2023年06月02日 公開

チャールズ国王の戴冠式とイギリスの反応【英国すくすくレポ】

イギリスで70年ぶりとなる戴冠式が、2023年5月に執り行われました。日本のメディアでも報道され、その様子の一部をご覧になった方も多いのではないでしょうか。今月の英国すくすくレポでは、イギリス王室とその新国王のお人柄、戴冠式にまつわるエピソードについて特集します。

2023年5月6日、新イギリス国王チャールズ3世とカミラ王妃の戴冠式が、ロンドンのウェストミンスター寺院で執り行われました。日本からも天皇皇后両陛下からの差遣(さけん)という形で、秋篠宮ご夫妻がイギリスへ出向かれ、戴冠式に参列なさいました。チャールズ国王の戴冠式は、日本のニュースやメディアでも大きく報道されたこともあり、式典やパレードの映像をご覧になった方も多いのではないでしょうか。

今回の英国すくすくレポでは、チャールズ国王にまつわるエピソードと、戴冠式に盛り上がったイギリスの様子をお伝えいたします!

英国王チャールズ三世はどんな人物?

チャールズ国王は、母であるエリザベス2世が女王として即位した1952年、4歳の時に王位継承順位が1位の皇太子となりました。それから約70年の間、皇太子としてご公務を続けてこられました。故エリザベス女王の在位が歴代最長だったことはよく知られた事実ですが、つまりそれは、チャールズ皇太子が王になるまでの期間も非常に長かったということになります。73歳での国王即位は、英国王室の歴史の中でも最高齢なんだそうです。

若かりし頃のチャールズ国王(当時の皇太子)は、ケンブリッジ大学で考古学と人類学を学び、空軍・海軍へも入隊。若年失業者支援チャリティー団体を設立したりと若い頃から多くの活動を精力的にこなし、その後オーガニックブランド「ダッチー・オリジナルズ」(現・ダッチー・オーガニック)を創業。当時皇太子だったチャールズ国王が所有する農場を、10年かけて完全なオーガニックに変え、現地で収穫した材料を使用して、安全でおいしい食品をプロデュースしました。

さらに1980年に私邸として購入した「ハイグローブ・ハウス」(美しい庭園と有機農園・農場も隣接)では、環境に配慮した取り組み&運営がされているのは有名な話。購入当時は荒れ果てていたこの場所を40年かけて、自然豊かでサステナブルな場所へと生まれ変わらせました。

Highgrove Gardens (Twitter)

形式的な庭園だけではなく、植物が自然な形で育つ農薬を使わないオーガニックな庭造りを目指して作られた庭など数種類の庭園があり、年間4万人もの人が訪れるそうです。しかし、他の有名な庭園と違うところは、ここで使う(トイレや庭園の)水は、雨水を貯めたものを利用し、暖房設計も石油などは使わず薪を利用するなど、国王の強いこだわりによる設計&運営を行っています。

期間限定で庭園の見学が可能とのことなので、一度は訪れてみたいものですね。


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DUCHY ORIGINALS(ダッチーオリジナル)

私生活の方では、1981年にダイアナ元妃と結婚しウィリアム王子とヘンリー王子が生まれました。ダイアナ元妃が大変人気のあった人物だったこともあり、元妃との別居・離婚などを含むいくつかのスキャンダルでは、望まぬ方に注目された過去もありました。

カミラ王妃に関する国民の感情は、現在では二極化しており、公でこの話をするのはタブー視されている雰囲気があります。ですが、チャールズ国王とカミラ王妃はご公務に力を入れて長年活動されてきていることから、国民感情が少しずつ改善してきているようにも感じます。

戴冠式は英語でCoronation(コロネーション)

今回の戴冠式が行われたウェストミンスター寺院は、王室にまつわる重要な儀式(戴冠式のみならず、結婚式や葬儀なども)が執り行われてきた歴史ある教会です。チャールズ国王は、このウェストミンスター寺院で戴冠式をした記念すべき40人目とのこと!

