これまでは、賢さとは学力で測るものとされていました。しかしこれからの時代は学力が高いだけでは活躍することができないと言います。では、どんな力が必要なのでしょうか。日本初のSTEM教育スクール「ステモン」を主宰する中村一彰さんに聞きました。連載最終回です。
おうちでできる探究学習【全4回連載】
「STEM教育」とは、Science(科学)、Technology(技術)、Engineering(工学)、Mathematics(数学)のそれぞれの単語の頭文字をとったものです。
STEM教育は、よく“理数教育”ととらえられますが、そうではありません。
想像力や表現力、問題解決能力、個性を大切にすることこそが、STEM教育の根底にあるものです。
『おうちでできる探究学習』をこれまで3回にわたり連載してきましたが、最終回では、これからの時代を生きる子どもたちに必要な力と、それを養うための学校と家庭の役割について、お伝えします。
学力はこれから必要な6つの力のうちの1つでしかない
テストや通知表で評価される学力が高い子=賢い子とされてました。
しかし、社会が変化する中で、「賢さ」の定義も変わっていきます。
そこで私が主宰する教室では、次の6つの指標を置いて子どもたちを評価しています。
(2)Communication=伝える力
(3)Content=学力
(4)Critical Thinking=批判的に考える力
(5)Creative Innovation=創造する力
(6)Confidence=失敗を恐れない気持ち
(参考:「科学が教える、子育て成功への道」より)
これからのAI社会では、これら6つのCを高めていくことが重要になります。
つまりこの6つのCが、Vol.3の最後に出した問いの答えです。
【おうち探究学習】マリオ型?ゼルダ型?AI時代に活躍できるのはこんな人!
6つすべてのCを高め、AI社会でゼロからイチをつくる人へとお子さまを育てていきましょう。
ゆるやかな集団の中で学びをシェアする
こうした自身の体験から、子どもに対しても「我が子には勝ってほしい」「自分の子だけはうまくいってほしい」というような意識に繋がっているのだと思います。
しかし、これからの時代は、一人でやるよりも仲間とコラボすることが大切です。
今はインターネットを通じて24時間世界中とつながっている時代です。気づきや製作したものを誰かとシェアできる方が、可能性も能力も学びも、どんどん広がっていくのです。
実は、子どもは自然体でいると「お友だちと一緒に何かを作り上げていきたい」という純粋な欲求があります。
これは、私が主宰している「ステモン」での子どもたちの様子を見ていると、よくわかります。ぜひ、そうしたお子さまの気持ちを大事にできるといいでしょう。
学校教育で「できること」と「できないこと」
日本の学校教育は、基礎学力を身につけていくうえでは大変優れています。
世界でもトップクラスの教科教育を、全国どこでも無償で受けることができる。
これは、日本で学ぶ利点といえるでしょう。
しかし、いくら知識を増やしてもそれだけに留まっていては意味がありません。
その知識をどう活かすかが大切です。
記憶したことを学び、理解する(=インプット)という学びは学校教育が適していますが、それらの知識を活用する力は、今の学校教育だけでは難しい現状があります。
だからこそ、子どもが知識を活用(=アウトプット)する力を、ご家庭や民間教育で補っていくことが求められています。
この連載の1回目や2回目でご紹介したような言葉がけを意識するだけでも、子どもへの影響は大きく変わってきます。
私が運営しているSTEM教育スクール「ステモン」や民間学童保育「スイッチスクール」では、学校だけで学ぶことが難しい「活用する力」「創造する力」「表現する力」を育むことを意識しています。
現状の学校教育だけでは行き届きにくいことを補える場を作ることで、これからの時代を生きていくために必要な6つの力を養っていきたいと考えています。
強くてよいコミュニティを作って、子育てに活かそう
このSTEM入試の内容を見てみると、いわゆるこれまでの学力だけではなく、知識の応用や仲間と協力できるか、コラボして良いものを作れるか、という力が求めらます。
試験でも採点の基準となるほどに、周りとのコラボを通して知識を活用する力が求められるのです。
こうした力をお子さまに身につけてもらいたいと考えたとき、一番大きな影響を与えるのは、コミュニティです。コミュニティは、能力だけではなく、精神面での安定や人格形成にも関わります。そして、子どもにとっての居場所でもあります。
家庭でも塾でも習い事でも、どんな場所でもいいので、子どもが伸び伸びと個性を発揮できる居場所を作ってあげましょう。
私はステモンを運営する上で、「強くてよいコミュニティ作り」を大切にしています。お子さまにとっての居場所の一つとして、ステモンを活用していただけたら大変嬉しい限りです。
中村一彰先生プロフィール
-小学校教員免許
-LEGO® SERIOUS PLAY® facilitator
埼玉大学教育学部卒業後、民間企業に就職。大手企業を経てITベンチャー企業に転職。創業期から東証一部上場までの成長期にて新規事業開発や人事責任者を担当した際に、「学び続ける力」や「IT教育の重要性」を感じ、教育事業を行う株式会社ヴィリングを創業し日本初のキッズ向けSTEM教育スクール「ステモン」を主宰。
2017年度は小金井市立前原小学校にて5年生の理科講師としても勤務。
2児の父親。
著書:「AI時代に輝く子ども」(CCCメディア出版)
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