中間反抗期はだいたい5歳~小学校低学年、ギャングエイジは小学校中学年(3,4年生)に訪れます。素直に言うことを聞かなくなり、今までできていたことができなくなる(しなくなる)こともあるので、ストレスや不安を感じる親御さんも多いでしょう。
この2つの反抗期(中間反抗期がほとんどない子もいます。)は自立心が育ち、価値観が確立する成長過程。
「ああ、順調に育っているな。」と安心してください。
特にギャングエイジは、友達との仲間意識を強く持つようになり、大人に対して反抗的になりがち。お子さまによっては、親よりも友達の意見を優先するようになり、親の注意を素直に聞かなくなってきます。
この2つの反抗期は家庭学習のペースが乱れやすい時期でもあります。
幼児期から家庭学習習慣をつけてきたお子さまでも、ママパパに「勉強させられている」状態に反発したり、友達の家庭と比べて「○○ちゃん家では、ドリルとかやらされてない!」などと言い出したりすることも。
ギャングエイジとは?中間反抗期の親の対応:情緒と脳を育む接し方
未来の学力を左右する「中間反抗期とギャングエイジの家庭学習」
中間反抗期は、家庭学習習慣の継続を「子どもの意思を尊重しながら」行います。この時期は、まだ親の影響力が大きく、頭ごなしに命令せずに、話し合うことで納得することが多いです。
学校の宿題は、時間がかかるものも多く、家庭学習を入れると、1時間以上かかることもあるでしょう。入学直後は精神的、肉体的に疲労を感じるかもしれませんが、家庭学習の量を調整して、10分でも良いので宿題以外に勉強する時間を作ります。
ギャングエイジは「学力格差が広がる時期」でもあります。3年生から算数は「距離と道のり」、「分数・小数」などを学びはじめ、難易度がアップします。4年生社会では都道府県名と各地の特徴などを覚えなくてはなりません。低学年よりも思考力・暗記力・自主性が求められるようになります。
勉強内容が難しくなってくるギャングエイジは、親の指示、命令でコントロールが難しいです。むしろ勉強を強いれば強いるほど、勉強が嫌いになってしまう可能性が高いです。
勉強を「親がやらせる」のではなく、「自分から取り組む」ように親が誘導し、学習意欲を伸ばしましょう。
勉強嫌いにさせない親の接し方
学校の宿題、塾の宿題、市販のドリル、通信教育・・・
毎日学習する中で、やる気のない日、スムーズに進まない日は必ずあるものです。
幼児期までであれば、ママパパがなだめたり、注意(命令口調で)したりすれば、素直に勉強を始めたことでしょう。
しかし中間反抗期、ギャングエイジはそうはいきません。親の一方的な命令、指示に「抑えつけられている」と感じると、従うことに強く抵抗します。
また「勉強(宿題)しなさい!」と言う時の、親の顔は大抵不機嫌です。命令口調&負の表情で勉強の話を、繰り返し子どもにふることは、「勉強=嫌なもの、面倒なもの」という負のイメージを抱かせます。幼児期から、勉強を含め、生活面でのやるべきことをやるように伝える際は、表情と口調に気をつけたいですね。
中間反抗期以降の勉強について、気になる点がある時は、以下の点を注意して伝えると、勉強に負のイメージを持たせません。
1.「なぜやりたくないか?」をヒアリングする。責めるのではなく、意見を聞き出す感じで。 笑顔、穏やかな口調で子どもの言い分を聞きます。 |
2.答えない、あるいは答えたくないと言われた場合は、励まし、褒めながらいつもより少し少ない勉強量を提示してみます。 |
例:「この間、算数のひき算のテストで繰り下がりを間違えて悔しがっていたね。もう少し練習したら、次はもっと簡単に解けるよ!今日は1ページだけやってみない?」 また、目の前の勉強量に圧倒されているようであれば、「できるところまでOK」と伝えて、精神的負担を軽くするのも良いでしょう。 例:「今回の塾の宿題は多いね。どうしても無理なようなら、先生に相談してみるから、できるところまで一緒にやろうか。どのページまでなら頑張れそう?」 |
勉強嫌いにさせないことが自己肯定感も育てる
東京大学社会科学研究所と株式会社ベネッセコーポレーションの共同研究プロジェクト「子どもの生活と学びに関する親子調査 2017」によると、勉強の成果や将来の目標が、子どもの自己肯定感に大きく影響することがわかりました。
小学1年生から高校3年生、約2万1千組の親子を対象に、2015年~2017年にかけて、日常生活、学校生活、人間関係など複数の調査を実施。そこからわかったことのひとつが、
「2015年よりも学校の成績が上がった子、勉強が好きになった子は、自己肯定感も高まる傾向がある。」でした。
学校の成績の良し悪しは子どもの自尊感情を左右するもの。
