舞踏家として、紙芝居の演者として、メキシコと日本をつなぐ活躍をしている横尾咲子さん。3人の子どもたちを育てる現役ママでもある横尾さんに「紙芝居の魅力」やおすすめの作品をうかがいました。
メキシコ、そして紙芝居との出逢い
派遣先では、ダンスやリズム遊び、そして見よう見真似で創作した紙芝居を元に子どもたちと演劇を創るなどで障がい児をサポートしていました。
日本に帰国後、派遣時に出会った現在のパートナーと共に「紙芝居をメキシコに持って行こう!」と計画。
紙芝居の権威である、まついのりこさんに弟子入りしたことで、紙芝居のプロとしての第一歩を踏み出しました。
一枚の紙から飛び出す「世界」を共有
横尾さん:絵本のイラストは本当に繊細で、細かくいろいろな描写が含まれています。絵本の読み聞かせは、物語を読みながらその世界に入っていく行動だと思います。
紙芝居は、枠から外に紙をめくって次のページに移る、その動きに表わされるように、内側から外に世界が飛び出し、それを共有するアクティビティだと思っています。
紙芝居の最大の魅力とは
横尾さん:こちらで上演した「ごきげんのわるいコックさん」のような参加型の紙芝居だと特にそうなりますね。今回はホールも広く、お客さんも多かったのでマイクをつけての上演になりましたが、本当は紙芝居は自分の地声でやるのがベストだと思います。聞き手も最大で30人くらいが理想的です。
紙芝居の最大の魅力は、外に飛び出した世界をみんなで共有し、「共感力」を育むことではないでしょうか。
紙芝居を読むときのコツ
横尾さん:紙芝居は動かない画面が特徴です。絵とよく練られた台本と、ナレーション、この三つが一体となっていなければ成立しません。シンプルな静止画が、より子どもたちの想像力をかき立てるのだと思います。だから、物語が続いている最中に質問したり、説明したりするような野暮なことはしません!あくまでも子どもたちの想像力に委ねるのです。
紙芝居と、自身の子育て
横尾さん:「これ読んで」と言われたら、リクエストに応えることはありますが、むしろ、子どもたちに紙芝居を読ませる方が面白がってやってます。どこかで子どもたちの表現力の向上にも役立ってるかもしれませんね。
ーー咲子さんのお母さんとしての体験が、紙芝居経験に役立っていることは?
横尾さん:自分の子育てが紙芝居に与える影響は多大と思ってます。お客さんとなる子どもたちに対して、ごく自然に語りかけられますから。
どんな紙芝居作品がおすすめ?
横尾さん:童心社の紙芝居がおすすめです。紙芝居の特色をよく生かした作品が多くあります。
0〜2歳くらいの赤ちゃん向けには、色彩がキレイで抽象的な絵と、ナレーションではなく、擬態語と擬音語のみを使った作品を創作しましたが、なかなかウケがよいです。
子どもと一緒に、筆を使わず、手やじゃがいもスタンプなどで、ペタペタと色を付けて、それを紙芝居にしちゃうのも良いと思います。
最近、赤ちゃん向けの仕事をすることが多いのですが、自分の子育て経験からいっても、「抽象的なモノ」の大切さを実感しています。子どものほうが、私たちよりずっと柔軟で自由なので、常識的なモノや規定内のモノを与えるよりも、抽象的なモノで彼らの想像力と創造力をのびのびと培う、それが大事だと感じています。
3歳以上のお子さんたちにも、抽象的な内容の紙芝居も楽しんでもらえますが、この年齢であれば物語を伝えるのも捨てがたいこと。日本の民話はやっぱりいいです。世界の民話もそうですが、やはり語り継がれてきたものには深い味わいがあります。説明しすぎていないものを選ぶとよりいいですね。
実はつい先日も、演劇や教育関係者向けの紙芝居ワークショップをしたところです。スペイン語でいうと、”Menos es más(メノス・エス・マス)”。シンプルであることが一番という意味です。でも実際、シンプルで無駄のないものを作るというのは、すごく難しいんですよね。つい、いろいろ付けたくなっちゃう、複雑化しちゃう。結果、つまらなくなる。人生そのものと同じですね!
横尾さん:ありがとうございました!!!
山形県出身。御茶ノ水女子大学大学院在学時に、青年海外協力隊員としてメキシコに派遣。2010年にNPO「手をつなぐメキシコと日本」を設立。現在は舞踏家、紙芝居演者として日本とメキシコ他、中南米各地で活躍するほか、麿赤兒氏および大駱駝艦、そして振付家・ダンサー近藤良平氏率いるコンドルズのメキシコ公演のツアーコーディネートなどを行う。