「うちの子、園でどうしてるんだろう?」。知っているようで知らない保育園での子どもの顔を、保育士目線でお伝えするコラム。今回は、園で子どもたちがおててを洗います。さてさて、順番守れるかな~?パパママの知らない、お家では見られない外の顔をお届けします!
スゴい!うちの子、順番守って並んでる!
「さすが先生たちですね~!」と褒められて、「そうですね、ちゃんと並べるようになってきましたよー。おりこうですよー」と、さらりと返していたのですが、まあそんな自然と並べるようになるわけはなく……(笑)。
それまでの道のりをお伝えする機会が、意外とないなあと思ったので、今回はあくまで私の経験ですが、並んで順番を待てるようになった、子どもたちの紆余曲折をお届けします。
「おててを洗いにいらっしゃ~い!」と声をかけたなら…!?
何せ、目の前には蛇口からは冷たくて気持ちよくて、自在に形を変える不思議なお水が、とめどなく流れております。誰もが、早くさわりたくてしょうがない!
名前を読んで並ばせてあげても、わずかな時間で気が急いて、押し合いへし合い……。さらに押し合いへし合いが、おしくら饅頭みたいで面白くなってきてしまった人たちも出てきて、現場は大変な惨状になります。
己の欲求に突き進む子どもたちの熱量は、スゴイ!その勢いは、思わず大人も流されそう。
でも、誤解のないように!彼ら彼女らは、人を押しのけたいとかそういう意地悪な気持ちがあるわけではなく、ただ、ただ蛇口にたどり着き、お水にさわりたいー。
しかし、悲しいかな「順番」がまだわからないのです。
並べるまでの軌跡……
たとえ、まだ言葉がわからなくてもまず「順番だよ」と言葉にします。それから並ばなくてもよい、待機場所を作り、そこで子どもたちは遊びながら待ち、保育者が一人ずつ呼んで手を洗います。これがだいたい第一段階。
その後は、並ぶ場所を決めてあげて座って待つ。
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立って待つといったふうに段階を踏んで、毎日の保育の中で、保育者は子どもたちに伝えていきます。
子どもたちは一度ではわからないし、みんながみんな同じ言葉ややり方で伝わるとは限りません。
ですから、「その子に伝わる」方法がわかるまで、手を変え品を変え、言葉を砕いて、態度で見せて関わり合っていきます。
違うアプローチの仕方を考えよう
言ってもわからないなぁ!!(怒)みたいなときは、ぜひ一度アプローチを変えてみてください。
一度言ったことがわからないからって、「ダメな子!」と言うのは、ナンセンス。だって、まだこの世に生まれてきて僅かの人たちです。言葉だって、経験だって圧倒的に足りません。判断材料も少なく、気持ちの整理の仕方もわかりません。
伝わらないのは、こちらが伝わらない伝え方をしてるってことが、大きな要因の1つです。時間がかかっても仕方のないことなので、急がず、慌てず。「きーっ」となってしまったときには、一呼吸置いて、違う伝え方でチャレンジが吉!ですよ。
順番、順番!!
「ブレずに」は、ものすごく難しいんですけどね(泣笑)
日々の忙しさにかまけて、当日ルールを発動させちゃうのですが、これが続くとよろしくない。子どもが迷ってしまいます。
当日ルールを発動させるときは、子どもが難しくて理解できなくても、その理由を言うことが大切かなあと思っています。
そうすると、ちょっとお兄さんお姉さんになったとき「今日は○○だからいいんだよね(このパターンでやるんだよね)」と、自分で理由を考えて融通を利かせることができたり、困っているお友だちに「先にいいよ」と、順番を譲ったりすることができるようになるんです。
そういう現場に立ち会えたときは、ちょっと感動ものです。グッと何かこみ上げてくるものがあります。
短時間で決着をつけようとせずに、何かの働きかけがどこかでその子に引っ掛かることを信じて、伝える努力をしていきたいものです。私もお世辞にも、辛抱強いとはいえないので……。
そういうわけで、保育者は己にも言い聞かせるように、日々「順番、順番」と呪文のように唱えて、子どもの手洗い場を仕切っているのでした。