2017年10月26日 公開

【第5回】形と図形:「にてる」けどなんか「ちがう」かたち

小学校に上がる前に、数学的な思考力を育て、発達させるため、親子で楽しく取り組めるアイディアやポイントを伝える連載の5回目です。今回は「区切る」「囲む」「描く」という動きを通して、「~のような形」から丸、三角、四角へ。そして「図形」を認識するまでを一緒に体感していきましょう。

小学校に上がる前に、数学的な思考力を育て、発達させるため、親子で楽しく取り組めるアイディアやポイントを伝える連載の5回目です。今回は「区切る」「囲む」「描く」という動きを通して、「~のような形」から丸、三角、四角へ。そして「図形」を認識するまでを一緒に体感していきましょう。

6歳までに身につける!数学的思考力のつけ方【全8回連載】

周囲の大人がキャッチしたい、子どもの【動き】とフィードバック、その後アプローチの仕方を毎回3ステップでお伝えします。子どもが物事の共通点である【同じ】を発見し、その【理由】探しができることをねらいとしています。

5回目は子どもの「形と図形」の【同じ】に気づく回です。

シリーズ第5回: 形と図形の意味に気づく!

まず、今回の全体テーマは、形と図形とは何かという問いです。

似ているけれど、何か違う形の違いに気づき、区切る、囲む、描くという【動き】を通して、丸、三角、四角、そして「図形」の意味を味わっていきます。

区切る:空間を区切ると図形ができます。直線を区切ると線分ができます。2次元を区切ると図形ができます。2次元を3次元で区切ると立体ができます。

囲む:この時、線が閉じているか閉じていないかを、幼いうちに意識して欲しいのです。

描く:描くこと自体が、「区切る」と「囲む」という動きと密接です。認識しやすいよう、発色が良く、太い線が描けるペンやクレヨンを持たせてあげましょう。

また、「描く」と「区切る」で、「囲む」意味も見えてくるのです。

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注目する動きと数学的意図

●取り上げる【動き】:「くぎる」「かこむ」「描く」
●数学的体験内容:「形」から「図形」、「基本的な図形」「空間」

スペース&シェイプ【空間と図形】

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belander / Shutterstock.com

空間を区切ると図形ができます。

ですから、いつも図形の背景にある空間を意識し、「空間を区切ったのが形だ」ということを未就学児のうちによく味わっておいてほしいのです。

空間の味わい、そこにできる図形の味わいの二つを意識しましょう。

また、数学はこれを次元で考えます。

1次元である直線を区切ると「線分」という図形ができます。
2次元の広がりを1次元の直線で区切ると「三角形」や「四角形」ができます。
2次元の面で、3次元を区切ると立体図形ができます。

「図形って中身ですか?線ですか?」という質問をよくされます。でもそれは次元によって変わること。そして全体が見えているはずなのに、例えば茶筒を見たときに、円柱としか見ていない人が多いのです。でも3次元の空間にあるものを円と筒で区切ったからこの形ができるのです。

だからいつも周りの空間を特に意識してほしいのです。

STEP 1:空間と一緒に意識する「~のようなかたち」

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2〜4歳の頃くらいからでしょうか。ものには必ず名前がありますから、身の周りのものを呼びはじめた時、わからないものは何かに例えますよね。子どもが丸いものをを見て、「ボールのようなかたちだね」と例えて呼ぶことがないでしょうか。そこで「ボールは転がるよね」なんて付け加えたら最高です。なぜなら空間も一緒に意識していることがわかるからです。

子どもたちが「ママ!みて!ふねみたいなかたちがあった!」「おうちみたいなかたち、みつけた!」という発見をしてくれた時には、「海(空間)の中にヨットのような形(図形)の岩があったのね」、「広〜いお庭(空間)の中におうちのような形(図形)の葉っぱがあったんだね」など、親が「空間」も意識して捉えてあげると良いかもしれません。

絵本やテレビやタブレットに出てくる形の表現は二次元のものです。私たちは三次元に生きているので、特に未就学児や小学校1、2年生のうちには、ものそのものを触って動かしたり、転がしたりしている実体験を増やさないと、この「空間」を感じにくくなってしまうような気がします。

シュタイナー教育では「フォルメン線描」という、曲線や直線から成り立つ、幾何学的な図形を、床の上を歩きながら描いたり、空中に描いたりノートに描いたりするという過程があります。これはまさにこのステップです。いっぱい線を描いている内に空間を区切ることが、形を作ることだと感じ取っていけるのですね。

STEP 2:まる、さんかく、しかくのかたち

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小学1年生では、このSTEP1とSTEP2の往復を繰り返しながら学習します。「~のような」から、一歩抽象化させた段階へ進むのです。

ではなぜ、丸、三角、四角かというと、それはすべての形の出発点だからです。丸は曲線のスタートで、二角形は存在しないので三角からということなります。そして、三角形は図形の基礎です。

未就学児のうちに、「三角のもの、四角のものを集めてみよう」など、部屋の中や外で、丸、三角、四角のものを探すゲームをしてみるのもいいですね。

「この三角と三角は何か違うね」「こっちの三角の方がとんがっているね!」や「大きな丸と小さな丸があるね」などと、図形や形の中でも、似ているとか同じもの、またその違いも発見してみましょう。

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STEP3:「形」から「図形」へ

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図形を図形としてちゃんと学ぶのは小学2年生からですが、未就学児の時にも味わっておいてほしいことがあります。

まず「三角」と「三角形」、つまり形と図形の違いです。

三つの直線で囲まれている形が三角形です。つまり、三角形というより「三辺形」なのです。空間が三本の直線で切り取られできた形です。低年齢児の幾何学では、角度は難しすぎるので、あまり重視されません。

まずはSTEP2の発展として、円、三角形、四角形から出発し、そこで子どもの方から「ママ、三角形と四角形があるなら五角形、六角形もあるんじゃないの?」なんて発見が子どもの方から出てきたら最高ですね。いわゆるN角形への「発展」です。

さらに、「ママ、曲がっている形とまっすぐな線が合体した形があるよ、アイスクリームのような形」などと発展すると理想的です。

最後に

STEP1で目玉焼きを「めだまのようなかたち」と気づき、STEP2で「丸」を発見、STEP3でそれが「円形」であることを認識する、という流れでした。

次回の第6回目は、子どもが 「どうしてきれいなのかな」という【理由】を探る回です。「きれい」にかくれているひみつの「きまり」に気づいていく過程、「かっこいい」と「きれい」のわけを知る、追います。「しきつめる」「形を変える」という動木から、「変換」「空間観念」「対応」「フラクタル」にも触れます。

(取材・文/志田実恵)

連載「6歳までに身につける数学的思考力」の一覧はこちら

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