色彩豊かに大胆な筆使いで描かれる絵と独特な文章で、子どもも大人も魅了する絵本作家のミロコマチコさん。今回は、眩しく光る黄色いモノたちと青いネコとの物語「オレときいろ」についてインタビュー。絵本で表現したかったことや、絵本の持つ世界観などを紹介します。
青いネコと黄色いモノたちのストーリー
著者名:ミロコマチコ
出版社:WAVE出版
「オレときいろ」。オレとは、表紙にも出てくる青いネコのこと。
真っ黒な木の枝の上に、青いネコが腰かけているシーンから始まるこの絵本。枝の先に、小さく光る、丸い“きいろ”をネコが見つけ、それを追いかけていくことで物語が展開していきます。
黄色は、昆虫だったり、暖かな陽射しだったり、土の中から発散される生き物の力だったり、突然吹き荒れる強い風だったり。青いネコはいろんな黄色に出会い、そのたびにムキになって追いかけまわしたり戦いを挑んだり。黄色に翻弄されながらも、最後は、ネコと黄色いモノたちは穏やかに共存します。
なんだか不思議な絵本ですよね。
黄色の正体は……
「暗く寒いモノクロの世界だった冬から、虫たちが騒ぎ出し、草花が芽吹く季節の移り変わりを、“きいろ”を使って表現しました」とミロコさん。きっかけはいつものベランダにいるいつものネコがふと見せた動きなのだそう。
「3月ごろ、子虫に驚き、風に驚くネコの様子がおもしろくて、春になりかけているこの時期、世界が変わるこの瞬間を、絵本で描くとどうなるだろうとふと思ったのです」
青いネコが、自分が知らない間にやってきたいろんな“春の知らせ”に驚き戸惑い、格闘している様子は、無邪気な子どもの反応と通じるところがあります。大人になると、そうした季節の微妙な変化にも鈍感になってしまいますが、この本を読んで、春ってこんなにエネルギッシュな季節だったのか、と再認識することができます。
「オレ」のようにテンションがあがって騒ぎ出す子も!
「絵本なので実際に光らせることはできませんが、できるだけ眩しく、光らせたいと思い描きました」と話すように、ページをめくるたびに目に飛び込む黄色がものすごく眩しく、大人でも驚かされます。
読む人のイメージを膨らませるミロコさんの絵本の世界
そう話す通り、ミロコさんが絵本の中に書く文章は、とてもシンプルにまとめられていて説明的なものがありません。これはなんだろうと思わせる絵とともに聞きなれない擬音が描かれていたりして、それを自分で、親子で考えて、自分たちだけの答えを見つけながら読んでいくという楽しみ方ができます。
そして、細かいところまで描写されているミロコさんの絵は、何度見ても飽きません。ストーリーを追う読み方ではなく、絵を眺めて、そこから感じることを親子で話し合ったり、発見したり、そんな風にも楽しめます。
「オレときいろ」では、黄色を使って生き物や自然のエネルギーがいきいきと、激しく、眩しく表現されていました。この絵を見て、話を読んでどう感じるか、お子さんと一緒にぜひ試してみてください。