自尊心は大切だとはよくいわれますが、具体的にはどうやって育てればいいのか分からない方が多いかと思います。筆者が住むアルゼンチンは、子どもの自尊心を育てるのが上手な国。今回は現地で子育てに励む筆者が、アルゼンチン流「自尊心の育て方」を紹介したいと思います。
成功に必要なのはやり抜く力! グリットと自尊心の関係
大人も同じですが、特に子どもは褒められるとやる気がみなぎって、さらなる努力や行動、そして挑戦へとつながります。自尊心のある子どもは新たなことに積極的に挑戦し、失敗しても諦めずに挑戦を繰り返すことができるのです。
心理学者のアンジェラ・リー・ダックワース氏が行った研究によると、成功には才能でも、努力でもなく、グリットと呼ばれるやり抜く力が必要だということが判明しています。グリットを伸ばす方法はまだ明らかになっていませんが、さまざまなことに挑戦して失敗しても、ひたすらトライすることが大切だとアンジェラ氏は述べています。
自尊心の低い子どもは諦め癖がついたり、チャレンジすることを恐れたりします。つまり、グリットを育むことが難しいのです。グリットを育てるためにも、子どもの自尊心を育ててあげなければいけません。
では、ここからは、アルゼンチン流の自尊心の育て方を紹介しましょう。
子どもへの賛辞は全力で受け止めるのがアルゼンチン流
これは筆者が日本に一時帰国した際に、よく見かけた光景です。謙遜は大切な能力の一つですが、全てのことに対してする必要はありません。
次の場面を想像してみてください。毎日掃除・洗濯・料理に育児と一生懸命頑張った結果、旦那様の上司や家族から褒め言葉をもらったとしましょう。でも、旦那様が「いやいや、まだまだ足りないところだらけですよ」と返したらどう感じますか?
正直なところ、がっかりしたり、イラッときませんか? 大人は謙遜の文化だからと理解できるかもしれませんが、子どもは理解できない可能性もあります。
アルゼンチンでは、子どもへの賛辞を親が謙遜するということは絶対にありません。「カワイイね」や「頭がいいね」と言われると、「ありがとう!世界一愛してるの」や「最近はこんなこともできるようになったんだよ」と褒め言葉を受け止めるだけではなく、褒め言葉に褒め言葉を重ねることもあります。
子どもに対する褒め言葉は謙遜しないで、受け止めてあげるのです。受け止めるだけでもOKですが、「いつも~頑張ってるもんね」等の追加の褒めを、親であるあなたが子どもへと送るのが、アルゼンチン流です。
子どもを褒める達人のアルゼンチン人
アルゼンチン嫁や友人夫婦を見ていて思う、子どもの褒め方のポイントは二つ。一つ目は、子どもが苦手な活動は少し目をつぶって、できることに注目することです。できることを増やすのも大事ですが、今できることを上達させるのも重要です。
できないことばかりに目を向けると、無意識のうちに他の子どもと比較してしまい、不安や焦りに襲われて、子どもを褒めるどころではなくなります。子どもの自尊心を育てるためには、まず親が余裕を持つことが必要です。
心配する気持ちは分かりますが、子どもの成長には個人差があります。そのことをアルゼンチン人はよく理解し、のんびりと楽しく子育てに励んでいます。
二つ目のポイントは、子どものレベルに合った課題や問題を与えるということ。例えば、まだ言葉も十分に出てこない子どもに、トイレトレーニングをさせるのは難しいかもしれません。
無理なことをやらせて、子どもに苛立ちを表すのはよくありません。子どもが準備できていないのに、「うちの子は違うから」とレベルに合っていないことをさせるのは、親のエゴではないでしょうか。
一つ注意したいのが、過剰に褒めるのは良くないということです。過度に褒められた子どもは、困難と直面したとき、すぐに諦める傾向にあります。マンガでよく見られる「天才」と言われ続けた少年が、壁に直面したときに大きな挫折を味わってしまうのと同じです。
子どもに対する褒め言葉は謙遜しない、子どもの上手を伸ばす、レベルに合った活動をさせてあげる、過度に褒めすぎない。これらのポイントをアルゼンチン人は上手に意識しています。
子どもを褒めてあげることで親子の絆が深まる!
赤ちゃんが歩きはじめたり、しゃべりはじめたりした時は、感動しましたよね。その感動が子どもが成長にするにつれて薄れるのは、残念なことです。お子さまが大きな方も小さな方も、お子さまの成長には、感動して心から褒めてあげてください。それが、自尊心を育む最大の秘訣かもしれません。
親ばかで何が悪い……!?
「自慢ばかりして嫌な奴」と思われたらそれまでですが、最愛の子どもを自慢しないで何を自慢するのでしょうか?自分の子どもの自慢をしつつ、他の子どもも褒めてあげましょう。あなたの子どもは、世界で一番の存在なのですから。