日本語で「イギリス」というと、どこのエリアを思い浮かべますか?
この地を訪れたことがある方や興味がある方ならば、いくつかのエリア(歴史的な複数の国)が合わさってU.K.(ユナイテッド・キングダム)になっていることをご存じかと思います。一方で、なんとなくロンドンが首都の、アフタヌーンティーが有名なヨーロッパの国のひとつというイメージの方もいらっしゃるのではないでしょうか。
これからイギリスへ旅行・留学をする方にもぜひ知っていただきたいのが、私たちが「イギリス」と呼ぶ国は、実際にはイングランドのみを指す場合と、その他のエリア(スコットランドやウェールズなど)を含む場合があるということです。また、各地で種類豊富な英語アクセントが話されています。
イギリスは『連合王国』
イギリスの正式名称は、
グレートブリテンおよび北アイルランド連合王国
(United Kingdom of Great Britain and Northern Ireland)です。
U.K.(ユナイテッド・キングダム)に含まれるのは、ロンドンで有名な「イングランド」、北部にある「スコットランド」、それからイングランドの西に隣接している「ウェールズ」です。また、この3つで「グレートブリテン」と呼ぶこともできます。そして、ここに「北アイルランド」を含めた先ほどの「グレートブリテンおよび北アイルランド連合王国」が、正式名称です。
ちょっと複雑ですね!
公用語は英語で、各国それぞれに首都があります。
イングランド:London(ロンドン)
ウェールズ:Cardiff(カーディフ)
スコットランド:Edinburgh(エディンバラ)
北アイルランド:Belfast(ベルファスト)
また、出身を表す言い方としてI’m Britishということもできますが、イングランド出身以外で好まれるのは、どちらかと言えば「スコットランド人です」を表す「I’m Scottish.」や、「ウェールズ人です」を表す「I’m Welsh.」のような、国名にまつわる言い方です。(人にもよります。)
それぞれ異なった長い歴史と文化があり、都市や建物、自然などの景観にも各々特色があるので、国内旅行として英国を東西南北に移動する旅は、イギリス人にも大変人気があります。
イギリスの国土は約22万平方キロメートルで、日本の本州(約23万平方キロメートル)ほどの広さがあります。また、今では4つの国が連合王国として統治されていますが、もともとは各国に君主がいた時代があり、異なった言語がありました。日本国内でも多くの方言や話し方の違いが存在しているように、歴史的に話されてきた言語の影響を受けて、現在でも「イギリス英語」には各土地ごとに違いや特徴があります。
エリアによるアクセント(訛り)の違い
イギリス英語には、たくさんのアクセントが存在します。上記のエリアマップはほんの一例で、実際には(方言も含めると)40アクセントほどあると言われています。
この中のいくつかを動画と合わせてご紹介します。
スコットランドアクセント
ゲール語の影響を受けているアクセントです。特徴の一例として、母音が引き延ばされたような発音になったり、Rの発音が巻かれた音になります。個人的には、ギュッとつぶされたように早く発音しているように聞こえたり、意外なところでイントネーションのアップダウンがあるように聞こえます。慣れるまでは難解ですが、慣れてくるとなんとも人情味のある発音が心地良くなります。
スカウスアクセント
リバプール(ビートルズでも有名な場所)などで話されているアクセントです。こちらもわかりやすいクセがあり、アがオ、バッならボッに近いなど、音に特徴があります。また、アクセントだけでなく、方言として言い方が変わる語彙も多くあります。一度聞くとそのユニークさに魅力を感じるかもしれませんね。
コックニーアクセント
東ロンドンで生まれ育った人がもともとは使っていたアクセントで、労働者階級の人が使うアクセントとも呼ばれています。アクセントの一例として、イギリス英語はTの音がハッキリしていることが多いのですが、コックニーアクセントでは、TやHの音が落ちて聞こえます。Whoフーが Oohウー、WaterウォーターがWa’erウォッアという感じです。
ウェルシュアクセント
歌うように話すと例えられることが多いウェールズのアクセントです。流れるように高音~低音が移ります。また音の変化り、例えば”going” の発音は “go-o-en”になります。ちなみに、ウェルシュアクセントとは、英語をウェールズ地方の訛りで話すことであり、ウェールズ語とは異なります。
下の写真はウェールズ旅行で撮影したものです。ウェールズの道路標識には英語とウェールズ語両方での表記があります。ウェールズでは公用語の英語の他に、現在でもウェールズ語が使われています。(とはいえ、ウェールズ語を話せる人の数は、少なくなっているそうです。)
RPアクセント
上記のアクセントに加えて、RPアクセントと呼ばれるものもあります。RPとはReceived Pronunciationの略で、King’s/Queen’sEnglishとも呼ばれ、王室や上流階級が話す英語、またイギリス南部のアクセントとされてきました。BBCで話される英語と言われることもあります。特にニュースキャスターはRPを話すことが多いようです。(近年ではBBCの放送内容・番組によってはさまざまなアクセントの英語が使われています。)
会話に影響は?
ここで一つ「方言とアクセント」の違いについて明記しておきたいと思います。方言は英語でダイアレクト(dialect)と言い、アクセント(accent)は訛りのことです。方言は言葉自体が変わるものであり、訛りは発音のイントネーションの違いを言います。
イギリス南部で生活していると、あまり方言を聞くことは無いように感じます。しかしながら、調べてみると、北部ではもっと方言が使われていて、言い回しや単語が変わるものが多くあるようです。北部出身の方が、ロンドンの大学に行って友達と話をしたときに方言を使って聞き返され、「あ!これ方言なんだ…。」と気づいたという話をしていました。日本でもありそうなエピソードですね。
とはいえ、普通に会話をしている分には、方言はそこまで気になりません。(日本の方言ほど語彙数や文末に変化がないため)それよりもっと英語学習者を悩ませるのが、アクセントです。
各地域のアクセントに慣れないうちは、頭の中は「?マーク」の嵐になってしまうほどです。イギリス英語を学ぶ教材でリスニングに慣れていたと思っても、標準発音のリスニング教材とかなり違う発音や変化に戸惑う方が多いです。私の体験談ですが、スコットランド出身の方と話をしていて、文章はわかったものの、その中の「rice(米)」という1単語がどうしても聞きとれず、最後に綴りを聞いて「あぁ!」と納得したことがありました。
こういう出来事は、私のように英語を第二言語として話す人だけが直面する問題というわけではなく、どうやらイギリス人同士でも起きるようです。知人(英語ネイティブ)の話では「ヨークシャーに行ったときに、ご高齢の方と話して、そのアクセントの強さにほとんど理解することができなかった!母国語は同じ英語なのに!」と苦笑いしていました。
おそらく、日本の田舎でおじいちゃんやおばあちゃん世代と話したときに、慣れていない訛りに戸惑うのと似たような感覚なのかもしれません。
これに加えて、たくさんの移民が住むイギリスでは、母国語が影響しているアクセントのある英語で話す方が大変多いです。インド系、中国語系、イタリア語系のアクセントなどなど…、伝統的なイギリス英語アクセントとは違いますが、現代のイギリスで生活するには、こういったアクセントの聞き取りにも慣れていく必要があります。
エリア別アクセントを聞いてみよう
最後に、イギリス国内の種類豊富なアクセントが、実際にはどのように聞こえるのか、ぜひこちらの動画で聞き比べてみてください。
イメージしていた良くあるイギリス英語と同じでしょうか?それとも違うでしょうか?
お子さまと一緒に、楽しみながらぜひイギリスや英語への興味を深めてみてくださいね。
■いしこがわ理恵さんのイギリス漫画レポートの記事はこちら↓↓↓