2021年03月16日 公開

「子育てベスト100」加藤紀子さんに聞く!ごっこ遊びで伸びる7つの力

子どもが大好きな「ごっこ遊び」。この記事では、Amazon総合ランキング1位の子育て専門書「子育てベスト100──『最先端の新常識×子どもに一番大事なこと』」の著者であり、教育系ジャーナリストの加藤紀子さんに、「ごっこ遊びが子どものどのような力を伸ばしてくれるのか」をお聞きします。

ごっこ遊びのメリット

「子育てベスト100──『最先端の新常識×子どもに一番大事なこと』」という本をご存知ですか?2020年6月に発売されて以来、16万部を突破し、Amazon総合ランキングでも1位を獲得している子育ての専門書です。

私がこの本に出会ったきっかけは、4歳と2歳の息子がおままごとに没頭しているのを見て、「遊び環境をもっと整えたほうがよいのかな?」と感じたことでした。本には、100の遊びや学習について「現時点で一番よいとされる方法」が書かれており、目からウロコ。なかでも「ごっこ遊び」の項目は、「今すぐ実践してみたい」と思えるものばかりでした。

加藤さんが本をまとめられたのは、現代にあふれ返る子育て情報を、誰かが整理する必要性を感じたからだそうです。今回は著者の加藤さんに、ごっこ遊びが子どもの発達にどう良いのかや、遊び方のポイントを伺いました。

加藤紀子さん
写真撮影:干川修
加藤紀子(かとうのりこ)さん
1996年に東京大学経済学部を卒業し、大手通信会社への就職を経て渡米。帰国後は中学受験、子どものメンタル、子どもの英語教育、海外大学進学、国際バカロレアなど、教育分野を中心にさまざまなメディアで取材、執筆を続けている教育系ジャーナリスト。一男一女の子どもを育てる現役の母親でもある。

幼児期のごっこ遊びは原体験にもなる

お店屋さんごっこやおままごと、お医者さんごっこ、ヒーローごっこ‥‥。これらの「なりきり遊び」を総称したものが、「ごっこ遊び」です。子どもは、ごっこ遊びが大好きですよね。

ごっこ遊びの良さは、子どもが主体的に遊ぶため、さまざまな力が育まれることです。誰かの指示ではなく、自分で真似してみたいと感じて、実際に試してみる。そんなごっこ遊び経験の積み重ねが、大人になっても生きてくるそうです

年齢が上がるにつれて、勉強などのタスクが増えていきます。だからこそ「幼児期に、思いっきり没頭させてあげることが大切」だと、加藤さんは言います。

一見、子どもが自由に遊んでいるだけのようにみえるごっこ遊び。子どもの発達に、どのようなメリットがあるのでしょうか?

ごっこ遊びで伸びる「7つの力」

発達心理学の権威ともいわれている、レフ・ヴィゴツキーという学者がいます。彼いわく、 『ごっこ遊びは認知・情緒・社会的発達をうながす高度な遊び』。ごっこ遊びで伸びる力は、主に「主体性」「コミュニケーション力」「言語力」「創造力」「集中力」「記憶力」「計画性」の7つです。私自身、息子と娘が小さなころは気にも留めなかったのですが、じつはごっこ遊びで、こんなにも多くの力が育まれていたんですね

ごっこ遊びで伸びる可能性のある力は、なんと7つもあるそうです。それぞれ、どのような理由で育まれるのかをご紹介します。

主体性

ごっこ遊びのメリット

主体性とは、子どもが自ら考えて行動する力のことです。

子どもが自分のイメージや想いをふくらませて遊ぶため、主体性が育ちます。たとえば、息子と娘は幼いころ、ぬいぐるみで学校ごっこをするのが好きでした。おじいちゃんを生徒役に見立ていたのですが、おじいちゃんの演技が面白かったようで、何度も繰り返していました

「やること」はその子によって異なりますが、それぞれが自分自身で考えて、導き出した遊び方。楽しさから、どんどんアイディアも浮かんできます。その連鎖が、子どもの主体性を育みます。

