読書と読み聞かせは、毎日続けられる手軽な知育習慣です。絵本を1人で絵本を読む、親に読み聞かせてもらうことでなど、たくさんの能力が育まれます。
これらの能力を高めることは、臨機応変に物事に対応できる「地頭の良さ」に直結します。
脳の発達は3歳までに80%、6歳までに90%、12歳でほぼ100%完成するとされています。
就学前の幼児期は特に「読み聞かせと読書」の知育効果が高いです。できるだけたくさんの絵本に触れさせてあげたいですね。(絵の少ない活字主体の”本”を楽しめるお子さまなら絵本以外のものでもOK。)
【体験談】読み聞かせで育む「国語力」がすべての勉強の基本である理由
幼児期に絵本を読むことで「知的好奇心」が高められる
乗り物、動物、昔話、数字や文字を学ぶ勉強系・・・ジャンルに関わらず絵本をたくさん読むことは知的好奇心を高めます。子どもが小さいうちは幅広いジャンルの絵本をたくさん読み聞かせると良いでしょう。
同じ絵本を繰り返し読んでも問題ありません。お子さまが興味のある、楽しいと感じられる絵本であればOK。
「知りたい!勉強したい!」気持ちの強い「勉強好きな子」に育てるなら、絵本で知的好奇心を伸ばすのが近道です。
やっぱり与えたい!学習に役立つ「学習絵本」
子どもが手に取りやすい絵本は、やはりぱっと見が派手なもの。表紙がカラフルなもの、アニメ、キャラクターものの絵本の人気は高いです。そういった子どもが興味を持つような絵本は、親は敬遠しがちですが「読書習慣をつける」きっかけとしてはおすすめ。
そうは言っても将来の勉強に役立つような「学習絵本」も読んで欲しいのが親心ではないでしょうか。
数字、ひらがな、科学、生物、物理、一般常識などの知識が身につく絵本はママパパからは人気が高いですが、子どもが自ら手に取るようなものは少ないかもしれません。勉強感が出ているタイトルだったり、地味目な装丁だったりすることが少なくありません。
今回ご紹介する12冊は、子どもが読みたくなる学習絵本です。楽しく読むだけで、将来の教科学習に役立つ知識が身につきます。
国語・算数・理科・社会の教科別に、人気のある学習絵本をご紹介いたします。
子どもがハマる絵柄や言葉のひびき、テーマで、繰り返し読みたくなってしまうものばかりです。
【国語】
語彙力、読解力、文章力を伸ばすことが国語の成績アップにつながります。幼児期から絵本を読む機会を増やすことで、語彙力、読解力、文章力はもちろん論理的思考力、想像力、表現力も育まれます。
ご紹介するのは特に語彙力、読解力、表現力が伸ばせる3冊。
音のひびきの面白さが感じられる音読がおすすめです。声に出すことでひらがな、漢字も自然に覚えられますよ。
あいうえおの本
タイトル:あいうえおの本
著者:安野 光雅
出版社:福音館書店
最も美しい50冊の本賞(アメリカ)、ボローニャ国際児童図書展グラフィック大賞(イタリア)、国際アンデルセン賞(国際児童図書評議会)など数多くの受賞歴がある、安野光雅氏のベストセラー絵本です。
50音を形と音でマスター。各文字で始まる単語も覚えられるので語彙力もアップ!
ページを開くと、左が木で作ったひらがな、右側がその文字ではじまる言葉のイラストになっています。各ページを囲むイラストを良く見ると、「そのページのひらがなからはじまる名称」の動物・植物・道具などが描かれています。全部見つけられるか親子で競争しても楽しいですね。
木のぬくもり、虫の躍動感、植物の瑞々しさ・・・安野氏ならではの繊細で生き生きとしたイラストは、思わず触れてみたくなります。
「あ。あり。あんぱん。あしか。ありくい。あざみ!」ぜひ声に出して読んで、言葉のひびきを楽しみましょう。「50音+モノの形と名称」が短期間で習得できます。
一日十分 おばけ 漢字えほん
タイトル:一日十分 おばけ 漢字えほん
著者名:あきやま かぜさぶろう
出版社名:講談社
1万人以上の子どもに絵画指導経験がある、あきやま氏。受験の絵画指導、幼稚園や保育園の絵画教室の講師として、全国の子どもに「おえかきのコツ」を伝授してきました。幼児にもわかる簡潔な解説と、体験型の指導に定評があります。この「一日十分 おばけ 漢字えほん」は、あきやまメソッドを用いることで、能動的に漢字が覚えられます。
小学1年生で習う漢字80字をおばけと一緒に楽しく覚える絵本。可愛いおばけがさまざまなものに変身して、字形をイメージと連動して覚えさせてくれます。書き順、漢字の成り立ち、音読み訓読み、使い方までしっかり解説。