家庭学習の積み上げが、学校の成績につながります。「毎日の勉強が生活の一部になる=歯磨きや洗顔のようにやらないと気持ちの悪いもの」となるようにしたいですね。中間反抗期以降は、勉強量・レベルを子どもに選ばせ、(親から見て物足りなくても)それを毎日続けると定着しやすいです。
学習内容に自分の意思で選んだものがあることで、学習意欲が育ちます。
ベストセラー育児本『科学的にイライラ怒りを手放す 神子育て』(星渉著,朝日新聞出版,2021)の「ドーパミンで子どもの習慣化を極める」の節で、以下のような一文があります。
※ドーパミンは神経伝達物質で、分泌されると幸福感を感じ、意欲が高まります。
もっともドーパミンが出るのは、本人が決めた目標を達成したときです。とくに幼児期が終わり、だんだん成長してくると、ママの褒め言葉よりこちらのほうが強力になってきます。
星渉著『科学的にイライラ怒りを手放す 神子育て』(星渉著,朝日新聞出版,P155,2021)
子どもが自分で決めた目標を達成することで、脳内でドーパミンが分泌され、自分で物事を決め、取り組むことが習慣化されるのですね。
中間反抗期の学習環境は「子ども意思を加えて」
中間反抗期は口ごたえをしたり、揚げ足をとったりするものの、まだまだママパパの意見に絶対的な信頼を置いています。
親はそれに乗じて、
「宿題をやるまでゲームはさせないよ!」
「塾の小テストで80点以下だったから、今週はプリント1枚プラスね!」
などと、命令してしまいがちです。
その時はしぶしぶ、従って取り組んだとしても「ママパパから言われてやらされた感」が残ります。
前章で触れましたが、「自分の意思で決めたことに取り組み、達成する」ことで、ドーパミンが分泌されて、学習意欲が育っていきます。
・塾の宿題に取り組むスケジュール
・家庭学習で取り組むドリルのレベル選択
などを子どもに選ばせ、「自分で決めた感」を感じさせましょう。
宿題で疲れてしまう場合は家庭学習をセーブ
漢字の書き取り、式からすべて書く計算ドリル、テーマを自分で決めてレポートにまとめる自主学習、英語のアルファベットの反復書き取り練習・・・小学校の宿題は、書く量が多く疲れます。宿題だけで1時間以上かかってしまい、家庭学習に取り組む前に疲れ切ってしまうこともあるでしょう。
未就学児であっても、幼児教室や学習塾の宿題があれば、家庭学習にたどり着く前に疲れてしまうでしょう。
低学年までの子どもの集中力は10分も続けば良い方です。宿題をやり切るだけでも頑張っています。
市販のドリル、塾の宿題のプリント、タブレット教材などの家庭学習に、入る前に十分に休憩を取りましょう。
家庭学習の量が多いようであれば、1日量を減らします。学習レベルの調整も同時にします。その際も、お子さまに選択させると良いですね。
「計算プリント5枚は大変かな?何枚ならできそう?」
「今、4教科を発展コースで選んでいるけど、算数だけ標準コースにしても良いんだよ。」
などと、子どもの意見を聞き出してあげます。
少し余裕を持った勉強量、レベルで達成感を繰り返し味わうことで、勉強することで自己肯定感が高まるように。
ギャングエイジの学習環境「時にはテコ入れもあり」
小学校3年くらいから、勉強に関する親の注意をまったく聞かなくなる子もいます。
自我が強くなり、親から口出しされることに苛立ちを感じることもあるでしょう。
同世代の意見や雰囲気が最優先になり、親からの評価よりも、友達からの評価が気になります。
ママパパから褒められることよりも、クラスや自分の所属するグループ内で「頭が良い!」と認められることの方が、勉強のモチベーションとなるでしょう。
所属する友達グループの価値観に染まりやすいギャングエイジ。グループの価値観が「勉強を真面目にするのはイケていない」なのであれば、勉強を軽んじるようになりますし、逆に「成績の悪いことがイケていない」価値観のグループであれば、勉強に重きを置くでしょう。
学習内容の難易度が高くなる中学年以降は、毎日の家庭学習の積み重ねが成績に大きく影響します。
気の合う仲間がいる、所属するグループがあることは情緒の発達、円滑な学校生活のために大切なことですが、「友達つきあい」があまりにも勉強に悪影響を及ぼす場合は注意が必要です。学校以外の友達つきあいの幅を広げるテコ入れをしても良いでしょう。テコ入れと言っても、今の友達関係に親が干渉するわけでありません。学校の友人グループとは違う価値観を持つ友達を作るサポートをするだけで、子どもの視野が広がり、勉強に目が向くようになります。
塾、習い事で子どもの視野を広げる
例えば、現在お子さまが「勉強に重きを置かないグループ」に所属していて、親が家庭学習を促してもまったくやる気がないとします。
学校が終わるとすぐに友達と遊びに出かけてしまい、帰宅後も友達とオンラインゲームをしている、という状態ですと、親は厳しく叱って、友達とのつきあいやゲームを制限しがちです。
