2018年1月29日 公開

『あかちゃんが選んだ絵本』開発秘話を開教授に聞きました!

東京大学の開一夫教授と出版社のディスカヴァー・トゥエンティワンが共同で開発した「あかちゃん学絵本」は、刊行半年でシリーズ累計5万部のベストセラーになっています。その開教授と編集担当の堀部直人さんに、絵本の開発秘話や読み聞かせの効果について伺いました。

あかちゃんが選んだ本「あかちゃん学絵本」とは?

「あかちゃん学絵本」とは、「あかちゃん学」を研究する、開一夫教授が運営する「東京大学あかちゃんラボ」と、出版社のディスカヴァー・トゥエンティワンのタッグで誕生した絵本です。あかちゃん自身にあかちゃんの好きな絵を選んでもらい、あかちゃんの好みを明らかにして作られました。刊行してすぐに話題となった「あかちゃん学絵本」は、なんと刊行半年でシリーズ累計5万部のベストセラーになりました!

この「あかちゃん学」絵本の誕生秘話や、どういった研究がされていたか、またあかちゃんへの読み聞かせについて開教授と編集担当の堀部直人さんにお話をお聞きしてきましたのでご紹介します。

「あかちゃんが本当に好きな絵本」はこうして生まれた

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東京大学大学院総合文化研究科の開一夫(ひらき かずお)教授
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開教授が運営する「東京大学あかちゃんラボ」では、あかちゃんが発達過程で必要な能力をどのように習得していくのかを科学的に研究しています。

「保育士になりたかった」というほどあかちゃんが好きという開教授は、以前から「あかちゃん向け」と謳った絵本を見て、それはあくまで大人が「あかちゃんが好きそうな絵」を選んだもので、本当にあかちゃんの好みかどうかわからない、と感じていたと話します。

そこで、実際に複数の絵をあかちゃんに見せて、あかちゃん自身に好きなものを選んでもらうという絵本作りのプロジェクトをスタートさせました。
でも、言葉も話せないあかちゃんに、どうやって選んでもらうのでしょう?
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実験では画面に複数の絵を表示し、あかちゃんがどれを一番長く見つめているかを計測
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このプロジェクトでは、月齢8~13カ月のあかちゃんに複数の絵を同時に見せ、どれを一番長く見るかを測定する「選択注視法」を使って実験を行いました。視線の動きをデータ化する「アイトラッキング」という技術を使い、あかちゃんがじっと見つめ続ける絵、つまりあかちゃん自身が好きな絵をデータに基づいて選んだのです。
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色も雰囲気もまったく異なる絵を並べて、あかちゃんの好みを探る
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そうしてできたのが、あかちゃんが選んだキャラクターの絵本『うるしー』、あかちゃんの目をくぎづけにした『もいもい』、言葉のイメージと絵をドッキングさせた『モイモイとキーリー』です。
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あかちゃんはいろんなことを考えている!?

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編集担当の堀部直人さん。ご自身も3カ月のお子さんをもつパパ
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この実験の様子を見た編集者の堀部さんにもお話を伺いました。

「あかちゃんだから、キョロキョロと周りを見て集中しないんじゃないかと思っていたんですが、意外とじーっと絵を見つめ続けるのでびっくりしました。しかも、アイトラッキングのデータを見ると、ちゃんと顔のあたりを集中して見ているんですよ」
「実は、最初に月齢の高いあかちゃんを対象にして実験を行ったところ、あまり明確な差が出なかったんです」と堀部さん。そこで、もっと月齢の低い1歳前後のあかちゃんを対象にしてみたところ、反応の強い絵とそうでないものがはっきりとわかれ、「多くのあかちゃんが好む絵」がデータとしてくっきり浮かび上がってきたそうです。

「月齢が高くなると、もういろいろなものを見たり聞いたりして学習しているので、それぞれの好みが分かれてくるのかもしれません」(堀部さん)。

お話を伺って、言葉で明確な意思表示をしていなくても、あかちゃんなりにいろいろなものを見て、考えて、どんどん吸収しているということがよくわかりました。

読み聞かせはいつからはじめればいい?

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書店で出版記念のイベントも開催
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この実験結果から、1歳前のあかちゃんでも、興味のあるものなら集中して見るということがわかります。実際、「あかちゃん学絵本」の読者の感想を聞いてみると……

「泣いているときに『もいもい』を見せたら笑顔になった」(月齢1カ月)
「普段はすぐに飽きてしまうのに、『モイモイとキーリー』には声を出して反応した」(月齢6カ月)
「絵をじっと見て、楽しそうにしていた」(月齢8カ月)

やはり「あかちゃんが選んだ絵」だからなのか、とても反応がいいようですね。

開教授によれば、「読み聞かせは2~3カ月ぐらいからはじめてもいいと思います。言葉の意味は理解していなくても、一緒に絵を見ながら親が語りかけるというコミュニケーションを通して、あかちゃんは『楽しい』と感じているはずです」

コミュニケーションの機会が増えることで、子どもの語彙が増えたり、コミュニケーション能力が高まるといった効果も期待できるそうです。

どんな絵本を読めばいいの?

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「あかちゃん学絵本」の読者アンケート結果を見せていただくと、絵本についての悩みでは「どの絵本を選んだらいいかわからない」という声が多数寄せられていました。そこで開教授に、成長に応じた絵本の選び方を教えていただきました。

「まだ言葉を理解する前の小さな赤ちゃんには、絵が中心の単純な絵本が向いていると思います。そして、少しずつ言葉を覚えてきたら、ストーリー性のあるもの、言葉中心の絵本に置き換えていくといいでしょう」

いろいろなタイプの絵本を見せて、わが子の好みを探ってみるのも面白そうですね。

地域の図書館などに足を運んでみると、おすすめ絵本のリストが置かれていたりします。また、図書館のホームページに「こどもページ」を設けているところも多く、年齢別のおすすめ本が紹介されているので、ぜひチェックしてみてください。

子どもにとっての絵本は音楽のようなもの

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それぞれの絵本を担当した作家さんたちと開教授
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子どもって「よく飽きないな」と思うほど、同じ絵本をくり返し読みますよね。
「でも、大人だって好きな音楽はくり返し聞きたくなりますよね。子どもにとっての絵本は、それと似ているような気がします」と開教授。

なるほど、そう考えると、読み聞かせは子どもにとって、単に楽しいとか面白いだけじゃなく、とても心地のいいものなのかもしれません。
ですから、親の方もあかちゃんの表情を見ながら、読み方を変えてみたり試行錯誤することも大切です。

「あかちゃんが本当に好きな絵本」で、読み聞かせの心地よさを一緒に味わってみてはいかがでしょうか。
この記事は執筆時点のものですので、最新情報は公式サイト等でご確認ください。

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WRITER

YUZU YUZU  フリーライター。東京都在住。出版社で書籍編集の仕事をしていましたが、夫の仕事の都合で2009年より台湾・台北へ。6年間の駐在生活中は娘二人を日本人学校に通わせながら、台湾師範大学の語学センターで中国語を勉強。帰国後はライターとして、主に台湾や子育てに関する記事を書いています。