バイリンガルやマルチリンガル教育をしていると、子どもの言語の発達についての悩みは尽きません。翻訳家ママのバイリンガル教育第8回では、成長段階で変化するバイリンガル教育の悩みとその解決方法をご紹介します。
バイリンガル教育は不安と安堵の繰り返し
カナダ在住の筆者の11歳の息子は、仏語、英語、日本語のマルチリンガルです。そう言うと羨ましいと言っていただくこともありますが、実際には生まれてから今まで、息子の言葉の発達に一喜一憂し続けています。また、息子の成長とともに言語に対する悩みは変わり、そのたびに解決策を模索してきました。3か国語でしっかりコミュニケーションができる今でも、言語に関する悩みはつきません。
筆者を含め、バイリンガル教育を長く続けている人の共通点は、子どもがそれらの言語を使う状況を提供し続けていることです。それは、バイリンガル教育の大きな壁の1つが「続けること」だからです。精神論的になってしまいますが「子どもをバイリンガルにするぞ!」という情熱をひそかに持ち続けることも大切です。
それでは、バイリンガル教育を長く続けるために、子どもの成長段階別に言葉の成長の悩みと解決策を紹介していきます。
【0~2歳】誕生から発話までの言語の悩みと解決方法
赤ちゃんが生まれてから、言葉を話しはじめるまでは、一言語だけの環境だとしても期待と不安でいっぱいですよね。言語が増えるほど、期待と不安も大きくなっていきます。子どもが生まれたときからバイリンガル教育をはじめる人にとっての一番の心配事は「言葉が遅れること」だと思います。とくに、親が子ども時代に一言語の環境で育った場合、まだ何も話すことができない我が子に声をかけながら「本当に複数の言語を理解できるようになるのだろうか?」と何度も考えてしまいます。そして、実際にまわりの子どもより発話が遅くなってしまったら「バイリンガル教育のせいなのだろうか?」と不安になるでしょう。
他の子育ての悩みと同じように、言語の発達についての悩みを完全になくすことはできません。けれども、親が言語の発達やバイリンガル教育についての知識をつけることで、不安を少しずつ取り除くことができます。言葉の発達について学び、実践することは、子どもの言語の発達を促すことにも役立つのでおすすめです。さらに、バイリンガル教育について、相談できる人や話ができる仲間を持つと心強いでしょう。
【3~5歳】幼児期の言語の悩みと解決方法
子どもの言葉が急速に成長していく幼児期に悩むのが言語のバランスです。我が家の場合は、息子が言葉を話しはじめた時期に、筆者と過ごす時間が圧倒的に長かったので、日本語のほうが早く成長していきました。これは、日本語のわからない夫にとっては、かなりのストレスとなりました。だからといって、筆者が日本語と英語を混ぜてしまっては、息子を混乱させてしまいます。そこで、会話はそれまで通り日本語でするようにして、英語で読み聞かせをする時間を増やしました。
日本で幼い子どもが英語教育を受けていたり、家庭で英語育児をしていたりする場合も、この時期に英語のほうが強いと「日本語は大丈夫?」と心配になるかもしれません。けれども、多くの場合、英語が強いのはこの時期だけです。小学生になれば、言語のバランスは逆転します。ですから、この時期は、外圧に負けない強い心を持ってバイリンガル教育を続けることが大切です。そのためにも、子どもの言葉の発達についての知識は継続的に習得するようにしてくださいね。
【6歳~】小学校入学後の言語の悩みと解決方法
小学校に入学すると学校で使う言葉が、どんどん伸びていきます。たとえば、日本の家庭で英語子育てを実践している場合は、英語を使う時間が幼児期より短くなってしまいます。すると、日本語と英語のレベルの差が開いてしまい、放っておくと日本語しか使わなくなってしまうのです。自我が強くなってきている子どもに「英語をやりなさい!」なんてしつこく言っては逆効果になっていまいます。
小学生になってからもバイリンガル教育を継続するためには、子どもが自分から第二言語を使わなくてはいけない状況を作ってあげることが大切です。もちろん、嫌々ではなく楽しくできることです。小学校入学前にある程度の英語が身についている場合は、英語で習い事をするものいいでしょう。また、ビデオゲームが好きな子どもには、ゲームの表示や音声を英語にするのも効果的です。定期的に英語で話す人がいない場合は、子どもが好きそうな英語のメディアを見つけてみましょう。