三頭筋、股関節周りの筋肉、大臀筋、腸腰筋、太ももの筋肉を強化する必要があります。・瞬発力
スタート同時に筋肉の最大限の力を発揮させ、地面を強く蹴って前に進むことで加速もつけやすくなります。・正しい姿勢
前傾姿勢を保ちながらも体は一直線に保つことが短距離走の効率良い走り方。腰を前屈させないように注意したいですね。
寝そべってもも上げ&腹筋
【腹直筋と腹斜筋を鍛えるエクササイズ】
1.仰向けになって膝を90度に曲げる。足首も直角に。
2.手を前に伸ばし、ゆっくりと肩甲骨を浮かす。
3.3秒キープしてゆっくり元に戻る。
1~3を3回繰り返す。
さらに続けて・・・
4.仰向けになって膝を90度に曲げる。足首も直角に。
5.手を前に伸ばし、ゆっくりと肩甲骨を浮かす。
6.上半身を右にひねって3秒キープ。
7.ゆっくり真ん中に戻る。
8.上半身を左にひねって3秒キープ。
9.ゆっくり真ん中に戻り、元に戻る。
4~9を2回繰り返す。
これが1セット。できるセット数で挑戦しましょう。もちろん1セットだけでもOK。
もも上げからの全力疾走!
【足の筋力、足の運び方、推進力をアップ】
1.ももを股関節に対して90度になるくらいまで高く上げる「もも上げ」を10回する。
2.そのまま軽く走り出す。足の軌跡は、横から見ると円になるように動かす。
3.少しずつスピードを上げて、足の軌跡を楕円に近づけていく。
4.最後は全力でダッシュ。足の軌跡は楕円をイメージする。
家でもできる!その場ジャンプ
【両足ジャンプ:瞬発力を鍛え、地面からの反発力を感じるエクササイズ】
1.背筋を伸ばして、その場で両足ジャンプ。
2.着地時に膝が、曲がり過ぎないように、足首を使って跳ぶ。
【片足ジャンプ:左右のバランスを整え、足が速くなるフォームを作るエクササイズ】
1.地面につく足(軸足)はまっすぐ伸ばして片足立ちする。
2.上げた方の足のつま先は上げておく。
3.足首を使ってジャンプする。
※この時も背筋が曲がらないように注意!
慣れてきたら片足ジャンプを左右2回ずつ交互に行う。足の組み換えは素早く足が下りたと同時に反対側の足を上げる。
上達したら3~5回にジャンプ回数を増やす。
10秒ハンデの鬼ごっこ(親が鬼)
【全身の筋力、バランス感覚を育むエクササイズ】
幼児期から小学校低学年までは体を動かす遊びをたくさんすることで脳が活性化され、運動能力が伸びます。
子どもが楽しく全身運動ができる遊びと言えば鬼ごっこ。親子で鬼ごっこをすれば、コミュニケーションも取れて子どもの情緒も安定します。
1.親が10秒数えている間に、子どもはできるだけ遠くに逃げる。
2.10秒後に親は子どもを捕まえに行く。
捕まえられなくても、捕まえられてもお子さまを褒めてあげましょう。
「とっても速いから、捕まえられないかと思ったよ!」
「この間より速くなったね!パパ疲れちゃったよ~」
などと、言うことで自己肯定感が高まり、もっと速くなりたい意欲が出てくるでしょう。
※「捕まったらくすぐっちゃうよー。」などと、子どもが興奮しそうな声がけをすると盛り上がる。
鬼ごっこの中で走るための能力が身につきます。
「猛ダッシュ=瞬発力」、「ジグザグに走る=バランス感覚」、「走り続ける=持久力がつき、徒競走の後半のスピードが落ちなくなる。」などの走りのスキルが培われます。
足が速くなるトレーニングで得られる2つのメリット
1.運動能力(走・跳・投)がアップ!
