2018年5月4日 公開

【海外教育事情】教師の個性と専門性を活かしたカナダ小学校教育

1人の教師がほぼ全ての科目を教える日本の小学校と違い、カナダは教科によっては専門の教師が担当します。画一的な教育を行う日本と異なり、公立でも教師の個性や専門性が重視されるカナダ。日本とカナダの小学校の教師の違いや専門の教師から学ぶメリットなどを紹介します。

カナダではピアノが弾けなくても小学校の教師になれる

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ESB Professional / Shutterstock.com
筆者の息子は、カナダ・ケベック州の公立小学校(学習言語:フランス語)に通っています。息子の通う小学校では、英語、音楽、体育は専門の教師が担当しています。日本の小学校の教員免許を取得するには、勉強だけではなく運動や音楽もできなくてはいけないですよね。けれども、カナダでは、運動が苦手でも、ピアノが弾けなくても小学校の教師になれるのです。

カナダの大学の小学校の教員養成課程

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Iakov Filimonov / Shutterstock.com
日本とカナダの教師の違いを知るために、カナダの大学の初等教育教員過程について説明します。

カナダでは、幼稚園と小学校がひとつの組織です。そのため、大学の初等教育教員養成課程は、幼稚園から小学校6年生までの教育を網羅しています。

カナダの大学の教員養成課程で音楽や体育の教授法は必修ではありません。卒業に必要な単位のうち、芸術系科目(演劇、音楽、図画工作、ダンス)の教授法は3単位(1科目)、体育は選択科目です。日本のように、全ての科目を教える勉強をして教員免許を取得するわけではないのです。しかし、そのため、専門の教師の不足が問題になっている州もあります。

公立小学校の芸術科目は選択制

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Tyler Olson / Shutterstock.com
ケベック州の公立小学校では4つの芸術科目(演劇、音楽、図画工作、ダンス)の中から各学校が2科目選択をして教えることになっています。学校によっては日本では必修の音楽や図画工作を習わないこともあるのです。

カナダの芸術系の授業には、日本のような教科書はありません。そのため、教師のアイデアや創造力はとても重要です。息子が3年生のときの音楽の授業では、映画『パイレーツ・オブ・カリビアン』のテーマをソプラノリコーダーで練習していました。かっこいい音楽なので、家でもいきいきとリコーダーを吹いていましたよ。

担当する学年が決まっている

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ケベック州の多くの小学校では、学年ごとに担当する教師が決まっています。たとえば、1年生の担任は毎年1年生を受け持ちます。ですから、進級するときに次の学年の担任が誰になるか全く見当がつかないということはありません。

この仕組みは、教える学年が毎年変わるよりも、教師には負担が少ないはずです。また、親にとっても、何年もその学年を教えていることは安心感につながります。

教師同士で得意を伸ばし苦手をカバーする

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小学校の教師だからといって、小学校で教えるすべての科目が得意というわけではないでしょう。息子が3年生のときの担任は、科学やテクノロジーにはとても詳しかったのですが、図画工作は苦手でした。息子の学校では通常は担任が図画工作を担当します。けれども、その年は図画工作が得意な他の3年生の教師が教えていました。その代わりに、息子の担任は、他のクラスの科学とテクノロジーの授業を担当。学年の担任同士がチームとして、最適な教育環境を作ったのです。

専門性のある教師が担当してくれたおかげで、その年の図画工作と科学とテクノロジーのクラスは、とても充実していました。

教師の専門分野への情熱が、子どもたちの可能性を広げる

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日本の公立小学校の良いところは、授業の内容が全国どこでもほぼ同じということではないでしょうか。カナダの公立小学校でもフランス語や算数などの主要教科のカリキュラムが決まっています。けれども、その他の教科の授業内容は、教師がある程度自由に決めることができるのです。ですから、学校またはクラスごとに授業内容は異なります。

そのことを不公平だと考える人はいるかもしれません。けれども、教師の得意なことを学べるのは、子どもたちにとってポジティブなことです。好きなこと、得意なことを教える教師は、子どもたちが楽しむための工夫をする傾向があります。教師の専門分野への情熱が、子どもたちがその教科に興味を持つきっかけになることも。そう考えると、小学校のうちから専門の教師に学べることは大きなメリットと言えるかもしれませんね。
この記事は執筆時点のものですので、最新情報は公式サイト等でご確認ください。

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WRITER

LOA LOA  カナダ在住のフリーライター。Web媒体で子育てや語学学習についての記事を多数執筆。8歳の息子が0歳のときからはじめた絵本の読み聞かせは、今では私たちの生活になくてはならないものになっています。これまでに息子と読んだ絵本や児童書は、日本語、英語、フランス語を合わせて数千冊。息子が笑顔になる絵本を見つけるのが喜びです。