2018年03月05日 公開

オーストラリアの学校は教科書を使わない?日本の学校との違い

日本の学校教育に欠かせない教材といえば「教科書」。学習指導要領に合わせてつくられ、文科省の検定に合格した教科書を元に、授業が行われます。しかし筆者が住むオーストラリアの学校では、教科書は使いません。ではどんな教材を使って授業を行っているのでしょうか。

日本の学校教育に欠かせない教材といえば「教科書」。学習指導要領に合わせてつくられ、文科省の検定に合格した教科書を元に、授業が行われます。しかし筆者が住むオーストラリアの学校では、教科書は使いません。ではどんな教材を使って授業を行っているのでしょうか。

「教科書」も国によって違いがある?

Girl reading a notebook · Free Stock Photo (82465)

学校の授業に欠かせないものといえば、「教科書」。

日本の学校(小・中・高等学校等)で使われる教科書は、出版社が独自に作成し、文部科学大臣が「教科書として適切かどうか」を出版前に審査します。この「教科書検定」に合格したものだけが、学校で「教科書」として使われます。

日本国内どの学校でも「学習指導要領に沿った、一定の水準の教育を保証するため」や、「適切で中立な教育内容を確保するため」に、このような検定が行われます。学校の授業は、この教科書の内容に沿って、進められます。

日本の教育にとってなくてはならない「教科書」ですが、国が変わればその様子もガラリと変わるもの。

この記事では、「筆者の住むオーストラリアの学校では、どんな教科書が使われているか?」を紹介します。

オーストラリアの学校では教科書を使わない!

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先生が用意したプリントに、生徒が自分の言葉で書き込んでいきます。
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オーストラリアの学校が日本と違う点。最も大きな違いは、オーストラリアの学校では「教科書がない」ということです。

つまり日本のように、「この学年ではこの教科書を使う」というような、国によって決められたテキストがありません。

では授業はどのようにして進められるのか?教材は何が使われるのか?というと、先生が授業の内容を構成し、それに合わせた教材としてプリントを用意します。

オーストラリアの小学校では、一つの学習テーマに対し、「読む」だけでなく、「書く」「作る」「図を描く」「聞く」「話す」などの活動を多角的に組み合わせ、理解を深めていく授業スタイルです。生徒は自分の意見やアイデアを、文や絵、作品などさまざまな形で表現することが求められます。

先生はそれらの活動に必要なワークシートを、その都度用意します。

「読む」に使われる教材は、絵本や子ども向けの読本、テーマに応じた文章のコピーなど、学習テーマに合わせたものが用意されます。

また、算数の問題集などは、学年の学習内容に合わせた本を、学校が指定し一括で購入することもあります。

教科書の代わりにYouTube

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YouTube上にある、算数や英語の学習をテーマにした子ども向けの歌。
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また、YouTubeなどのネット上のコンテンツも、先生が教材として有益だと思えば、どんどん授業に取り入れられています。

小学校低学年では、算数で「図形の種類」を覚えたり、スキップカウント(数字を飛ばして数える)を覚えたりするのですが、それらを覚えるための「子ども向けの算数の歌」が、YouTubeにはたくさんアップされています。
そうした動画も、先生が選んでクラスで視聴するなど、教材として利用されています。

また、「ネット上にある子ども向け動画を視聴し、受けたインスピレーションを元に工作を行う」といった、独自のストーリーを創作する授業もありました。

ネット上の素材も、先生の判断で積極的に活用されています。

教科書がなくて教育ができるのか?

Painting and Drawing Tools Set · Free Stock Photo (82474)

「教科書がない」というと、日本の読者の方はピンとこないかもしれません。

オーストラリアでは、日本の学習指導要領のように、「国が定める教育内容」はないのでしょうか?

オーストラリアでの、国内に住むすべての子どもたちが受けるべき教育のカリキュラムと、達成度の評価方法は、連邦政府および各州の専門機関によって決められています。各学年で、子どもが習得すべき内容と、達成度をどう評価するか、が明確に決められています。

しかしその学習を行うために「どんな教材を使ってどう授業を進めるか」は、先生にゆだねられています。それは「決められた内容を覚える」ことより、「理屈を理解し、それを元に自分の考えを表現する」ことが、こちらの教育ではより重視されているからではないか、と筆者は感じています。

担当する先生によって、授業内容に差がついてしまうのでは?と心配する方もいるかもしれませんね。しかし、学年に応じた到達目標と評価方法は、客観的なガイドラインによって決められています。「それを達成するためにどんな題材を用いるか」という工夫に、先生自身のプロフェッショナルとしてのスキルや経験が反映されるのでしょう。

こちらの授業は、生徒にとっても先生にとっても、楽しくやりがいのある内容を可能にしているのではないでしょうか。

最後に

Close-up of Woman Working · Free Stock Photo (82477)

筆者は4年半前に、西オーストラリア・パースに家族で移住しました。子どもがこちらの学校に通いはじめて、日本の学校との違いに何から何まで戸惑いましたが、特に驚いたのが、この「教科書がない」ことでした。

そのため「子どもが今、学校でどんな勉強をしているか」がわからず、最初は不安に思いました。いつも学期の終わりに、わが子が持ち帰るプリントや作品を見て、「あ、こういうことを学んだのだな」と知るのです。

しかし、最初はただ遊んでいるようにも見えたオーストラリアの授業が、実はきちんとしたカリキュラムと客観的な指標に基づいて行われていることを理解するようになり、今は先生をとても信頼しています。

こちらの授業を目の当たりにし、「国の決めた教科書の内容を学ぶ」ことだけが「学校教育」ではないのだ、と実感しています。

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この記事のライター