夏のことわざ・慣用句には、夏と冬を対比して教訓を与えるものや、生命力の強さと切なさを感じさせるものなどがあります。短い言葉で表現され、情景を思い浮かべやすいので、子どもも親しみやすいのではないでしょうか。知っていると役に立つ夏のことわざ・慣用句をご紹介します。
ことわざと慣用句の違い
【ことわざ】
昔から言い伝えられてきた知恵や教訓、風刺などを含む短い言葉。
例)
・猿も木から落ちる
・とらぬ狸の皮算用
【慣用句】
2つ以上の単語が結びつき、全体として特定の意味を表すもの。
例)
・耳にたこができる
・足が棒になる
1.飛んで火に入る夏の虫
とんでひにいるなつのむし
【意味】
明るさにつられた夏の虫は、焼け死んでしまうにもかかわらず、火の中へ飛び込んでいきます。このことから、自ら進んで危険な目に遭いに行く、向こう見ずな愚かさをたとえた言葉です。
リズム感さえ感じる短く無駄のない言葉選びが、「暑い夏+火」の過酷な状況に飛び込む虫の様子をよく表していますね。
明るさを好むという虫の性質を子どもに教えるなら、蛍光灯やコンビニなどの店頭にある殺虫灯に虫が集まっているのを見せるとわかりやすいでしょう。
【似たことわざ・慣用句】
鴨が葱をしょってくる(かもがねぎをしょってくる)
2.夏歌う者は冬泣く
なつうたうものはふゆなく
【意味】
気温も高く食べ物も豊富な夏。冬に備えて働き、蓄える季節でもあります。夏に怠け歌って過ごした者は、厳しい冬が来たときに飢えと寒さに泣く羽目になるというたとえです。
イソップ物語の『アリとキリギリス』を思い浮かべる方も多いのではないでしょうか。
「今現在の努力が後々になって役に立つ、自分を大きく成長させる」ことを補足で伝えても良いでしょう。子どもが習い事の課題・宿題などを後回しにして、なかなか手をつけないときなどにおすすめです。
【似たことわざ・慣用句】
利は天より来たらず(りはてんよりきたらず)
3.夏は日向を行け、冬は日陰を行け
なつはひなたをいけ、ふゆはひかげをいけ
【意味】
自らを辛い状況に置くことで、身体が鍛錬され精神は強靭になります。暑い夏はあえて日向を歩き、寒い冬も日陰を選んで歩くことで心身ともに精進せよという意味です。
もう一つ、「夏は日陰、冬は日向を他人に譲るように、出しゃばらず謹んで行動するべき」という意味もあります。
習い事で結果が出ないとき、不利な状況での勝負など、子どもをついつい甘やかしてしまいそうなときに思い出すと、親子で勇気づけられる言葉ではないでしょうか。
【似たことわざ・慣用句】
かわいい子には旅をさせよ
4.夏の小袖
なつのこそで
【意味】
時期はずれで、役に立たないもののたとえです。
小袖とは、一般的には現在の和服の原型となった衣服のことをさしますが、ここでの小袖は「絹の綿入れ」のこと。秋から翌春まで用いる冬着です。
冬は重宝される上質な絹の綿入れも、夏には何の役にも立たないどころか邪魔になります。子どもは季節に関係なく、暑い日にブーツや手袋、寒い日に半袖と、着たい服を着てしまうことがありますよね。季節に合った服装をするよう諭すときに使えるかもしれません。
なお、「戴く物は夏も小袖」という表現もあり、もらえるものなら役に立たないものでももらう、という欲深い様子をたとえています。
【似たことわざ・慣用句】
夏炉冬扇(かろとうせん)
5.夏の虫、氷を笑う
なつのむし、こおりをわらう
【意味】
「狭い世界しか知らず、無知である様子」を表しています。夏の間に寿命が尽きる夏の虫は、冬を知りません。そのため氷の存在を笑って信じようとしないことをたとえたことわざです。
近所づきあい・保育園・幼稚園・小学校・習い事など、子育てにおいて親子ともに他者との比較に心が揺れることは多いでしょう。また、目に見える勝敗や優劣にとらわれて一喜一憂してしまいがち。
ほかと比べて勝っている、優れていると、パパママ・子どもが慢心してしまいそうなときに思い出したい言葉です。
【似たことわざ・慣用句】
井の中の蛙大海を知らず(いのなかのかわずたいかいをしらず)
短い言葉で多くを教えてくれる
ことわざ・慣用句は短い言葉で教訓・戒めを伝えることができます。言葉の成り立ちと意味を一緒に教えることで、子どもも興味を持ちやすいでしょう。
現代ではなじみのない単語や読み方もあるので、国語や歴史の勉強にもおすすめ。パパママの解説が必要になるので、親子のコミュニケーションが増えるという利点もあります。