日本でもよく話題になるフランス婚(事実婚)。大統領も事実婚をしているフランスには、日本と同じ結婚以外にPACS(パックス・民事連帯契約)やユニオン・リーブル(いわゆる事実婚)と合計3つの選択肢があります。子どもがいる場合どうなるの?フランスの結婚制度について現地ライターが詳しく解説します。
フランス人の結婚観
こういった歴史的背景から、「結婚」はカトリックの宗教的な意味合いを想像させると考える若者や60年代の学生運動に影響された祖父母世代のカップルが多く、そのため結婚以外の形を考える人が多いと思われます。
家族高等評議会のフラゴナール氏によって行われた2013年の調査報告書によると、2013年時点で出生児の56%が婚外子である。
事実婚(ユニオン・リーブル)とは
フランス大統領フランソワ・オーランドは、20年間カップルであり4人の子どもを持つセゴレーヌ・ロワイヤルとはユニオン・リーブル、その後ファースト・レディとして来日したバレリー・トリエルベレールとはパックス、現在のパートナーであるジュリー・ガイエともユニオン・リーブルというカップルの形を選び、結婚はしていません。
PACS パックス(民事連帯契約)とは
同性カップル、異性を問わず、共同生活を営むカップルに婚姻関係と同等の権利を認め公証する制度です。結婚の場合、カップルは市役所で家族や招待客、証人などの前でサインします。パックスの場合、裁判所にお互いの義務や権利を明記した契約書を提出するだけです。
以前は同性同士のカップルが結婚できなかったためこの制度が生まれたのですが、実際には異性同士のカップルにも人気の制度。フランスでは協議離婚ができず、弁護士などを立てなければいけないためだと思われます。
3つの制度、それぞれなにが違うの?
お互いへの義務
パックスの場合、契約書でお互いの義務を決められます。
ユニオン・リーブルの場合、一切の義務はありません。
財産
パックスの場合、それぞれ別財産になります。契約書で取り決めることもできます。
ユニオン・リーブルの場合、それぞれ別財産になります。
所得税
パックスの場合も、共同で申告し、世帯で所得税を支払います。
ユニオン・リーブルの場合、それぞれ各自で申告し所得税を支払います。
相続
パックスの場合、法定相続分はありません。遺言で指定する必要があります。居住住宅は1年間居住権があります。
ユニオン・リーブルの場合、法定相続分はありません。遺言で指定する必要があります。
別れる場合
パックスの場合、裁判所に届け出を出すだけです。
ユニオン・リーブルの場合、特に何もする必要はありません。
子どもはどうなるの?
結婚以外の選択肢を選んでも子どもの養育に問題はないのでしょうか。実は親権以外の部分はどの形態を選んでも子どもに対する責任はあまり変わらないのです。以下、具体的ににみていきましょう。
親権
父親に関しては、結婚している場合は自動的に親権が生じます。女性同士の結婚の場合、父親に自動的には親権が与えられません。
パックス、ユニオン・リーブルの場合は、父親が認知する必要があります。
経済的負担
別れる場合
片方の親が子供と一緒に住める監護権を持ち、もう片方が定期的に子供と会える面会権を得ることができます。
フランスのカップル事情
とはいえ、フランスでも地方や保守的な家庭では、現在も結婚を選ぶカップルが主流のようです。積極的にパックスやユニオン・リーブルを選ぶのは、パリなどの都会型カップルに多い傾向があるといえるでしょう。