視覚、触覚、聴覚を使う3ステップで1文字1文字をしっかり記憶するので、時間が経っても忘れにくいです。
2.イラストに合わせた動きで書き順をなぞる。
3.おばけが変身したものを音読して音読み、訓読みを覚える。
頭がよくなる! 寝るまえ1分おんどく366日
タイトル:頭がよくなる! 寝るまえ1分おんどく366日
著者:加藤俊徳 (監修)
出版社:西東社
脳科学者、加藤俊徳氏監修の「脳科学音読メソッド」を取り入れた1冊。
「吾輩は猫である」、「羅生門」、「走れメロス」、「竹取物語」、「源氏物語」、「枕草子」・・・名作、古典を音読することで読む力、語彙力、文法力が育まれます。詩、短歌、俳句、名言などにも触れることで、日本の文化や風習を学べます。
「たのしく」、「心をこめて」のように、1作品ごとに目標があるで学習意欲が高められます。
「おたのしみ」欄には想像力を伸ばす「作品に関する質問」が書かれています。親子で一緒に答えを考えてみましょう。
読み進めるごとに、字が小さくなり字数も増えていき、難易度もアップ。
多くの小学校で出される宿題、「音読」の対策にもおすすめです。
【算数】
小学校の算数は数の概念を理解することから始まります。
数の概念を理解するということは、「数の集合体、順序」を理解しているということです。
紹介する絵本は声に出して、指で数えて読むことで、数の概念が簡単に理解できます。図形感覚、空間認識力、分数について学べる作品は、入園・入学準備にいかがでしょうか?
かずあそびウラパン・オコサ
タイトル:かずあそびウラパン・オコサ
著者名:谷川 晃一
出版社:童心社
2歳くらいの数に興味を持ち始めたお子さまから、大人まで楽しめる「かずあそび」絵本。
「1がウラパン、2がオコサ、3はオコサ・ウラパン」。1と2だけを使った数遊びで数量感覚、数的概念を習得します。
「さるが 1ぴきで ウラパン」
「バナナが 2ほんで オコサだよ。」
2進法の不思議な世界で数を数えて遊びましょう。
「オコサ・オコサ・ウラパン!(=5)」声に出すと呪文のようで、繰り返し叫びたくなるユーモラスな響きです。
「クッキーがオコサ・オコサあるよ。」
「うちはねこをウラパン、いぬをオコサ飼っているよ。」などと、日常会話にウラパン・オコサを取り入れて遊んでみましょう。数量感覚を養えます。
かずとすうじの でんしゃ じてん
タイトル:かずとすうじの でんしゃ じてん
著者名: くにすえ たくし (イラスト)、はるく ゆう (イラスト)、 さかい そういちろう (その他)
出版社:視覚デザイン研究所
数の数え方、数の集合体、数の序列、モノの単位など「数と数字に関わる知識」が幅広く習得できる絵本です。
数字の形の線路を指でたどって書き順を覚える、電車の車両や花や乗り物の数を数える、数字の意味や単位を「しゃりょうきち」や「えきのばいてん」で学ぶ・・・触れて、声を出すことで数字の形と意味を学んでいきます。
数の概念の理解が深まるクイズがあり、親子、兄弟で一緒に楽しめる構成となっています。
詳細に描かれた電車の車体や街の様子をじっくり観察すると「数えたくなるモノ」がたくさんあります。窓の数、ドアの数、貨物の数、遊んでいる子どもたちの数、踏切の数・・・たくさん数えて数字マスターを目指しましょう。
さわって学べる算数図鑑
タイトル:さわって学べる算数図鑑
著者名:朝倉 仁(監修)
出版社:学研プラス
数的感覚、数量感覚、図形感覚、空間認識力、計算力を「触って、見る」ことで体得する体感型算数本です。算数が苦手になってしまった小学生にもおすすめ。
動かす、開ける、組み立てるなど、手を動かすことで、四則計算、分数、図形の種類、立体の展開図などの小学校の学習内容がスムーズに理解でききます。頭の中だけで考えるのではなく、自分の手で触れて確認するので理解度が高まります。
手遊びとクイズを繰り返すことで「なぜこの答えになるのか?」を論理的に考えられるようになります。
学んだことを長期記憶として留めるには「自分で体験して学ぶこと」です。「さわって学べる算数図鑑 」で算数の基礎学力をつけておくことで、小学校以降の算数が楽しく興味深いものとなるでしょう。
【理科】
科学、自然科学を学べる絵本で、観察眼と論理的思考力を伸ばしましょう。
植物、動物、天体など身近な自然についての疑問を解決することで、知的好奇心がさらに高まります。
ママパパも一緒に読むことで、新たな発見があるかもしれません。あらゆる自然現象に興味を持ち、理由を知りたがる幼児期こそ「理科の知識」が身につきやすい!