しかし、この友達つきあいを否定することは余計に、子どもの反感を買います。
力づくで何とか勉強させるよりも、「勉強ができる(成績が良いこと)がイケてる価値観」の友達ができる環境を提供しましょう。おすすめは「塾や勉強系の習い事(英会話、プログラミングなど)を新たに始める」ことです。
塾=勉強漬けでかわいそうとは限りません。中学受験専門塾以外にも、補習塾、算数塾など「興味や学力に合わせた塾」もあるので、そう言った場所に通うのも良いでしょう。
「落ち着いて自分のペースで勉強したい」、
「他の子と競いながら、学年を超えて学びたい」
お子さまが求める学習環境に身を置くことで、学力も伸びやすいです。
受験を見据えて攻めの勉強をしている子、学年を超えて算数を究めている子、英語のスピーチコンテスト入賞を目指す子・・・学ぶことに意欲的な仲間が多い環境に身を置き、そこで仲の良い子ができることで、自分から勉強するようになることが多いです。
やるべきことは「気分に左右されず」やり遂げる習慣
計算練習、漢字書き取りは、算数・国語に限らず、理科・社会の基礎学力も養う学習です。特に計算練習は、中学受験を考えているなら毎日取り組むことをおすすめします。算数だけではなく、理科(気体の体積など)、社会(人口密度など)でも高い計算力が求められます。
計算と漢字は、学校の宿題でも出ますし、家庭学習でも取り組ませることが多いです。単調でおもしろくないと感じる子も多いでしょう。しかし、こういったやりたくない学習も、決められた時間に決められた量を必ずやると決める(気分は関係なし)ことで、非認知能力を構成する4つの要素(度胸=Guts、粘り強さ=Resilience、自発性=Initiative、執念=Tenacity)が育ちます。
家庭学習を効率よく終わらせるコツ
楽しく思考力を伸ばす幼児教室・学習塾「花まる学習会」代表、高濱正伸著『なぞとき×算数脳』中央公論新社,2022の中で、「やるべきことは片付ける習慣をつける」コツが紹介されていました。
学校のテストに出るような問題を解くだけの勉強は子どもにとって、基本的におもしろくありません。おもしろくないことが前提ですから、歯磨きなどと同じ「必要でやるべきこと」として、時間制限を設けて取り組ませるといいでしょう。
毎日決まった時間に漢字練習、計算練習、文章題をやる、と習慣にするのです。だらだらやるのではなく、「十五分間は文章題をやろう」「十五分経ったから、終了!」と時間を区切る。
スタートの時間とやるべき課題だけを決めて、全部終わったら切り上げてもいい、とすると、よりやる気が出るでしょう。
注意してほしいのは、早く終わったからといって、追加の課題を与えないことです。
引用:高濱正伸著『なぞとき×算数脳』中央公論新社,2022,P111-112
・決められた課題が終わったら、勉強を切り上げても良いことにする。早く終わったからと言って、追加で課題を与えない。
勉強する場所を限定しなくてもOK
家庭学習の習慣づけのコツとして、「毎日決まった時間、決まった場所で取り組む」というものがありますが、ある程度習慣がついてきたお子さまであれば、時間や場所はお子さまに任せても良いでしょう。
特にギャングエイジ以降は家族の側で勉強するよりも、1人で集中したくなります。また塾や習い事、友達つきあいとの兼ね合いで、毎日同じ時間に学習するのは難しいかもしれません。
中学受験専門塾・伸学会代表 菊池洋匡著『小学生の子の成績に最短で直結する勉強法』の第2章「脳のつくりに合わせて効率的に学習させよう!」において、勉強場所を変えるとことで点数が50%アップする事例を紹介しています。
場所は「地下室」と「見晴らしの良い部屋」を用意し、生徒を3つのグループに分けて勉強させた後、テストを受けさせます。
グループは以下の通り。
グループ1「2回とも地下室で勉強」
グループ2「1回ずつ部屋を変えて勉強」
グループ3「2回とも見晴らしの良い部屋」
一番良い成績だったのはグループ2「1回ずつ部屋を変えて勉強」でした。勉強した内容を思い出せた数は「同じ部屋で勉強」した場合の1.5倍でした!
話しかけられたら目を合わせて答えよう
中間反抗期以降は、勉強中に監視する、口出しすることは控えましょう。
親御さんがノートの書き方、漢字の書き順、計算違いなどに気づいたら、学習が終わってから伝えます。
勉強中は、子どもから質問あれば答えますが、基本は静かに見守っていればOK。
成長とともに、親に勉強のことで頼ることは減ってきます。反抗期中に珍しく質問してきたら、作業中でも手を止めて、目を合わせて答えてあげましょう。アイコンタクトをすることで信頼感が高まり、お子さまに安心感を与えます。