コミュニケーション力/言語力

続いては、コミュニケーション力と言語力です。たとえば、ヒーローごっこや戦いごっこでは、かならず悪者役になる人がいると思います。なかには、「お兄ちゃん(お姉ちゃん)に悪者役ばかりさせられる」という弟(妹)さんもいるかもしれません。

子ども自身がそういう立場になったとき、他人の気持ちや、思い通りにいかない悔しさを学びます」と加藤さんは仰います。

さらにごっこ遊びは、必ず相手が存在するので、言葉のやり取りから言語力が身につくメリットもあります。

「ヴァンダービルト大学の言語学者、デヴィッド・ディッキンソン教授によると、ごっこ遊びをより多くした子どものほうが1年後の言語力が高いこともわかっています」
引用元:子育てベスト100――「最先端の新常識×子どもに一番大事なこと」が1冊で全部丸わかり(ダイヤモンド社)

創造力/集中力

「ふりをする」「見立てる」「なりきる」という経験から、創造力が育つそうです。また、遊びに没頭することで伸びる力もあるといいます。「現実から一歩踏み出して、自分でつくり上げた想像の世界に没入するため、集中力も育まれます

子どもがポケモンのキャラクターや戦隊ヒーローにしか興味をもたない場合でも、とことんハマらせます。ひとつのことに夢中になる経験は、好奇心を追求する力の源泉になります。さらに、戦隊ヒーローやキャラクターには基になっているモチーフがある場合が多いので、宇宙や星座、恐竜などへの興味につなげていくこともできると、瀧教授(東北大学の脳科学者、瀧靖之教授)はいっています。
引用元:子育てベスト100――「最先端の新常識×子どもに一番大事なこと」が1冊で全部丸わかり(ダイヤモンド社)

記憶力/計画性

そして、記憶力と計画性です。ごっこ遊びは、日常生活の再現。パパやママの行動を記憶して、「ちょっと真似してみようかな?」と感じることから始まります。記憶力が伸びるとともに、子どもなりに段取りを考えて遊ぶため、計画性も身につきます。

ごっこ遊びでは、子どもそれぞれが自分の経験を再現します。年齢が上がり、お友達と一緒にごっこ遊びをするようになると、お友達の遊び方を通じて『ほかの家庭はこんなふうなんだ』ということを知り、興味や好奇心が促されるんです

こんなにも多くの力を育んでくれるごっこ遊び。ママパパが気になるのは、「これらの力を伸ばすために、おすすめの遊び方はあるのか」という部分ではないでしょうか。

ごっこ遊びで子供の力を伸ばすポイント

加藤さんが教えてくださったのは、あくまでも主役は子どもだという考え方です。

私の本に『カーリング育児』という言葉が出てくるのですが、大人がゴシゴシと前をこするように先回りすると、子どもの『自分でやってみたい』と思う力が薄れてしまいます

子どもの能力は、遊びに集中している時間にこそ、ぐんぐん伸びていきます。子どもの力を伸ばそうと、ママパパが先回りしないこと。これが、一番のポイントなのだそうです

過干渉な子育てでは、子どもが困ったり失敗したりしないよう、親が先回りして障害物をすべて取り除こうとします。親が子どものまわりをいつも ブンブンと巡回しているので「 ヘリコプターペアレント」、あるいは「カーリング育児」などとも表現されます。
引用元:子育てベスト100――「最先端の新常識×子どもに一番大事なこと」が1冊で全部丸わかり(ダイヤモンド社)

そのうえで、ママパパがごっこ遊びに関わるスタンスについて、アドバイスをいただきました。

遊び環境はシンプルでOK!

おままごとの道具

わが子がさまざまな道具を駆使して遊んでいると、「きちんとしたキッチンセットを買ってあげたほうがよいのかしら?」「グッズを増やしたほうがよいのかしら?」と考えるママパパも、多いかもしれません。しかし、必ずしもその必要はないといいます。

フルラインナップを揃えなくても大丈夫です。むしろ、遊び環境はシンプルなほうがおすすめです。研究では『不完全な環境のほうが、想像力の伸びしろがある』と言われているんですよ。使わなくなったお鍋や、離乳食のプラスチックのお皿、壊れたカメラやおやつの空き箱、ヨーグルトの空きカップなど、そういうもののほうが、子どもの『自分で作ってみたい!』という創造意欲をかき立てます。おままごとであれば、外でどんぐりを拾ったり、草花を摘んで材料に見立てるのもよいと思います

