「勉強しなさい」と親がうるさくいわずとも、自ら学ぶことができる子どもはどうしたら育つのでしょう?今回は、子育て中ならぜひ読んで欲しい「子どもの学ぶ心を育む」教えが詰まった名著『学ぶ心に火をともす8つの教え 東大合格者数公立No.1!! 日比谷高校メソッド』をご紹介します。
子どもの「自ら学びたい」という気持ちを育むために
著者 :武内彰
出版社 :マガジンハウス
著者は、かつて東大合格の「名門」公立高校とされていた日比谷高校を東大合格者数低迷期からV字復活させた武内彰校長。
タイトルに「東大」と入っているので、「東大に子どもを入れたいパパママ向けの本かな?」「高校生を持つパパママ向けかな?」と思いながら、まずパラパラと読んでみたら、そんなことはありませんでした。
親が「勉強しなさい」と言わずとも、子ども自らが勉強するようになる教えがたくさんあり、0歳と2歳の乳幼児を育児中の筆者でも、子育て中のあらゆるパパママにとっても、とってもタメになる内容が詰まっていました。
子どもが伸びる条件とは?
日比谷高校という進学校以外にも教育困難校で教員を勤めたことのある著者は、「教育困難校であれ進学校であれ、【子どもが伸びる条件は同じ】」と述べています。もちろん、教育困難校と進学校では、生徒の学力に開きがあるけれども、伸びる条件において変わりはないといいます。
では、「子どもが伸びるときはどういうときか?」というと、「子どもが純粋に【知】に触れたとき」、つまり、「子どもが知りたいと自ら思ったとき」、どの子の目もたちまち輝きだし、自ら学びたいという気持ちになるのです。
家庭でも「子どもの学ぶ心に火をともす授業」を!
著者が導き出した「子どもの学ぶ心に火をともす」授業のスタイルとは、言葉にすると単純で、「楽しい授業であること」と述べています。具体的に「楽しい授業」はどんな授業かというと、それは、「知識や情報を伝えるだけでなく【なぜ?】を問う授業」だというのです。
先生が生徒に知識や情報を一方通行で伝達するのではなく、先生と生徒、あるいは生徒同士の双方向のやりとりがあって、「面白い!」「もっと知りたい!」と思わせる瞬間がある、知的好奇心を刺激する授業。それが、「学ぶ心に火をともす授業」だといいます。
この授業スタイルは、家庭内の教育でも応用可能です。
たとえば、お湯が100℃で沸騰すること、ボールから手を離すと下に落ちること、などなど日常のさりげない出来事に対し、「どうしてお湯は100℃で沸騰すると思う?」「どうしてボールから手を離すと下に落ちるのかな?」などの疑問にして子どもに問いかけます。
子どもが正しい答えを返してくるのが重要なのではなく、いかに「どうしてだろう?」「もっと知りたい」と思ってもらえるかが大切です。
この著者によれば、「どんな子でも変わらないのは、お母さんやお父さんに、自分の考えや気持ちを知ってもらいたいと思っている」ことだそう。親に「自分の思いを受け止めてもらい、幸せな気持ちにならない子はいません 」と……。
親として「決して焦らず、丁寧な投げかけを行って」いれば、いつしか「子どもは必ず自分の頭で考え、応えてくれるはず」です。
すなわちそれが、「火をともす」ということで、「学ぶことは楽しい!」といったん火が着けば、あとは親として子どもの背中をそっと押してあげるだけで、自ら学んでいく子どもになるのです。
そもそも「なぜ勉強しなくてはいけないのか?」
こんな問いを子どもにされたら、あなたはどう答えますか?
「子どもが勉強するために、ちゃんとした理由を答えなきゃ」、「勉強するメリットを知らせるための、とっておきな理由をいわなきゃ」などと考えてしまってはいませんか?
本書の著者は、親が子どもを勉強させるための理由を考えるのではなく、子どもたち自らが「どうして勉強しなくてはいけないのか」の答えを見つけられるような環境を大人がつくってあげることが大切だと説いています。
大人の考えを押し付けるのでは、子どもは反発します。子ども自身が自分で考えて、悩んで、答えを出した結論こそ、子ども自らが自然とがんばっていくものなのです。
また、【勉強する意義】についても、「親子で同じ意見を持つ必要はない」のだとか。
大人として「私はこう思うよ」ということを伝えてあげ、子どもが答えを導き出す過程をサポートし、彼らの出した意見を認めてあげることが重要なようです。
最後に:子どもに「勉強しなさい」という前に……
今回紹介した内容以外にも、「親が絶対にやってはいけない7つのこと 」「テレビ、スマホ、SNSをどうするか」など、親として抱えるリアルな悩みに具体的な解決策を多々提示してくれています。
読むにつれて、子どもに対し「勉強しなさい」などという前に、親として「何ができるか」を考え続けなければならないと反省させられました。
「子どもが自ら学ぶ」ようになるには、まず「親も自ら学ばなければならない」。
子どもが親元を巣立っていくまで、ずっと本棚の片隅において、困ったとき、迷ったときに手に取りたい、そんな1冊ではないかと思います。