理科に関する学習絵本で、お子さまのワクワクドキドキを学習意欲につなげましょう。
7歳までに知っておきたい科学えほん
タイトル:7歳までに知っておきたい科学えほん
著者名:ケイティ・デインズ (著)、ステファノ・トネッティ (イラスト)、 岡田好惠 (翻訳)
出版社:学研プラス
生物、化学、物理、地学の知識を幼児も分かりやすく解説。子どもが日常生活で感じる「なぜ?どうして?」に、可愛いイラストで科学的に答えていきます。
植物や動物、人の体、光や音、電気、天気、宇宙などを「科学虫」たちが具体例をあげながらレクチャー。提案や質問も科学虫たちがすることで、押しつけがましさが感じられません。子どもが「考えてみよう!やってみよう!」と思える文体で知的好奇心を引き出します。
月と地球、植物の発芽などを学べる簡単な実験も掲載。身近な道具で取り組める実験なので、小さなお子さまも科学者気分が味わえます。
地球環境の未来、多様性、持続可能な開発目標SDGsについても紹介。環境、貧困、資源問題を身近に捉え、考えることで視野を広げます。
しずくのぼうけん
タイトル:しずくのぼうけん
著者名:マリア・テルリコフスカ(著)、ボフダン・ブテンコ (イラスト)、うちだ りさこ (翻訳)
出版社:福音館書店
しずくの冒険を通して「氷・水・水蒸気」の水の三態を理解する科学絵本。小学4年理科で習う単元「すがたを変える水」を、幼児にもわかりやすく解説しています。
バケツから飛び出した1滴のしずくの大冒険。
自分の汚れが気になるしずくはクリーニング屋さんを訪れます。そこでドライクリーニングされそうになり、慌てて逃げ出します。次に訪れた病院では煮沸消毒されそうになり逃げ出します。
逃げ出したところを太陽に照らされて水蒸気となってしまいます。空に昇ったしずくは雲となり雨として地上に帰ってくるのでした。
その後も岩の間で氷になって岩を砕いたり、川になったり、水道水になったり・・・気温や場所が変わることで「すがた」を変えていきます。
1969年出版のロングセラー絵本です。絵柄がおしゃれで可愛い!文体もレトロでユーモラス。しずくちゃんになりきって読み聞かせすることで、子どもが大喜びしてくれそうです。
月のふしぎ
タイトル:月のふしぎ
著者名:大沼崇 (監修)、momo編集部 (編集)、石垣渉 (イラスト)
出版社:マイルスタッフ(インプレス)
月の満ち欠け、潮の満ち引きについて、月の形と名称、ウミガメの産卵との関係・・・子どもが月に感じる疑問にすべて答える科学絵本です。
天体の専門家が見ても納得できる内容でありながら、未就学児にも理解できる具体的で簡潔な解説が特徴。
ボールを使った考察で月の満ち欠けを自分で再現したり、絵本と実際の月を見比べたりして、体験学習しながら月を学べます。
写実的でありながら、温かみのある絵柄は大人も子どもも惹きつける魅力があります。文字が読めない子でも楽しみながら、月の知識が得られます。
【社会】
小学校で暗記する都道府県名、世界地図を遊びながら覚えられる絵本2冊と、選挙について学ぶ絵本1冊のご紹介です。
色と形で日本地図、世界地図を楽しく丸覚えできちゃいます。県名、国名と合わせて、地域の特色や特産物が楽しいイラストつきで解説されています。解説を読みイメージをすることで、名称を丸暗記するよりも、記憶に残りやすくなります。
選挙のしくみは、小学6年生で学びますが、絵本で一足早く予習はしてみてはいかがでしょう。投票、民主主義、選挙運動・・・選挙や国会に興味を持つきっかけになるかもしれません。
1日10分でちずをおぼえる絵本
タイトル:1日10分でちずをおぼえる絵本
著者名:あきやま かぜさぶろう
出版社:白泉社
「児童絵画指導のカリスマ」とも言われる画家であり作家でもある、あきやま かぜさぶろう氏が出がけた大ヒット学習絵本。
指でなぞって、声に出して読むうちに、47都道府県の形、場所、名前をまとめて覚えられます。
都道府県をさまざまな形になぞらえることで、記憶力がアップ!カラフルでユーモラスなイラストは、インパクト大。一度見たら形状が目に焼き付きます。
「えいのかたちはほっかいどう」
「えびのかたちはあおもりけん」
「らいおんのかたちはおかやまけん」
繰り返し声に出しながら、イラストを見ることで都道府県を形だけでも認識できるようになります。
気候や特産物、名所についても、すべてひらがなで解説。各都道府県の「推しポイント」が一目でわかるようになっているので、大人も一緒に楽しめます。
せかいちず絵本
タイトル:せかいちず絵本
