海外移住や国際結婚が増えてきた近年。海外に住む「日本にルーツを持つ子ども」の親は、現地語と日本語のバイリンガルに育てるために、どのような工夫をしているのでしょうか?よくある問題点とその対策を織り交ぜ、「子どもの日本語を伸長していく4つの工夫」をご紹介します。
「日本語をどう伸ばすか?」が実は深刻な問題に
しかし近年増えてきた海外移住や国際結婚などで他国に住んでいる場合、「現地語プラス日本語」をどう伸ばすかということが、実は深刻な問題だったりします。
家庭環境にもよりますが、現地語は学校や交友関係の中で自然と上達するのに比べて、家庭内の会話だけで、子どもが日本語でコミュニケーションを取れるようになるのは、意外と簡単なことではありません。
国際結婚や海外で暮らしているからといって、努力なしで自然にバイリンガルになれるわけではないのです。
今回ご紹介する「子どもの日本語を伸長していく4つの工夫」が、国内で暮らすご家庭のバイリンガル教育に何かのヒントにつながるかもしれません。
日本語で話しかけることを徹底する
ここでよくある問題点は、子どもが成長し、幼稚園や小学校などに進学すると、家庭の中でも現地語で会話・返事をしようとしてくることです。この場合でも親は徹底して「自分の母語で話しかける・返事をする」を継続することが大切です。
例えば、母親が本当は現地語が流ちょうに話せるとしても「お母さんは現地語を勉強中だから、まだあまりわからないの。日本語でお話ししてくれるとうれしいな」と、協力をお願いする形で、日本語を話す環境を作るのもひとつの方法です。
子どもが受け入れる間は、どんどん日本のものを!
絵本やアニメから吸収する語彙の数は侮れません。好きなキャラクターや番組であれば、その効果はとても大きいです。現地で手に入るDVDでも、あえて日本で買ってきて日本語の音声で見せる、ゲームやアプリもなるべく日本語で遊べるものを使わせるという家庭もあります。
ただし、多くの家庭で共通していた問題は、例えばアニメでは「一番最初に見た言語でその後も見たがる」ということ。つまり最初は現地語で見せたけれど、二回目は日本語で見せたら子どもが嫌がった経験がある家庭が多いようです。
可能であれば「日本のアニメは吹き替え版ではなく、日本語版で見せる」と良いかもしれませんね。
現地にある教育機関やサークル等を利用する
「日本語を話すのは、自分と親の2人だけじゃないんだ。仲間がいるんだ」と思えることは、マイノリティ言語を使う環境にいるとき、とても心強いことです。
他の子どもたちが、日本語の読み書きを練習しているのを見せたり、日本語で歌やゲームを楽しむ集まりに参加するのも効果があります。たとえ、その場では真似したがらなくても、しばらく時間を置いてから「やってみようかな」とやる気につながることもあるようです。
日本語の読み書きができることの利点を伝える
「日本の従兄弟と文通をしてみよう」とか、「カタカナが読めれば、このアニメのキャラクター事典が全部読めるようになるよ!」など、子どもの興味が持てそうなことを通して、日本語の読み書きができることの利点を伝えてみましょう。
また、子どもが実際に日本語を話すようになってきたら「すごい!日本語が上手になってきたね」「どっちの言葉も話せる〇〇ちゃん/くんって、かっこいいな!」と褒めてあげると、さらに自信を持ってくれますよ。
多言語育児の悩みは世界共通
夫婦どちらともスロバキア人で、家での会話は100%スロバキア語。そのため、イギリス生活に必要な英語も伸ばしてあげたいので、家庭の会話以外では特にスロバキア語を意識せず、本やテレビなどは英語のものを使っているそうです。
年に1〜2回、アレキサンダーくんの祖父母が遊びに来た際は、一緒に家族旅行に行くことも。その数週間は一日中スロバキア語だけの環境にいるため、アレキサンダーくんのスロバキア語がメキメキと上達するそうです。
しかし、ずっと順調にバイリンガル教育が進んだわけではなく、イギリスの幼稚園でお友だちにスロバキア語で話しかけたけど、みんながわかってくれないことで悲しくなったこともあったそうです。「ママ、どうして他の子は違う言葉を話すの?」と混乱してしまったり、「みんなと違う言葉を話したくない」という時期もあったといいます。
小学校に上がった今では、そういった状況を本人も理解できるようになり、家庭内と外で違う言葉を話すことを楽しめている様子だと語ってくれたイヴェタさん。
「親が自分の母国語に誇りを持って話すことが大事だと思う」という彼女の言葉が印象的でした。
正解や決まったゴールが無いからこそ、親子で取り組む
日本で暮らしていても、なかなか思い通りにバイリンガル教育が進まず不安になることもあるかもしれません。焦らなくても、各家庭で目指すゴールはさまざまで良いと思います。子どもの様子を見ながら、子どもが楽しんでくれることを少しずつ取り入れていくことが大切ではないでしょうか。
いつか多言語が話せることが子どもの自信と未来の可能性につながるように、根気強く伸ばしていってあげたいものですね。