2023年02月27日 公開

イギリスにも浸透中の日本文化がおもしろい!【英国すくすくレポ】

「カツ」は無いけど「カツカレー」!?自由にワイルドにイギリス文化に浸透中の日本の食べ物や日本文化が近年面白いことになっています。現地で子育て中の筆者が、日々の生活や子育てを通して気づいた「イギリス国内の日本文化」をレポートします!

日本からイギリスに移住して今年で15年になる筆者ですが、ここでの生活が長くなるごとに、日本文化が恋しくなります。日本はおいしいものがたくさんあって、便利で、歴史的なものと近代的なものがある素晴らしい国。そんな日本文化に興味を持ち、「日本に行ってみたい!」「日本をもっと知りたい」と思ってくださっている方はイギリス国内にもたくさんいらっしゃいます。イギリスのテレビ番組で、日本をテーマにしたものが制作されることもしばしば。

イギリスに引っ越してきた頃には、なかなか見かけなかったものや、手に入りにくかったものが、ここ数年で気軽に買えるようになったり、店頭で見かけるようになってきました。どんどん日本文化が浸透してきているように感じます。

今回の英国すくすくレポでは、イギリス生活でも少しずつ身近になってきた日本食や日本文化についてレポートします。

日本文化、イギリスに進出!?

まず、日本文化でよく見かけるようになったものといえば、日本食・和食の進出が目立ちます。年々日本食の人気が高まり、今ではロンドンのみならず英国各地に日本食レストラン、ラーメン屋、弁当屋、日本食が買える食材店などがどんどん増えてきています。今までは日本への里帰りでしか食べられなかったものが、ちょっと足をのばせば手に入りやすくなったこともあり、海外生活に心の安定を提供してくれるようになりました。(日本食は心の栄養でもあります)

日本食が一般化してきた背景には、イギリス人の健康志向(日本食は健康に良いというイメージがあるよう)や、多国籍料理を自宅でも作るようになった(料理番組が人気)という生活スタイルの変化が影響しているようです。

寿司もその良い例で、以前は日本食レストランでしか見かけなかった寿司は、徐々に市民権を得てYo! Sushiのような回転寿司や、スーパーのランチ売り場でサンドイッチなどと並んで売られるようになりました。
Sushiが好き!と言ってくれる子ども達も多いようで、筆者の娘達が海苔巻きをお弁当に持って行くと「いいなー!Sushi美味しそう」と言われるそうです。娘達がまだ赤ちゃんだった頃に先輩日本人ママさん方から聞いていたのは、「おにぎりみたいな海苔で巻いたものを持って行くと、その黒いの何!?ってからかわれるから、持って行くのを恥ずかしがるのよ」という話でした。

しかし今は、お誕生日会のパーティーフードの一皿としても寿司が出るようになり、海苔も寿司もイギリスに浸透しています。時代は変わった…としみじみ思います。

日本のカレーは全部「カツカレー」である

日本食がどんどんイギリス人の舌に親しまれている裏側で、ちょっと苦笑いをしたくなるような話もあります。それは日本のカレーについてです。イギリス人は基本的にいろんな国のカレーが好きなようで、イギリスの第二の国民食ともいわれる「インドカレー」をはじめ、グリーンカレー/レッドカレーでお馴染みのタイカレー、中華料理のカレーなど世界のいろいろなカレーが食べられています。(スーパーにもたくさんの種類が売られています)

そこに仲間入りして人気が出てきているのが日本のカレーです。しかし謎なのが、あまり「ジャパニーズカレー」とは呼ばれず「カツカレー」と呼ばれるのが一般的。たとえそこに「カツ」が乗っていなくても…。

もちろんレストランで注文したり、出来合いのカレーをお店で買った場合にはカツが乗っていることも多いのですが、スーパーで見かけるカレールーや、インスタントのカレーうどん等に至っては「カツはどこ??」とツッコミたくなります。(ちなみにベジタリアン仕様になっていることも多く、動物性由来のものは入っていないようす)

Wikipediaによると、

In Japan, the name refers exclusively to a dish of curry served with a cutlet. However, in the UK, the name is sometimes applied to any type of Japanese curry.
(日本では専らカツレツと一緒に提供されるが、イギリスにおいては、その呼び名(カツカレー)は日本のカレー全般を指すこともある)
※出典:https://en.wikipedia.org/wiki/Katsu_curry

このように、カツは関係なし!というワイルドな定義が展開されているのです。

さらに逆のパターンも。学校の給食でもカツカレーが出るようになったときのこと、「日本の食べ物がイギリスの給食にまで…!」と驚いていたのですが、そのメニューを知ってさらにびっくり。娘たちの小学校ではカツとライスがメインで、カレーソースは先生がスプーンでたらりとかけてくれる程度なんだそう。
他の学校ではさらに飛躍していて、カツの中にカレーソースが仕込まれていて、ご飯にかけられるカレーソースは無いそうです。それでもメニュー表での名前は「カツカレー」なのですから、日本人として一言モノ申したい気持ちです!(笑)

何にせよ、日本のカレー味はイギリス人の舌にとても合っているらしく、さまざまな「カツカレー」商品を見かけることができます。イギリスにお越しの際には、ぜひ面白い「カツカレー」を見つけてみてください。

カレー以外にも、こんな味が人気です♪

カレー以外にも日本的な味覚のもの、日本食材を使った商品や、和食に使える材料がどんどん増えている印象です。移住してきた当初はスーパーで枝豆入りサラダなど見たことがありませんでしたし、生椎茸だってめったにお目にかかれるものではありませんでした。(筆者が住んでいるところが郊外の町ということもあり、需要の少なさからか、ロンドン等の都市部と比べると品ぞろえが少ないのです。)

しかし、ここ数年で生椎茸は比較的簡単に手に入るようになり、豆腐の種類も増え、ワサビ、海苔、味噌や醤油、うどんやそばなどの麺類もわざわざ日本食/アジア系食材店に行かなくても、地元の普通のスーパーで手に入るようになりました。毎年日本の里帰り時に柚子胡椒を買って持って帰ってきていましたが、イギリスの地元スーパーで買えるようになったときは衝撃でした!