今回の戴冠式では英国の伝統に則り、宗教的な要素を中心に進められましたが、現在の英国経済の状況を考慮して、簡素で参列者の人数は前回よりも小規模に計画されました。

また、チャールズ皇太子の環境に対する配慮から、通常の戴冠式では『新調したローブや衣装』を着るところを、祖父や曾祖父など歴代の王が使用したものを再利用したそうです。また儀式で使う聖油も、動物愛護の観点からクルエルティフリーのものが初めて使われました。

通常、英国の戴冠式に他国の王を招くことはないそうなのですが、今回の式典ではヨーロッパ各国の国王が招待されました。チャールズ国王が日頃から交流のある方々に参列してほしいと希望したのではないかと言われています。これは英国900年の伝統から離れる異例なことなのだそうです!

このように、今回の戴冠式は慣例通りにとどまらず、チャールズ国王の意思が反映された、特別で多様化を重視した内容となりました。


当日のライブ映像は、こちらからもご覧になれます。

英国BBCのウェブサイトでは、今回の戴冠式に使用されたさまざまなアイテムをはじめ、パレードに使用した馬車の詳細、ウェストミンスター寺院の内部などがわかりやすく図解で紹介してあります。もしご興味があれば、こちらもぜひご覧ください。
【図解】 イギリス国王チャールズ3世の戴冠式 どこでどのように(日本語サイト)

お祝いムードで、気持ちが晴れやかに

戴冠式の日が近づくにつれ、イギリス国内はお祝いムードに包まれてきました。とくにハイストリート(大通りや繁華街)の店舗のショーウィンドウには、チャールズ国王やユニオンジャックをモチーフにしたデコレーションが飾られて、にぎやかな雰囲気♪

店舗やオンラインでは、戴冠式に便乗してコロネーション・セールも開催されていましたよ。
ユニオンジャックは、色が「赤、青、白」とカラフルで、デザインもおしゃれなので、購買意欲が沸いてしまいませんか?(笑)

上の写真はイギリスの古都ウィンチェスターのショーウィンドウの様子。イギリス人の英国愛が伝わってきます。

遊び心があるアイテムも!

街を歩いていると、戴冠式にちなんだアイテムや商品をいくつも見かけました。左上の写真は冷蔵庫などに貼れるチャールズ国王のマグネットと王冠のキーホルダー、他にも戴冠式にちなんだオシャレなトートバッグや、戴冠式エディションのクラッカーも発見。さらには、チャールズ国王とカミラ王妃のお面もありました!(写真左下)

戴冠式当日はあいにくの雨だったものの、さすが「雨ニモマケズ」的なイギリス人。日頃から雨が降ってもほとんど傘も差さずに行動しているイギリス人には、とくに問題はないようで、ロンドンまで戴冠式のパレードを見に行くんだ!と地方から出かけていく方もいらっしゃいました。

ロンドン市内もたくさんのユニオンジャックや戴冠式のロゴの旗やポスター、王冠のデコレーションなどが華やかに飾られ、歴史的な記念すべき日を盛り上げいたのが印象的でした。

王位継承権第一位の皇太子となった日から70年以上を経て、ついに王の座についたチャールズ国王。これからチャールズ国王が率いる英国が、ますます繁栄していきますよう、心からお祝いの気持ちと祈りを送ります。


■いしこがわ理恵さんのイギリス漫画レポートの記事はこちら↓↓↓

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この記事のライター

いしこがわ理恵
いしこがわ理恵

在英12年目ハンドメイド好きの2児の母。武蔵野美術大学卒業。現在は教育に携わる仕事の他に、日本にルーツのある子どもたちを対象とした日本語子ども会活動・児童文庫活動も行っています。興味の範囲が幅広いので、常にいろいろな方向にアンテナをはりつつ情報収集が日課です。ハッピー子育てに役立つ情報をみなさまにお届けできれば嬉しいです。Instagram @rie.ishikogawa