幼い頃から外国語教育をすることで、子どもが「複数の言語を混ぜこぜにして使ってしまうのでは……」というのが、バイリンガル教育の心配事の1つ。そこで、子どもが複数言語を混ぜないためにおすすめしたい「1人1言語の原則」や実践方法、続けるコツを紹介します。
子どもは複数の言語を混ぜて話すようにならない?
生まれたときから複数言語の環境で育っている子どもは、誰とどの言語で話せばいいのかを幼いうちから自然に身につけています。筆者の息子は1歳過ぎには、自然に「パパには英語、ママには日本語」の切り替えができるようになっていましたが、「パパとは英語で話そうね」というように教えたことはありません。また、これまでにたくさんのバイリンガルやマルチリンガルの子どもたちと出会ってきた中で、複数言語のバランスが取れている子どもの多くは、人による言語の使い分けができていると感じてきました。
ただ、人による言語の使い分けができている場合でも、1つの文章のなかに複数の言語が混ざってしまう場合があります。たとえば、日本語と英語のバイリンガルの子どもが「今日は学校で run したんだよ」というような感じです。テレビなどでこのような話し方を聞いたことがある方も多いのではないでしょうか?
それでは、バイリンガル教育を受けている子どもたちが、複数の言語を混ぜてしまわないためには、どうすればいいのでしょうか?
バイリンガル教育で使い分けが重要な理由
子どもが複数の言語を混ぜてしまわないためには、子どもとの接触時間の長い人たち(家族や先生など)が言語を混ぜないことが大切です。もし、ママやパパが日本語の文章の中に、英単語を入れて話せば、子どもはそれを真似してしまいます。そして、一度、その話し方が身についてしまうと、修正するのはとても大変です。ですから、子どもがバイリンガルとして複数言語で混乱せずに成長するには、周囲の大人たちが言語の使い分けに気をつける必要があります。
言語の使い分けで効果があると言われているのが、次に紹介する「1人1言語の原則」です。
バイリンガル教育の「1人1言語の原則」とは?
バイリンガル教育で言葉が混ざらないようにするために効果があるといわれているのが「1人1言語の原則」です。これは、子どもに話しかける言語を1言語に限定することによって、子どもが複数言語で混乱するのを避けるというものです。例えば、子どもにママは英語、パパは日本語で話しかけるという感じです。
ただ、「1人1言語の原則」を徹底しようとすると、家庭内の空気が悪くなることがあります。それは、ママとパパがそれぞれ子どもに話しかけている言語が理解できない場合です。たとえば、我が家の場合、筆者と息子は日本語で会話をしますが、夫は日本語が理解できません。そのため、3人でいるときに筆者と息子が日本語で会話をすれば、夫にストレスが溜まります。反対に、夫と息子がフランス語で会話をすると、筆者は理解できません。家族の会話をスムーズにするためにも、家族3人のときは、唯一の共通言語である英語で会話をします。
それでは、1人1言語が徹底できない場合は、家庭でどのように言語の使い分けをすればいいのでしょうか?
日本の家庭で「1人1言語の原則」を実践するには
「1キャラクター1言語」を取り入れる
朝の絵本は英語で
絵本の読み聞かせも「1キャラクター1言語」と同じで、乳幼児期は同じ絵本を異なる言語で読むのは避けましょう。筆者の息子が2歳ごろに「はらぺこあおむし」を日本語と英語で読んだことがあったのですが、直訳ではないせいもあり息子を混乱させる結果になってしまいました。
また、寝る前に英語1冊、日本語1冊というように絵本の読み聞かせをしている方がいるかもしれません。けれども、使い分けの視点で考えた場合、同じ人が2言語で読み聞かせをするのであれば、同じ時間に複数言語の絵本を読むのはできるだけ避けたほうがいいです。英語での読み聞かせをするのであれば、寝る前は日本語、朝は英語で読み聞かせるなど、時間を分けたほうがいいでしょう。
使い分けの成功のカギは「繰り返し」
子どもが複数の言語を混ぜてしまわないようにするには、周囲の大人がしっかり言語を使い分けることが大切です。もし、子どもがあまりにも複数言語を混ぜて話してしまっている場合は、自分の話し方を振り返ってみましょう。
ただ、かなり徹底して使い分けをしていても、1文のなかに複数の言語が混ざってしまうことがあります。そのときは、間違いとして指摘するのではなく、会話のキャッチボールの中で、そのときに使用している言語に言い換えてください。「何回言ったらわかるの!」とイライラしてしまうこともあるかもしれませんが、言語の定着の近道は「繰り返し」です。複数の言語に挑戦している子どもを応援する気持ちで、何度も何度も言い換えてあげましょう。
(参考図書)
『完全改訂版 バイリンガル教育の方法』(中島和子著/アルク)