大人の都合で中断せざるを得ないときの声掛け

スケジュールや家事の都合で、ごっこ遊びを中断せざるを得ないときもありますよね。一方で、そんなときに「ごはんできたよ~!」などと声をかけるのはもったいないと、加藤さんは仰います。

子どもがごっこ遊びに没頭している時間は、いろいろな力が育まれています。どうしても中断せざるを得ないときは、なるべく様子を観察して、キリのよいところで声を掛けます。たとえば『くまちゃんがお昼寝の時間だから、お皿だけ先に片付けようか』や、『ちょっと疲れたと言っているから、休ませてあげようか』のように、ぬいぐるみの力を借りてお開きにしましょう。子どもも、そういう遊び方をしてくれる大人のほうが、きっと好きだと思うんです

この考え方は、本にも詳しく書かれています。私もさっそく実践してみたところ、子どもたちが格段にスムーズに動いてくれました。

親が家事などで途中で抜けるときには「ごはんつくらなきゃいけないからここまでね」とは言わず、「ちょっと出かけてくるけど、( ぬいぐるみの)お友だちと仲良くお料理をつくっててね」といった表現で子どもの世界観 を壊さないようにすると、子どもは集中が途切れずに楽しく遊べます。
引用元:子育てベスト100――「最先端の新常識×子どもに一番大事なこと」が1冊で全部丸わかり(ダイヤモンド社)

お金(現金)の要素を取り入れよう

最近は、おもちゃのお店屋さんごっこにも、クレジットカードが付いてくるのが一般的です。「時代の変化に対応していてすごいな」と感じますが、加藤さんからは意外な返答がありました。

おままごとには、おもちゃでも本物でもよいので、『お金(現金)』を使うのがおすすめです。10円玉が10枚で100円、5円玉が20枚で100円…といった計算やおつりのやり取りから、『数の感覚』が身につきます。幼児期に大切なのは、数字の大小ではなく、スケール感です。そういった意味では、子どもと一緒にお料理するのもよいと思います。『お醤油ってどのくらい入れるとしょっぱいのかな?』や『100mlって意外と少ないんだ…』と体感することで、その感覚が身につきます

幼児期にこのような遊びを経験しておくと、小学校へ入学後、算数への理解度が高まるそうです。私の息子は、おままごとでのお会計にキャッシュレス決済を使っているため、ぜひ現金も置いてあげようと感じました。

子供にとって「遊び」はエルマーの冒険

エルマーの冒険

ごっこ遊びのほか、カードゲームやボードゲームなどのアナログゲーム、工作やお絵描きなど、さまざまな遊びのメソッドが書かれている「子育てベスト100」。最後に加藤さんに、「子どもが幼少期に夢中で好きな遊びをすることの意義」を伺いました。

子どもは遊んでいるとき、頭の中で『エルマーの冒険』をしているんでしょうね。家の中でリュックにいろいろなものを詰め込んで、背負って。マサチューセッツ工科大学のミッチェル・レズニック博士の言葉に、『lifelong kindergarden(生涯幼稚園)』というものがあります。彼は、楽しみながら何かをつくり出せる環境こそが、子どもたちにとって最善だといいます。たとえばコロナのように、少し前までは想像もしなかったような不測の事態が、きっとまた起こると思います。そのときに、想像力を発揮して課題解決の方法を見つけ出したり、社会をより良くするために行動する。そこに、幼少期の遊びで培った力がきっと生きてくるはずです

今回の取材で、自分のなかに「子どもが一人遊びをしているときはそっとする」というスタンスが加わり、心にぐっと余裕ができました。また加藤さんのお話から、子どもの遊びには意味があることがよくわかりました。遊びから得られる力を、どんどん伸ばすサポートをしてあげられるとよいですね。

 

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WRITER

由希奈 由希奈 札幌市在住のフリーライター。4歳と2歳の男の子を育てています。子どもの教育や働くママについてのインタビュー記事やコラムを発信中。大学時代にイギリスへ留学経験あり。海外の教育事情に興味があります。