ただ、ときどき日本の食材や日本風な味ではあるものの「違う、そうじゃない…!」と言いたくなる商品もあります。たとえば緑茶はたくさんの種類があって、そのいくつかはライムが混ぜてあったり、林檎風味だったり、日本だとそれは無いなぁと思う組み合わせで売ってあります。
ラーメンにクレソンが入っていたり、丼物のはずがお皿の上にご飯とてんぷらがオシャレに並べて盛られていたり、なんだかちょっと本来の日本食とはズレているものも。そういうわけで、イギリスで純日本食を食べたいと思ったら事前リサーチは必須です!

余談ですが、特に日本食として作られているわけではない商品で、日本の味に似ている、または日本食作りに使えるという現地の食材もあります。我が家の娘たちが気に入っているのは「Smoked mackerel 」サバの燻製です。これが白ご飯と本当によく合うんです!!日本で食べたサバの干物とよく似ていて、一口ごとに癒される…。このように、現地にある食材でなんとか「日本の味っぽいもの」を作ったり見つけたりして小さな幸せを感じています。

日本の食材がどんどん増えてきていると言っても、まだまだ手に入りにくいものもたくさんあります。地方在住者として、なかなかお目にかかれない食材の例として「大根」「ごぼう」などの根菜類があります。アジア食材店に行けば売ってありますが、まだまだ普通のスーパーでは見かけません。(大根は以前は売ってありましたが、ここ数年で見かけなくなってしまいました…)
日本のサツマイモやカボチャも手に入りにくく、季節によっては似たものが買えますが、やはり日本のと比べると水っぽかったり味が違ったり。最近、根菜類は自分で栽培するのはどうだろう?とさえ思うようになりました。(それくらい恋しい)

他にも日本文化は健闘中!

ここまでほとんど食べ物のことを書いてきましたが(筆者が食いしん坊だからでしょうか…)、もちろん食べ物以外のこともイギリス人に受け入れられている&人気が出ているものがたくさんあります。その一部をご紹介しますね。

たとえば「柴犬」は、以前は全くと言っていいほどイギリスでは見かけない犬種でした。しかし言わずもがなその愛らしい姿と忠誠心のある性格等で、イギリス国内で知名度も人気も急上昇しています。まだブリーダー数は他の犬種に比べて少ないですが、柴犬を飼ってらっしゃるご家庭に出会う頻度が増えました。

子育て・知育にかかわる分野で知名度&人気が上がっているのは「折り紙」です。筆者の娘たちが今よりもっと幼い頃は、折り紙を店頭で見かけることはほとんどなく、売ってあっても非常に高価でした。また、現地の人に折り紙の話をしても「あぁ、聞いたことある」程度の反応でした。

しかし、ここ数年で折り紙はオンラインでも店頭でも問題なく買えるようになり、折り紙&折り方の本がついたセット商品もたくさん売られるようになりました!ナーサリー(保育園)やプレスクール(幼稚園)、小学校などでも取り入れられ始めています。先日はイギリスの甥っ子から「誕生日に折り紙セットが欲しい!」とリクエストをもらい、義姉が「最近折り紙にハマっててね~」と話してくれて、「こんな風に日本の遊びが受け入れられているのは嬉しいものだな~。」と笑顔になったところでした。

その他にも、日本を連想させる「桜」「浮世絵」「こけし」「青海波(せいがいは)模様」「(和紙や着物を連想する)和柄」などのデザインが使われた商品を見かけます。必ずしも日本製というわけではなく、日本のデザインに影響を受けて作られたものも多いです。
また、日本のアニメ文化や日本の「可愛い」という言葉が由来となった「Kawaii」(キャラクターものやパステルカラーのもの、かわいいと表現されるようなもの)が、アートやハンドメイド、文具やぬいぐるみなどの多くの分野で取り入れられています。

この感覚を例えると、日本人が「北欧デザイン」と言われると「あぁ、あの感じね!」とマリメッコ柄や、北欧らしい色合い・デザインを思い浮かべる感覚で、「Kawaiiデザイン」が現地の方々の感覚に浸透している感覚でしょうか。
デザイン以外にも「漢字」「ひらがな・カタカナ」「日本語の単語」「都市名」がデザインされたTシャツなどもよく見かけます。(ときどき、「あ、この日本語惜しい!」という小さい間違いを見つけてしまうこともありますが、そこはご愛嬌ということで…。)

このように、日本のおいしいもの、美しいもの、かわいいもの、おもしろいもの等が、イギリス人に受け入れられ浸透していっていると感じる近年。日本人として嬉しくもあり、誇りに感じています。

▼文様に関してはこちらの本もおすすめです。


■いしこがわ理恵さんのイギリス漫画レポートの記事はこちら↓↓↓

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この記事のライター

いしこがわ理恵
いしこがわ理恵

在英12年目ハンドメイド好きの2児の母。武蔵野美術大学卒業。現在は教育に携わる仕事の他に、日本にルーツのある子どもたちを対象とした日本語子ども会活動・児童文庫活動も行っています。興味の範囲が幅広いので、常にいろいろな方向にアンテナをはりつつ情報収集が日課です。ハッピー子育てに役立つ情報をみなさまにお届けできれば嬉しいです。Instagram @rie.ishikogawa