「早く早く!」「ちゃんとして!」「勉強しなさい!」どんな親も使ってしまいがちなこれらの言葉は、実は子どもの自尊心を傷つけてしまう「呪いの言葉」かもしれません。書籍『子どもの自己肯定感を高める10の魔法のことば』から、ポジティブな声かけの方法を学びましょう。
自己肯定感の低い日本の子どもたち
『子どもの自己肯定感を高める10の魔法のことば』の著者で、30年以上学習塾やセミナーなどで教育現場にたずさわってきた石田勝紀さんは、その原因の1つが「テストによる成績の順位付け」だと指摘しています。
著者:石田 勝紀
出版社:集英社
日本では小学校の高学年ごろから、入塾テストや模擬テストなどでふるいにかけられる機会が増え、中学校では定期考査がはじまり、受験時には偏差値が提示され、数値で明確に順位付けが行われます。
その結果、子どもたちは「学力=自分の価値」という錯覚に陥りやすくなっているのです。
そして日本人の多くは、「できること」よりも「できないこと」に注目しがちです。子どもが国語で満点を、算数で50点を採ってくると、つい算数の悪い成績ばかりに目がいって、子どもを責めてしまう親も少なくありません。
日本の子どもたちは、「勉強ができない自分はダメな人間だ」と傷つき、自信とやる気を失いやすい状態にあるといえるでしょう。
「自己肯定感」と「学力」は密接に関係している
自己肯定感を上げれば学力も上がる。
学力が上がれば自己肯定感も上がる。
学力を上げるには、子どもの心の上向きにし、学ぶことを求めるエネルギーが出やすい状態に整えてあげることが大切です。そのためには、子どもたちの自己肯定感を損なうような「呪いの言葉」を止め、代わりに自己肯定感を育てる「魔法のことば」を使うべきだと、石田さんは伝えています。
つい使ってしまう3つの「呪いの言葉」
「ちゃんとしなさい」
「勉強しなさい」
しかし本書では、これらの言葉は「子どもの自己肯定感を破壊する呪いの言葉」だとして、なるべく使わないことを推奨しています。
3つの言葉は、どれも子どもに対する「〇〇しなさい」という命令です。命令は、子どもの自主性を失わせ、「言われないとできないダメな子だ」というメッセージを伝えてしまいます。
子どもを直接的に傷つける言葉ではないからこそ、つい便利に使ってしまいがちですが、考えてみれば、これらの言葉を使うとき筆者の心の中には、「どうしてこの子は私の理想どおりに動いてくれないの」といういらだちがあるように思います。
子どもは敏感に親のいらだちを感じとり、自尊心を傷つけられていたのでしょう。
「呪いの言葉」は「魔法のことば」で上書き保存!
この本の中では、
・「魔法のことば」で、うっかり使ってしまった「呪いの言葉」は上書き保存する
紹介されている「魔法のことば」は、ごく一般的に使われている言葉がほとんどです。不自然な褒め方にならない程度に、さりげなく日常会話に盛り込むことができるので、反発しやすい年齢の子どもにも受け入れやすくなっています。
「魔法のことば」ってどんな言葉?
2. さすがだね
3. いいね
4. ありがとう
5. うれしい
6. 助かった
7. なるほど
8. 知らなかった
9. だいじょうぶ
10. らしくないね
たとえば、「すごいね」「さすがだね」は、勉強に関しては使うべきではないと石田さんは語っています。
テストで100点を採った子どもに「すごいね!」と声をかけて褒めるのは簡単ですが、そうすると次に子どもが70点を採ったときに、同じように声をかけるのが難しくなります。
また「さすがだね!」と言われた子どもは、その場ではうれしく感じるはずですが、「次回も親に『すごいね』『さすがだね』と言われるような点数を採らなければならない」というプレッシャーを感じることにもなります。
勉強に関しては「いいね」という「魔法のことば」を使い、褒めるのではなく、努力を認めてあげることが大切だとしています。
筆者は、最後の「らしくないね」という言葉にはっとしました。
子どもが悪いことをしたときは、つい「どうしてこんなことをしたの!」と責める言葉を投げかけてしまい、子どもが口をつぐんでしまうことが多かったのです。
そこで子どもに、「あなたらしくないことをしているね。どうしたのかな」と声をかけるようにしたところ、きちんと自分がなぜそういう行動をしたのか、理由を話してくれるようになりました。
「らしくないね」という言葉には、「あなたが本当は優しい子だって知っているよ。でも今のあなたはいつもと違うね」という受容のメッセージが含まれています。子どもの自己肯定感を傷つけずに、子どもの行為をいさめることができる、すてきな言葉です。
本書の中では、これらの「魔法のことば」の使い方のコツがていねいに解説されていますよ。
親の言葉が変われば子どもも変わる
自己主張が激しくなった長女に手を焼き、「ダメでしょ!」「いいかげんにしなさい!」と、1日1回は怒っていたような時期でした。
慌てて日々の声かけを見直し、なるべく長女の自己肯定感が損なわれることのないよう、小さなことを褒めたり、努力を認めたりする言葉を選ぶように心がけました。
少しずつですが変化は確実に起き、1年がたつころには、長女は「自分はできる子だもんね!」と笑ってくれるようになったのです。
親の言葉が子どもに与える影響は、本当に大きいものです。「影響力の大きさはわかっているけれど、どんな言葉を使えばいいかわからない」というパパ・ママに、本書が示している短くシンプルな「魔法のことば」は、大切な指針になってくれるのではないでしょうか。
本書で教わった実践的な10の「魔法のことば」をたくさん使って、筆者も子どもの自己肯定感をより高めていきたいと考えています。