今後ますます国際化が進んでいく中、お子さまの名前をつける際に「英語圏でも通じる名前」「世界で通じる名前」にした方が、子どもの将来、何かと有利なのでしょうか?実際に「世界で通用する名前」というのは、国際交流の中でどのくらい重要なのでしょうか?オーストラリア在住の筆者の視点で考えてみました。
これからの国際化社会、「世界で通じる名前」が有利?
では、英語で発音しづらい名前のため、海外の人との交流の中で損をすることはあるでしょうか?ほかの国の人たちはどうしているのか気になる方も多そうですね。
筆者がこの4年間、英語圏である西オーストラリア・パースに、家族で暮らしてきた中で感じたことを紹介します。
英語圏の人に名前を覚えてもらえない
その理由のひとつが、「Chi-e-ko」の、「イエ」という母音のつながりが、英語ネイティブの人にはたいへん聞き取りづらい音のようなのです。英語にはない発音なのでしょう。
筆者自身がそれを理解するまで、ずいぶん時間がかかりました。最近では、「ちーこ」と名乗るようにしています。
夫は「まさひろ」という、こちらもごく平凡な日本名ですが、オーストラリアでは「Masa」と名乗っています。夫の名前は誰にでもすぐに覚えてもらえるので、ちょっとうらやましいです。
ほかの国の人たちはどうしている?
そのため、英語圏の人にとっては、相手の名前が呼びやすいかどうかは、人間関係の距離感にも影響するのかな、と思います。
また、ビジネスの場面では、名前を覚えてもらえることはとても大切です。
オーストラリアに住む、日本人以外の移民は、どんな名前を使っているのでしょうか?
筆者の周りでは、中国系の人々はほぼ100%英語名を使っています。たとえば、名字やミドルネームに中国名を名乗っていても、ファーストネームは英語名。ビジネスにも英語名を使います。
また、ヨーロッパの国で、母国語の名前が複雑すぎて、英語圏では覚えてもらえない場合、イニシャル(N.J)で名乗っています。
英語での交流をスムーズにするために、「英語の通称」を使用することは、珍しくないようです。
母国語の名前を大切にする価値観も
わが家の子どもたちは、西オーストラリアの公立学校に通っていますが、海外出身の子どもたちが多く在籍します。
入学時の書類には、子どもの「本名」と「ニックネーム(希望者)」を書く欄があり、「先生が呼ぶべき名前」を保護者が指定します。その国特有の名前でも、どんなに複雑で難しい名前でも、先生はきちんと覚えて子どもたちをその名前で呼びます。
「あなたの国の言葉では、どういう意味の名前なの?」と聞かれることもあります。
西オーストラリアの教育では、英語を学ぶとともに、「世界にはいろいろな国があり、その国の言語がある」ことも学び、【多様性】を尊重することの大切さを学びます。
その国の言葉で、親がわが子の幸せを願ってつけた名前がある。そのことを否定する必要はないのだ、と思いました。
最後に
ですが、オーストラリアに暮らして思うことは、親からもらった名前を大切にしつつ、状況に応じて考えた通称を使うことも十分可能ということです。
たとえ、英語では言いづらい名前であったとしても、お子さま自身が、後々自分の生き方に合わせて、都合よい方法を取ることができるのです。「英語で通用する名前」に過度にこだわる必要はないのでは?と筆者は思います。
言葉の響きとともに漢字でも意味を込められる【日本の名前】。素敵だと改めて感じます。わが子の幸せを願い、心をこめてつけてあげた名前は、どこで生きるとしてもお子さまの一生の宝物になるでしょう。