世界の子どもたちに愛される「おさるのジョージ」。その原作となる絵本を世に送り出した著者のH.A.レイ&マーガレット夫妻の作品には、「ひとまねこざる」の他にも子どもの心をくすぐる話がたくさんあります。ちょっとハラハラして、最後には温かい気持ちになれるストーリーは、幼児や小学生の読み聞かせにはぴったりです。
「Curious George」出版までの道のり
著者:H. A. Rey (著)、Margret Rey (著)
出版社:HMH Books for Young Readers
第二次世界大戦中にフランスからアメリカへ
著者:Louise Borden(著)、Allan Drummond(イラスト)
出版社:HMH Books for Young Readers
ドイツ生まれのレイ夫妻ですが、ブラジルで出会い、結婚し、その後新婚旅行で訪れたパリが気に行って新居を構えました。でも、第二次世界大戦の戦火に追われる形、フランスからアメリカへ移住することに。アメリカへ行くためには、ポルトガルから船に乗って、ブラジルへ向かわなくてはいけませんでした。
二人が自作の自転車でパリを出発したのは、ドイツ軍がパリを制圧する数日前。それから数日間、毎日何十kmも自転車をこぎ、スペインへ向かう列車の駅へ到着しました。戦争中の長旅には、現在では想像することができないさまざまな困難がありました。その後、列車を乗り継ぎ、無事にブラジルのリオデジャネイロ行きの船に乗ることができたのです。
おさるのジョージ(ひとまねこざる)の誕生!
ハンス氏が絵を描き、マーガレット氏がストーリーを書く。子どものころから、動物が大好きだった二人の作品には、愛らしい生き物がたくさん登場します。それでは代表作を紹介しましょう。
オリジナルの英語版の読み聞かせもオススメです。
ひとまねこざるときいろいぼうし
著者:H. A. レイ(文・絵)、光吉 夏弥(訳)
出版社:岩波書店
じょーじは、好奇心が旺盛。人や動物のまねをすぐにしたくなってしまいます。最初は、おじさんに言われたことを守ろうとするじょーじ。けれども、やっぱり「やってみたい!」が上回ってしまいます。多くの子どもの思いと同じだからこそ、この作品は世代を超えて親しまれているのではないでしょうか。
ひとまねこざる
著者:H. A. レイ(文・絵)、光吉 夏弥(訳)
出版社:岩波書店
じょーじは、たくさん迷惑をかけてしまいます。けれども、最後にはその好奇心が周りの人たちの心を打つことになるのです。この作品を息子に読み聞かせしていると、彼の「やりたい」をもう少し尊重しようと思わせてくれます。
どうながのプレッツェル
著者:マーグレット・レイ(文)H・A・レイ(絵) 渡辺 茂男(訳)
出版社:福音館書店
「あきらめないで思いを伝える大切さ」や「人(犬)は見た目じゃない」ことなど、年齢や性別などによってさまざまな感じ方のある奥の深い絵本です。もちろん、幼い子は純粋にかわいい絵を楽しむことができます。
ガブリエリザちゃん
著者:H. A. レイ(作)、今江祥智(訳)
出版社:文化出版局
この絵本を読んだ後に、親子で食虫植物を実際に見るのがオススメですよ。
「おさるのジョージ」から広がる世界
小学生になって同じ絵本を繰り返し読むことが少なくなった筆者の息子。けれども、「ひとまねこざる」や「ガブリエリザちゃん」などは「もう1回」のリクエストがあります。レイ夫妻の作品は、乳幼児期から小学生まで長い期間楽しめるものが多いのです。
長い間読み継がれているレイ夫妻の作品。ぜひ、親子でその世界を体験してみてください。
さらにH・A・レイとマーガレット・レイ夫妻についてのドキュメンタリー映画『モンキー・ビジネス:ザ・キュリオス・アドベンチャーズ・オブ・ジョージズ・クリエイター(原題) / Monkey Business : The Curious Adventures of George’s Creators』が、日本でも映画館で配給予定。こちらは、日本人監督・山崎エマさんが、300箱もの段ボールに入ったアーカイブ資料の使用許可を得て、クラウドファンディングで製作した作品で、話題です。こちらの公開も楽しみですね!