2020年11月28日 公開

子どものバイリンガル教育の失敗の3つの原因と失敗防止策

子どもが幼いころに始めたバイリンガル教育が、うまくいかないのはどうしてでしょう?バイリンガル教育が失敗する原因と失敗を防ぐ対策を紹介します。

子どもが幼いころに始めたバイリンガル教育が、うまくいかないのはどうしてでしょう?バイリンガル教育が失敗する原因と失敗を防ぐ対策を紹介します。

子どもをバイリンガルに育てたいけれども、失敗したらどうしよう……と悩んでいませんか?カナダでマルチリンガル児を育てる筆者も、息子が生まれてから今までずっと言語教育で失敗しないように気を付けてきました。その経験から、子どものバイリンガル教育の失敗の種類と失敗しないための対策を紹介します。これからバイリンガル教育を始めようと思っている方も、今、英語など子どもの外国語教育に悩んでいる方もぜひ参考にしてください。連載【翻訳家ママのバイリンガル教育】第15回です。

バイリンガル教育の失敗の種類

「バイリンガル教育の失敗」にもいくつかの種類があります。ここでは子どものバイリンガル教育で多い失敗を3種類紹介します。

失敗1:続かない

日本の家庭でのバイリンガル教育の失敗例で一番多いのは、幼いうちに英語教育を始めてみたけれども、続かなかった……ではないでしょうか?

そこで、バイリンガル教育が続かない例を以下にまとめました。
・バイリンガル教育の目標がない
・時間がない
・親が英語(子どもに身につけさせようとしている言語)を好きではない
・第二言語を使う機会がない
・期待していたよりも子どもが第二言語を使えるようにならない

子どもは新しい言葉を覚えるのが速いですが、忘れてしまうのも早いです。言語の習得には時間がかかります。とにかく継続しないとバイリンガルへの道は開けないのです。

失敗2:子どもが第二言語を嫌う

バイリンガル教育が続かないよりも大きな失敗は、子どもが第二言語を嫌ってしまうことです。これは親に押し付けられたり、恥ずかしい思いをしたりしたときに起こります。幼い時の嫌な思い出が頭に残っていると、学校で英語の授業がはじまってもやる気がでないことがあります。また、一度嫌いになってしまうと、たとえ将来、仕事などで外国語が必要になっても、学ぶのが苦痛になってしまう場合もあるでしょう。

失敗3:ダブルリミテッド

子どもが第二言語を嫌ってしまうのと同じぐらい避けたのは、ダブルリミテッドです。ダブルリミテッドとは、2つの言語がどっちつかずの状態で、精神的にもその他の知的発達にも悪影響になりかねません。子どもが自分の感情を言葉で伝えることができず、ストレスで暴れてしまうというのも、ダブルリミテッドの弊害の1つです。

次からは、ここまでに紹介した3種類の失敗をしないための対策を説明していきます。

バイリンガル教育を続けるための対策

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バイリンガル教育を続けて、子どもがニ言語を身につけるには、小さくてもいいので常に何か目的があること、その言語を使う必要があることが大切です。筆者がカナダで息子に日本語教育をしている現在の目的は、母親と密なコミュニケーションをとれることが、お互いの心の安定につながると信じているからです。英語で会話ができないわけではないですが、微妙なニュアンスまでは伝わらないのでお互いにストレスを感じます。

日本の家庭で英語教育をする場合も「将来のために」ではなく、親子でその時点での目的を持つと続けやすいです。もし、英語が苦手な方が子どもに英語を身につけさせようと考えている場合は、自分も一緒に学ぼうという気持ちを持てるかが続けられるかどうかのポイントになります。「自分が苦手だったから、子どもには英語を身につけてほしい」というプレッシャーを与えるのは避けましょう。

さらに、言語は一朝一夕で身につくわけではないことを、いつも心にとめておいてください。理想が高すぎると、子どもがなかなか言葉を身につけないことが親のストレスになって、バイリンガル教育をやめる原因になります。

子どもが言語を嫌いにならないための対策

子どもが言語を嫌いにならないために親ができることは、押し付けない、無理をさせないです。我が家では、息子が幼児から小学3年生の途中までは、日本語の通信教育をしていました。小学生になって学校の勉強が忙しくなってくると、日本の学校に合わせたワークブックがどんどん負担になってきたのです。「やりなさい」とか「やらないなら、止めるからね」などと息子を怒鳴りつけることが多くなっていきました。こんな状態では、日本語が嫌いになっては困ると、それからは日本語の勉強はやめました。

ワークブック以外からでも、語学は学べます。我が家では絵本や児童書を読み聞かせ、テレビや映画を一緒に見て会話をするなどして、息子の日本語をサポートしています。

また、子どもに気まぐれで「〇〇語で話してみて」と言うのも避けてください。目的もなく何かを言わなくてはいけないのは苦痛です。子どもの発話を促すためには、子どもが楽しめる言葉遊びやゲームなどを取り入れてみましょう。

その言語を使って好きなこと、楽しいことができれば、どんどん身に付きます。

ダブルリミテッドを防ぐための対策

ダブルリミテッドは、母語も第二言語も能力が低い状態です。日本で日本語を母語とする親が、あまり得意ではない外国語だけで子どもが生まれたときから話しかけることで、どちらの言語の発達も遅れてしまうことがあります。たとえ、外国語教育に熱心だとしても、自分の子どもには、自分の母語で接することをおすすめします。

また、乳幼児期はずっと日本語環境だったのに、インターなどに入園して突然外国語環境になることでも、ダブルリミテッドになることがあります。そのような環境でも、家庭での日本語のコミュニケーションをしっかりすることで、ダブルリミテッドを避けることは可能です。

母語を確立させることに重点をおいて、無理のない範囲で第二言語に取り組むようにしましょう。

バイリンガル教育の失敗の種類に合わせた対策を

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子どもがバイリンガルに育った姿を想像するのも、バイリンガル教育を続けるモチベーションになるでしょう。けれども、どんな失敗例があるのか、どうすればその失敗を避けることができるのかを知っておくことは、家庭でのバイリンガル教育を満足のいく結果にするためには重要です。

これから家庭で子どものバイリンガル教育を始める方は、バイリンガル教育を進める中でたびたび失敗例を思い出して、その道をたどらないように気をつけてください。そして、現在バイリンガル教育を実践している方は、今回紹介した失敗を防ぐための対策と反対のことをしていないかを確認してみましょう。

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この記事のライター

LOA
LOA

カナダ在住の英日翻訳者・フリーライター。Web媒体で子育てや語学学習についての記事を多数執筆。8歳の息子が0歳のときからはじめた絵本の読み聞かせは、今では私たちの生活になくてはならないものになっています。これまでに息子と読んだ絵本や児童書は、日本語、英語、フランス語を合わせて数千冊。息子が笑顔になる絵本を見つけるのが喜びです。