速く走るトレーニング(もも上げ、筋トレ、鬼ごっこなど)を日常的に行うことで筋力・瞬発力・柔軟性・持久力・バランス感覚が偏りなく鍛えられます。
このことでスポーツ全般に必須となる基礎スキル「走・跳・投」が高められます。
2.”脳力”が育つ
運動をすることでワーキングメモリが高められます。これは脳の前頭前野という部位が運動によって活性化されるからです。前頭前野が発達することで、自己コントロール能力も高まります。
欲望を抑える自制心が育つことで、勉強やスポーツ、仕事の目標に向かって努力できるようになります。
※ワーキングメモリとは情報を一時的に記憶しながら、それを用いて作業を行う能力のこと。
徒競走で順位を上げるポイントは4つ
1.視線は遠くに!ゴールを見てまっすぐ走ろう
小さなお子さまほど、足元やすぐ先の地面を見て走りがち。これではスピードも出ませんし、ゴールに向かってまっすぐ走るのが難しくなってしまいます。
「よそ見せず、ゴールを見て走るんだよ。」と伝えておくだけで、目線が落ちることを避けられます。
普段の練習時にゴール地点にママパパが立って、「ママパパに向かって走っておいでー。」と呼びかけると良いでしょう。
慣れてきたら目標物を決めて、そこを目標にまっすぐ走る練習をしましょう。
2.腕はしっかり曲げて振る
走っている時、ひじの角度が60度より広いお子さまを時々見かけます。可愛らしく、微笑ましいのですが「速く走る」には適していません。
やっていただくと分かるですが、ひじの角度が広いと腕振りの際、脇が空き、ひじが横に出やすくなります。空気抵抗が増えるため疲労感も感じやすくなります。
腕を90度程度にしっかり曲げることで、脇を締めた腕振りができるようになります。最小限の空気抵抗で推進力を生み出すには「腕はしっかり曲げる」ことが鉄則です。
3.とにかく全力で!
徒競走は隣の子が気になってチラ見してしまいがちです。競争なので他人が気になるのは仕方がないことですが、よそ見をすることで重心がずれてしまいます。スピードを落とさないためにも前だけを見て、全力ダッシュします。
日常的にタイムを測って「自己ベスト」を知っておくことで、自分との戦いに集中しやすくなります。
4.ゴールは駆け抜ける
幼稚園、保育園の徒競走でよく見られるのがゴール手前の失速や停止です。
ゴールを駆け抜けるつもりで走るように伝えておきましょう。
かけっこ教室、スポーツ教室・・・プロにお任せするのもアリ
陸上競技種目のオリンピック出場選手、現役実業団選手、全国大会出場者、大学の陸上部コーチなど、「走りのプロ」の指導を希望するなら、「かけっこ教室」、「スポーツ教室」などの習い事がおすすめ。
かけっこ教室は1日だけの単発スクール、数日間の短期スクールがあります。
屋内または屋外で、グループやマンツーマンの対面指導が受けられます。場所や転校に左右されないオンライン指導もあるので、ご自宅のリビングでプロの指導の受けることも可能。
スポーツ教室は一般的な習い事と同様、月謝を払い長期間通うものが多いです。こちらは運動能力全般を伸ばすトレーニングを継続的に行うことで、確実に走力を高めていきます。50m走、ボール投げ、跳躍等の「体育の授業で行う内容」で良い結果が残せるように指導します。
レッスン体系、料金例などは以下の通りです。
かけっこ教室 | スポーツ教室 | |
---|---|---|
受講内容 | ・速く走るための姿勢や、エクササイズを教える。 ・フィジカル面だけではなく、メンタル面もサポート! | ・基礎体力をつけ、運動能力全般を伸ばすことで、走力をアップ。 ・50m走、ボール投げ、跳び箱など「体育の授業」対策ができる。 |
受講期間 | 1日または数日間 | 月単位、長期間 |
料金例(税込) | 【グループレッスン】 60分:2,500円 90分:4,000円 【マンツーマンレッスン】 60分:15,000円 90分:5,000円 【オンライン】 30分:1,500円 30分:2,000円 | 【グループレッスン】 50分:週1,月額5,500円 90分:週1,月額8,800円 【マンツーマンレッスン】 45分:週1,月額20,000円 30分:月回数自由、1回4,400円 |
「トレーニングは裏切らない」長い目で見てあげましょう
足が速くなるトレーニングの効果が現れるまでの時間は、個人差があります。お子さまの年齢、性格、体質、運動量によっても変わってきます。
「運動会までに速くなりたい!」
「体力測定までにタイムを0.5秒縮めたい。」
短期目標ができたことをきっかけに「走力アップトレーニング」を始めるお子さまが多いかと思います。
そのためにすぐに成果が感じられないと、トレーニングをやめてしまう子も多いです。
しかしこれは非常にもったいないことです。日常的にトレーニングを続けていくことで、半年後、1年後以降に急激にタイムが縮まることも多いからです。
何より足が速くなるトレーニングは、他のスポーツ(サッカー・野球・ドッチボール・跳び箱・水泳等)の基礎スキルを上げることにもつながります。心肺機能と免疫力も高まるので、健康管理のためにも続けていきたいですね。