武田美穂さんは「ますだくんシリーズ」「ハンバーグハンバーグ」等でおなじみの絵本作家です。太い線の輪郭で描かれる明るい絵柄は、字が読めない小さな子も引き込まれるはず。子どもの共感力を伸ばし、思いやりの心を育てる武田美穂さんのおすすめ絵本5選のご紹介です。
武田美穂さんはどんな人?
太い輪郭で描かれた、明るい親しみやすい雰囲気のキャラクターと、まるで子どもが自由に塗った塗り絵のようなカラフルな色使いが特徴的です。
映画製作者であるお父様と、女優のお母様に育てられた武田美穂さん。”父母が表現者である家庭環境”も独特の絵柄と力強く心に響く文章の基になったのかもしれません。
短い文章・巧みな擬音で心理・情景をストレートに伝える作風は乳幼児から楽しめます。
デビューから現在まで
デビューからわずか4年、1991年発表の『となりのせきのますだくん』が絵本にっぽん大賞・講談社出版文化賞・絵本賞を受賞します。この作品は1992年度青少年読書感想文全国コンクールの課題図書にも選ばれ、彼女の代表作となりシリーズ化します。
その後も『きょうはすてきなくらげの日!』『ありんこぐんだん わはははははは』など子どもの好奇心と想像力を刺激し、共感できる作品を生み出し続けています。
真っ直ぐな心が伝わる「となりのせきの ますだくん」
著者 :武田 美穂 (作・絵)
出版社 :ポプラ社
小学一年生のみほちゃんは隣の席のますだくんがこわいので、学校に行きたくありません。ますだくんは毎日からかってきたり、いじわるを言ってくるのです。
みほちゃんはますだくんを恐ろしい”かいじゅう”みたいに感じています。作品中のほとんど場面で、ますだくんがかいじゅうの姿で描かれているのはそのためです。
ある日、大切な鉛筆をますだくんに折られてしまったみほちゃん。怒りのあまり消しゴムを投げて、ますだくんにぶつけてしまいます。
「気になる女の子にちょっかいを出して、嫌われてしまう。本当は仲良くなりたいのに……」素直になれない男の子の不器用さと優しさが描かれています。
気持ちの伝え方・思いやりの気持ちについて考えさせられる作品。みほちゃんがますだくんの優しさに気づいた時、彼は普通の人間に描かれています。親子で温かい気持ちになる結末です。
食材のイラストと調理の擬音にゴクリ「パパ・カレー」
著者 :武田 美穂(作)
出版社 :ほるぷ出版
パパがカレーを作る様子をひたすら追う絵本です。レシピ本のような一冊ですが、そのシンプルさが子どもの心をひきつけます。
人物が描かれず、パパの手・食材・食器・調理器具にクローズアップされた絵面は臨場感たっぷり。力強いタッチの絵柄と「ごろごろ ジュー」などの擬音のコンビネーションが絶妙で、食欲がそそられます。
隠し味のバナナ、大きめ野菜が”男の料理”を感じますね。ママではなくパパが作るカレーのワクワク感が伝わる、美味しい絵本です。
子どもの想像力をユーモラスに描く「こわいドン」
著者 :武田 美穂 (作・絵)
出版社 :ポプラ社
こわがりやの「ぼく」は、こわいものだらけ。冷蔵庫の音・壁のしみ・電気のかさ等、あらゆるものが何だか恐ろしく、おばけのように思えてしまいます。
そんなぼくのこわがる気持ちが極限に達した時、かいじゅう「こわいドン」が現れます。こわくてこわくて我慢できないぼくは、かいじゅう「ないちゃうドン」に変身。ないちゃうドンはこわいドンとどう向き合うのでしょうか?
家の中でも暗い場所・誰もいない部屋で「壁のしみが顔に見える」「影が揺れて見える」と感じ、恐怖心を抱く子どもは多いですよね。パパママも小さい頃は同じだったのではないでしょうか。
何でも怖がりビクビクするぼくの姿に、共感しエールを送りたくなるはず。1人寝デビューの子にもおすすめです。
譲る気持ちを育む「ごいっしょに どうぞ」
著者 :くすのき しげのり(作)、武田 美穂(絵)
出版社 :廣済堂あかつき
すくすくようちえんから、喧嘩する声が聞こえています。
「ぼくが きのうから よんでたんだよ!」
「きょうは わたし!」
しゅんくんといくちゃんが1冊の本を取り合っているのです。一歩も譲らない二人は本を引っ張り続けます。
本が破れそうになり、しゅんくんは思わず手を離してしまいます。倒れたいくちゃんは大泣き。周りに友達が集まってきて、しゅんくんを責め始めます。それを見ていたゆき子先生がとった解決策は……?
先生はどちらも責めず、二人が取り合いする様子を真似ることで子ども達に気づかせます。しゅんくんといくちゃんは仲直りして、一緒に本を読めるように。
人を思いやり、譲ることは「負けることではない」と教えられる作品です。
武田美穂さんの描く表情ゆたかな絵が、お話をしっかりと子どもたちの心に届けます。
子どもの短所を優しく励ます「わすれもの大王」
著者 :武田 美穂
出版社 :WAVE出版
先生から呼ばれて注意をされてしまうほど、忘れ物の多いけんたくん。クラスメイトの発案で忘れ物をした数を棒グラフにすることになります。友達がサポートしてくれるのですが、けんたくんのグラフはどんどん伸びていき、ついには「わすれもの大王」と呼ばれるように。
一方隣のクラスには「わすれもの大社長」が現れて、クラス対抗わすれもの競争になっていきます。「わすれもの大王」VS「わすれもの大社長」の決着はいかに。
忘れ物が多いことは短所として先生・親から注意されるのが当たり前ですが、この絵本の世界では「忘れ物が多いことがステータス」になっています。
忘れ物をすることを賞賛するクラスメイト、忘れ物が減ったことを褒めてくれる女子……。ナンセンスなストーリー展開とけんたくんの揺れる心が子どもをストーリーに引き込みます。
ラストに「わすれもののしかたをわすれてしまう」けんたくん。子どものできない・苦手な部分は長い目で見守ってあげたいな、と感じさせられます。
読書の習慣を”親子で共感できる絵本”から始めよう
親子で共感しながら読むことができる、読み聞かせ向きの作品が多いので、コミュニケーションを取りながら、読み聞かせ時間を楽しみましょう。