大人になってから、きれいな字を書く人にあこがれませんか?きれいでなくても読みやすい字を書くことができる人とそうでない人、一体この差はいつからついたのでしょうか?元小学校の校長だった筆者が、長年教育現場で培った知識をもとに、その秘密に迫ります。
字がきれいな人とそうでない人の差って?
職場においても、職種によっては筆耕という係りもあるぐらいです。市役所・県庁など行政の職場では、筆のたつ人は一目置かれます。
では、字のきれいな人は、書道教室に通ったからでしょうか?でも同じ書道教室に通っていても、どちらかというと、女性の方がきれいな字を書き、男性の字は読みにくいことが多いようです。この差は、どこから生まれるのでしょうか?分析してみたいと思います。
小学校高学年あたりで字の美しさが決まる!?
人の書く字の美しさは、小学校高学年あたりで決まってしまうようですね。小学校に入学したての子たちの字は、ほぼ一様です。でも、4年生ぐらいになると字のきれいさに、はっきり差が出てきます。
この後、本人が努力して、何とか人並に書けるようになるケースもありますが、きれいに書けるまでに至るのは厳しいと言ってもいいでしょう。
書道で上達しない子どもの共通点とは?
どちらかというと、毛筆が中心。なので、残りの練習は、毛筆ばかり行う。男児も女児も、習いたてはみんな同じ程度で、やっと「これは線ではなくて字かな?」というのが、スタート地点です。そして、毎月本部に清書を提出し、9級、8級、7級と上がってきますが、ある共通点のある子どもたちは、男児も女児も3~4級で止まってしまいます。
毎月来る昇級を知らせる冊子には、上がりましたよという記述がなかなかありません。本人もがっかりしているようですし、それだけでなく、意欲も失いがちです。さて、この共通点とは何でしょうか?
正しい動作 × 反復練習 VS まちがった動作 × 反復練習
テニスやバドミントン、卓球のラケットのスイングや野球のバッティングなどは、理論的にも考えられた正しいフォームがあるわけです。ところが、しばらく経つと、スポーツ競技に上手な選手と不器用な選手・思ったとおりの打球が打てないなど、選手間で差が広がってきます。
それは、はじめの「教えてもらった正しい型」よりも、早く実際にボールを打ったり、投げたりすることの方が楽しいと思ってしまうからですね。
筆者も中学校で部活指導をしていた際、ラケットのスイングを一人一人に教えましたが、教えられたとおりのスイングを丁寧にまず真似ることを要求しました。そして、その正しいフォームが身についてくると、自然に体が動くようになり、早く打ち返したり、正確に投げたりすることができるようになる。これが一番大切なことなのです。
文字書きも正確に無理のないフォームを覚えることが重要
逆に、速く書くことに夢中になると、段々正しいフォームが崩れてきて、きれいじゃない、雑な読みにくい字になってしまいます。その字を毎時間の授業で書いたとすると、悪い癖が抜けなくなってしまう。だから書道塾での硬筆の習字が、小学校の学年が上がるに連れて上達しないのは、当然なことなのですね。
小学校低学年のうちに、丁寧できれいな字を書く習慣を!
一字一字、教科書の字を見ながら硬筆の清書のつもりで書いていくと、段々きれいな字で速く書けるようになる。大人になっても、きれいな字で正確に速く書ける大人が男女問わず、出現します。これは大切な財産になりますよ。
小学校6年生のころ、仲が良かった友だちがいました。彼のノートを見せてもらって、びっくり!本当にきれいな字で見やすい上、ノートにびっしり書いてあるのを見て、ちょっとショックを受けたのを今でも思い出します。
そんな彼は、現在、日本を支える重工メーカー・M重工のお偉いさんに……。頭の良さと字の美しさに、因果関係はないと思いますが、きれいな字で書かれたノートは見直しやすく、勉強もはかどるのではないでしょうか。ぜひお子さんにもきれいな字を書けるように、パパママの皆さん、正しいフォームを教えてあげてくださいね。
ちなみに、書道塾で先生が子どもの手を取り、一緒に書くことがありますよね。そのときに、先生が筆をもう少し右に持って行こうとしても、本人がグッと力を入れて、自分の字を書いてしまうタイプがいます。個性が強いのでしょう。なかなか上達をしない子は、男子にこのタイプが多いですね。でも、将来の書道の大家になるのかも!?それも教えがいがありますね。