みなさんは「灯篭流し」をご存知ですか?もともとは「盆灯ろう」と「精霊流し」が合わさった風習だとされています。もうすぐご先祖様の魂がわが家に戻るお盆をむかえます。日本の新しい伝統行事「灯篭流し」について一緒に考えてみましょう。
「送り火」をおこなう家庭が減少しています
お盆の最終日に、玄関前で「おがら」という皮をはいだ麻の茎を「炮烙」という素焼きの器に入れて燃やすのが正式な送り火。でも最近はマンション暮らしの家庭が増えているので、火を使うことができません。
そこで提灯で代用するのですが、その場合もお墓まで提灯をもって移動するのが正式な送り火なのです。このように正式な送り火はけっこう手間がかかるため、実践している家庭が年々少なくなっています。
「盆灯ろう」は送り火の簡易版!?
本来ならお墓まで送り火を運ぶところ、その道中を省いて、直接お墓に送り火をともすことで「ご先祖様、わが家のお墓はここですよ!」とお知らせするのが「盆灯ろう」なのです。
ただし「送り火」といっても火は使わず、華やかな色紙でお墓を飾ることで代用します。
墓地全体が色とりどりに染まる光景は、本当に独特ですよね!
「精霊流し」は送り火の豪華バージョン!?
精霊船と呼ばれるさまざまな飾りつけをした船に、ご先祖様の名前などを記した紙をはり、提灯をともしながら町を練り歩きます。精霊船には亡くなった人の魂が宿り、「流し場」と呼ばれる終着点に到着すると精霊船から離れ、天界へと戻っていくのだと考えられています。
江戸時代には精霊船を実際に海や川に流していたそうですが、のちにそれは禁止され、現在では精霊舟を流し場まで送ると、その場で解体されてしまいます。このように現在の精霊流しは、「ご先祖様の魂の先導役」という意味合いに加えて、お祭り的な色彩が濃くなっているといえるでしょう。
それでも、さだまさしさんの大ヒットソングにもなったように、精霊流しは長崎の人たちにとっては大切な心のよりどころとなっています。
「灯篭流し」は死者を弔う気持ちから生まれた行事
灯篭流しの最大の特徴は、「厳密には仏教の行事ではない」ということです。盆灯ろうも精霊流しも、仏教の僧侶がはじめた伝統的な仏教行事です。それに対して灯篭流しの起源は終戦直後の広島です。
原爆で亡くなった人たちの霊を弔うために、遺族や広島市民が、市内を流れる川に灯篭を流したことがはじまりでした。
この悲しい歴史を描いた絵本『とうろうながし』も出版されています。子どもに読みきかせてあげながら、お盆の意味を親子一緒に考えてみては?
海外にもある灯篭流し!でもちょっと意味が違う?
タイでは陰暦12月の満月の夜に灯篭流しが行われます。死者の魂を弔う目的ではなく、その年の収穫を水の精霊に感謝する行事だとされています。
ベトナム中部の都市ホイアンではなんと毎日灯篭流しがあるそうです!もっとも宗教的な意味合いは薄れており、貧しい子どもたちが手作りの灯篭を観光客に売って生計を立てるために広まったという側面もあるようです。
ご先祖様の冥福を祈る……お盆の大切さを子どもたちに伝えよう!
でも、ご先祖様の魂をしっかり弔いたいという気持ちの表現である点では、3つの行事に違いはありません。いつまでも大切にしていきたい行事ですよね。