2019年08月13日 公開

メディアリテラシーはなぜ必要?教育の現状や問題を簡単に解説

インターネットが広く普及したことにより、私たちは常に大量の情報にさらされて生活するようになりました。情報の真偽を確かめる・個人情報はSNSに載せないなどの「情報を適切に取り扱う力」は「メディアリテラシー」と呼ばれ、情報化社会を生きる子どもたちに欠かせないスキルといわれています。メディアリテラシー教育の必要性や、学校教育の問題点について解説します。

インターネットが広く普及したことにより、私たちは常に大量の情報にさらされて生活するようになりました。情報の真偽を確かめる・個人情報はSNSに載せないなどの「情報を適切に取り扱う力」は「メディアリテラシー」と呼ばれ、情報化社会を生きる子どもたちに欠かせないスキルといわれています。メディアリテラシー教育の必要性や、学校教育の問題点について解説します。

メディアリテラシーとは

メディアリテラシー(media literacy)とは、メディアからのメッセージを主体的・批判的に読み解き、適切に活用できる能力のこと。

「メディア」は、マスメディアやインターネットメディアなどの媒体のことで、「リテラシー」は、「読み書き能力」を意味しています。

総務省は、メディアリテラシーを次のように定義しています。

メディアリテラシーとは:
次の3つを構成要素とする、複合的な能力のこと。

1. メディアを主体的に読み解く能力。
2. メディアにアクセスし、活用する能力。
3. メディアを通じコミュニケーションする能力。特に、情報の読み手との相互作用的(インタラクティブ) コミュニケーション能力。

テレビやインターネットの普及により、さまざまな情報に接する機会が増えた今、小学校低学年からメディアリテラシー教育を行う必要性が高まっています。

なお、「メディアリテラシー」に似た言葉として、次のようなものがあります。

ネットリテラシー:インターネットを適切に使いこなすための知識や能力
コンピューターリテラシー:デジタル機器を使いこなすための技能
情報リテラシー:情報の探索や評価・分析、整理や発信などを自ら行う能力

それぞれの概念で重複する部分もありますが、今回は「情報を伝達する媒体を使いこなす能力」である「メディアリテラシー」を中心に取り上げます。

メディアリテラシーがないとフェイクニュースにだまされることも

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Georgejmclittle / Shutterstock.com

メディアリテラシーが十分でないと、どのような問題が起きるのでしょうか。

2016年に熊本地震が起きたとき、「地震のせいで近くの動物園からライオンが放たれた」というコメントに、深夜の街を徘徊(はいかい)するライオンの写真を添えた記事が、Twitter上にアップされました。

よく見れば、日本ではないことがわかる写真でしたが、リツイート(情報共有)は2万件を超えました。偽の情報を信じてしまった方も多く、熊本市の動物園には100件以上の問い合わせがあったといいます。

この事件では、ライオンの記事を投稿した20歳の会社員の男性が、動物園の業務を妨害したとして逮捕されています。

またアメリカでは、大統領選のときに「ローマ法王がトランプ支持を公式に表明した」などのフェイクニュースが出回り、SNSを通じて拡散されました。

民主党やクリントンを批判する多数のフェイクニュースは、選挙結果に影響を与えたともいわれています。

「情報を正しく読み取り、適切に活用する力」、すなわちメディアリテラシーがないと、誤った情報や偏りのある価値観をうのみにしてしまったり、広告や宣伝にだまされてしまったりする可能性が高くなります。

それだけでなく、間違った情報を拡散する発信者になってしまい、被害者を増やすことに加担してしまうおそれもあるのです。

海外に比べてメディアリテラシーが低い日本

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allensima / Shutterstock.com

海外ではすでに、メディアリテラシー、特にメディアによって拡散される誤った情報を見抜く方法を、義務教育の中で子どもたちに教えていま。​

イギリスは、メディアリテラシー教育に早くから取り組んできました。現在は学校のカリキュラムの1つとして定着し、GCSE(中等教育修了試験)の中には、「Media Studies(メディア教育)」という独立した科目があります。

またアメリカでも、ニュース記事を利用して情報を分析し、信頼に足るものか判断する授業を行うなど、メディアリテラシー教育に注目が集まっています。

一方で、日本では2002年度から「総合的な学習の時間」のテーマに「情報」が取り入れられたものの、その内容の多くはコンピューターの操作方法など技術習得がメインで、情報の取り扱い方について考える機会は多くありません。

総務省は、ICT(Information and Communication Technology)メディアリテラシー育成のためのプログラムを開発していますが、学校や教員によって取り上げ方には大きな差があり、教育が十分行き届いているとはいえません

そのため、メディアリテラシー教育を学校まかせにせず、日々の生活の中で、情報との付き合い方を子どもに教える必要があるのです。

参考サイト:総務省|教育情報化の推進|ICTメディアリテラシーの育成

国語力を高める=メディアリテラシー向上につながる

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George Rudy / Shutterstock.com

日本の一部の学校では、国語科の中にメディアリテラシー教育を取り入れる試みが行われています。

そもそも国語科は、国語(日本語)で適切に表現をし、正確に理解し、伝え合う力を高め、想像力や創造力を養うことを目的とした教科です。

国語力を鍛えることで、

・言葉の意味や意図を適切に読み解く
情報が正しく伝わるように書く
・情報について対話や討論を行う

といったメディアリテラシーが鍛えられます。

家庭においても、この3つの能力を伸ばすことを意識するとよいでしょう。

たとえば、

・たくさんの本や新聞を読み知識や想像力を養う
・本の感想やニュースに対する自分の意見を書き出す
・本や身近なニュースについてお互いの考えを話し合う

といったことも、メディアリテラシー教育に役立ちます。

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メディアリテラシーを知る、おすすめの本

メディアリテラシーを知るうえで役立つ本を、2冊ご紹介します。

窓をひろげて考えよう(かもがわ出版)

窓をひろげて考えよう | 下村 健一 |本 | 通販 | Amazon (143162)

タイトル:窓をひろげて考えよう
著者:下村 健一・艸場よしみ(企画/構成)
出版社:かもがわ出版

子どもに向けてメディアリテラシーについて説明をしている本です。しかけ絵本になっているので、小さな子どもも楽しんで読み進められます。

10代からの情報キャッチボール入門 ―― 使えるメディア・リテラシー(岩波書店)

10代からの情報キャッチボール入門――使えるメディア・リテラシー | 下村 健一 |本 | 通販 | Amazon (143163)

タイトル:10代からの情報キャッチボール入門――使えるメディア・リテラシー
著者:下村 健一
出版社:岩波書店

多くの情報に触れる機会が増える10代に向けて書かれた本です。語りかけるような文章でわかりやすく、多くの事例がピックアップされていて、子どもだけでなく親にもおすすめの一冊です。

子どもを「情報の加害者」にしないために

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Rawpixel.com / Shutterstock.com

インターネットが普及する以前は、メディアリテラシーが足りなくても、トラブルの多くは本人と、本人が直接関わっている人との間だけで起きるため、大きな問題に発展することはまれでした。

しかし今では、ブログやSNSなどを通じて「誤った情報を多くの人に伝えてしまう」「個人情報をweb上に発信してしまう」ことが簡単にできてしまいます。

そして一度このようなことを行ってしまうと、情報の拡散は止められず、当事者同士で謝るだけでは済まない事態に発展します。

子どもが誤報を広めたり、他人の個人情報を公開したりして、「情報の加害者」になることを防ぐためにも、これからの時代にメディアリテラシー教育は必要不可欠といえます。

親子でメディアリテラシーの重要性について、しっかり話し合っておきたいですね。

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この記事のライター