2017年6月3日 公開

スペインでは抜けた乳歯がプレゼントに!?ねずみのペレスの物語

日本では乳歯が抜けると「上の歯なら縁の下に、下の歯なら屋根に投げる」という習慣がありましたね。筆者が子どものときもそうした記憶があります。ここスペインでは、抜けた乳歯は毎回もれなくコインかプレゼントに変わります。それはなぜなのでしょうか……?

抜けた乳歯は枕の下に入れて眠る

乳歯が抜けると、スペインの子どもたちは大喜び。大事に洗って、ティッシュにくるんだり封筒に入れたりして枕の下に入れて眠りにつきます。そうすると、朝起きた時に歯がなくなっている代わりに、「ねずみのペレス」が置いていったコインか小さなプレゼントがあるのです。

字が書ける子どもは、「親愛なるねずみのペレスへ……」と歯に手紙を添えることもあり、またペレスがコインかプレゼントと一緒に手紙を置いていくこともあります。

スペインの子どもたちにとっては、歯が抜け替わる不安より、プレゼントをもらえる楽しみが勝って嬉しい楽しみになるようです。

8歳の国王のために書かれたねずみのペレスのお話

「ねずみのペレス」は、18世紀に書かれたフランスのお話が由来といわれていますが、これがスペインの国民的行事になったのは19世紀の終わりのこと。

当時のスペイン国王は、まだお腹の中にいる時に父王を亡くし、生まれた時から王座についていたアルフォンソ13世でした。王が8歳になる頃、イエズス会の神父だったルイス・コロマに「王の乳歯が抜けたので、何かよい物語を書いてほしい」と王宮の側近から依頼があったそうです。そこで、アルフォンソ13世こと、ブビー王を主人公にして書いたのが「ねずみのペレス」のお話でした。

ブビーというのは、摂政をつとめていた母親のマリア・クリスティーナ王太后が息子アルフォンソ13世を呼ぶときの愛称だったそうです。

それでは、そのお話の内容をお伝えします。

ねずみのペレスと小さな王様のひと晩の冒険

Photo by author (51051)

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王宮にほど近いアレナル通り8番地にあるプラスト菓子店のビスケットの空き缶に住むねずみのペレスは、子どもの乳歯が抜けるとその子が眠っている間に枕の下の歯とプレゼントを交換していきます。

ある夜、ブビー王は抜けた乳歯を枕の下に置いて眠りにつきますが、夜中に目が覚め、ペレスに出会います。ペレスから王宮の外の楽しい話を聞いてすっかり魅了されたブビー王が、魔法でねずみの姿に変えてもらい、ペレスと一緒にひと晩の冒険を楽しむことに。そして、ペレスの家に遊びに行ったり、猫のドン・ペドロにビクビクしたり……。
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現在のアレナル通り8番地の様子。
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そして、同じ夜に乳歯の抜けた男の子の家に行くと、そこはとても貧しい家。ブビー王は自分とのあまりの違いに驚き、小さな心を痛めるのでした。

翌朝目が覚めると、元の世界に戻っていたブビー王は、世には貧しい子どもがいることの理由を母親に問いかけます。そこで「世界の子どもはみんなきょうだい」であることをよく考え、「王であるあなたがみんなを幸せにしてあげないといけませんね」と諭されるのでした。

その後、ブビーはとてもいい王様になりました……めでたしめでたし。

ということで、さすがは神父様が書かれただけある、よいお話に仕上がっていますね。

子どもたちに大人気の「ねずみのペレス」博物館

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「ここにねずみのペレスが住んでいました」と説明されています。
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かつて本当にプラスト菓子店があったアレナル通り8番地の建物の中には、「ここにねずみのペレスが住んでいました」という碑が飾ってあります。そして2階には【ねずみのペレス博物館】と【ねずみのペレスショップ】まであるのです。

スペインで、このお話がどれだけ人気があるのかがうかがえますね。実は映画にもなったほか、各地の劇場でもたびたび人形劇やお芝居が上演されています。

日本語版「ねずみとおうさま」はロングセラー絵本

ねずみとおうさま (岩波の子どもの本) | コロマ神父, 土方 重巳, 石井 桃子 |本 | 通販 | Amazon (51061)

タイトル:ねずみとおうさま
著者: コロマ神父(文)土方 重巳(絵)石井 桃子(訳)
出版社:岩波書店
この物語は、日本では「ねずみとおうさま」というタイトルになって、岩波書店から絵本として出版されており、初版が1953年のロングセラーです。

ワクワクするストーリーと、心温まるお話なので、乳歯が生え替わる年頃のお子さまがいる方は「スペインという国ではこういう習慣があって、こういうお話があるのよ」と説明しながら一緒に読んでみてはいかがでしょうか。もしかすると、スペインの子どもたちのように、歯の抜け替わる不安を取り除く助けになるかもしれません。

歯が生え替わるのは、誰もが通る道ですが、不安なくその時期を過ごせるような工夫をしてあげたいものですね。
この記事は執筆時点のものですので、最新情報は公式サイト等でご確認ください。

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WRITER

田川敬子 田川敬子  2002年よりスペイン在住。小学生の西日ハーフ男児の母。日本語環境がない中、2人の間ではなんとか日本語会話を維持しているものの、問題は読み書き。こちらのサイトでは、日本とは異なるスペインの子育て事情をお届けします。