著者名:とだ こうしろう
出版社:戸田デザイン研究室
“わかりやすく、おもしろく、シンプルで美しい”を追求した戸田デザイン研究室の地図絵本です。
カラフルで親しみやすいイラストと簡潔な文章で、国の名前や形状だけではなく、風習や文化、特産品、資源などについても覚えられます。
世界の川の長さ比べ、環境問題、動物、食生活など子どもの興味を広げる情報が多く集められています。
公私教育機関でも使われることが多いベストセラー作品。
楽しい情報だけではなく、問題点にも触れていて、多様性、他者との共存、環境保全などについても考えさせる内容です。子どもの視野を広げ、グローバルな視点を育むきっかけになる1冊。
どうぶつせんきょ
タイトル:どうぶつせんきょ
著者名:アンドレ・ホドリゲス (著)、 ラリッサ・ヒベイロ (著)、パウラ・デスグアウド (著)、ペドロ・マルクン (著)、木下 眞穂 (翻訳)、 林 大介 (翻訳)
出版社:ほるぷ出版
森の王ライオンの独裁政治に不満を持った動物たちによる「せんきょ」の物語です。
フクロウの助言で新しいリーダーを選出するための選挙が行われます。
投票は1匹につき1票、投票用紙は人に見せてはいけない、対立候補を食べてはいけない・・・公平に選挙が行われるようにルールが決められます。
ライオン、サル、ヘビ、ナマケモノが立候補。実際の選挙活動のように動物たちは選挙活動や討論会をして支持者を集めます。
子どもがあまり関心を持たない「選挙」をテーマにしていますが、カラフルで表情豊かな動物たちに語らせることで、子どもの関心を引き、当事者として考えさせるストーリーとなっています。
「みんなが納得する結論を導くには、どうしたら良いのか?」
「リーダーはどうあるべきか?」
親子で話し合うことで、政治や世界情勢に興味が持てるきっかけになるかもしれません。
学習系絵本に興味がない場合
親は絵本を読むことで「賢くなって欲しい」「知識を身につけて欲しい」などと、知育効果を期待しがちです。そのため「数字、文字が学べる絵本」、「天体に関する図鑑」などを、本人の興味と関係なく与えてしまう親御さんも少なくありません。
賢さ、地頭の良さを伸ばすには、まずは子どもを読書好きにさせましょう。
「読書が楽しい」と実感させるために、絵本は子どもに選ばせます。自分が選んだ絵本には愛着もわくものです。
まずはアニメ、キャラクター系の絵本でも良いので「子どもが読みたいもの」を選ばせてあげます。
戦隊ものの絵本から、乗り物の仕組みへ興味が広がることもありますし、魔法少女アニメ絵本から天体に興味が湧くこともあります。「勉強系の絵本」に興味が薄いようでしたら、間口を広げてさまざまジャンルの絵本に触れさせてみましょう。
絵本を音読して知育効果アップ!
はじめはママパパの読み聞かせで、慣れてきたら1人読みに挑戦。ひらがなが読めるようになってきたら、ママパパに読み聞かせしてもらいましょう。人に聞かせることでプレゼンテーション能力、表現力が養われます。
また音読は脳を活性化し、集中力を高める効果があります。多くの小学校で音読が宿題に出されるので、幼児期のうちに音読に慣れておくと良いでしょう。
親はできるだけ聞くことに集中してあげましょう。聞いている人がいると意識することで学習効果と集中力が高まります。
たどたどしくても、間違えても「最後まで聞いて」褒めてあげましょう。
絵本を音読することで伸びる力
音読をしている時、脳の前頭前野が活発に活動しています。前頭前野は判断力・記憶力・感情の抑制などを司る、脳の司令塔となる部位。継続的に音読をすることは効率の良い脳トレとなります。
また文章を目で追いながら、発音することで言葉の意味や文章の構成、文脈を意識するようになります。語彙力、読解力、文章力が育まれることで、国語だけではなく算数・理科・社会・英語の学習にも良い影響が出るはずです。
「知りたい」を増やすことが学習意欲につながる
「なぜ?どうして?」と疑問だらけで、毎日が質問攻め・・・時にはママパパを悩ませることもある幼児期の好奇心。子どもが新しい知識、情報を常に求めるのは脳が成長している証です。特に「楽しい、興味がある」事柄に関しては、集中力も記憶量もアップします。読書や実体験を楽しむことで、「国語・算数・理科・社会」の知識は自然と身についていきます。
子どもの「知りたい!」に応えながら、お勉強感を感じさせずに学べる学習絵本。「自分で調べる、考える」自立した学習姿勢が確立されます。
好きなこと、興味のあることに関する学習絵本で、楽しみながら知的好奇心を育みましょう。