2019年08月29日 公開

日本人にとってインターナショナルスクールは海外進学の近道なのか? 

早期英語教育熱が高まっています。インターナショナルスクール進学はグローバルに活躍する子を育て、海外の大学やボーディングスクールに進学する近道なのでしょうか?東京・南麻布の「東京インターナショナルスクール」副理事、坪谷良さんに詳しくお話を伺いました。

早期英語教育熱が高まっています。インターナショナルスクール進学はグローバルに活躍する子を育て、海外の大学やボーディングスクールに進学する近道なのでしょうか?東京・南麻布の「東京インターナショナルスクール」副理事、坪谷良さんに詳しくお話を伺いました。

インターナショナルスクールは誰のための学校か

東京インターナショナルスクール/ Tokyo Inte...

東京インターナショナルスクール/ Tokyo International School

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——インターナショナルスクールに進学させたいと望む方は増えているのでしょうか。

坪谷さん:日本人の方からの問い合わせが最近特に増えているということは無く、常に多いです。ですが、東京インターナショナルスクールは、原則的には日本で働く外国人の方のお子さま向けの学校です。都心にあることもあり、多くが駐在員の方。3割は2〜4年間ほどで転校し、5年以上在学されるお子さまは少数派という学校です。

海外で日本人が日本人学校に行くのと同じく、日本にある外国人学校です。日本人を多く受け入れているインターナショナルスクールもありますが、我々はそうではありません。日本人の方は1割程度いらっしゃいますが、お子さま、保護者双方とも英語でのやり取りが充分にできる語学力を有しているのはもちろん、帰国子女や、両親のどちらかが外国人のケースが多いです。

日本人家庭には入学に高いハードルがある!?

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東京インターナショナルスクールでは国際バカロレアのテーマに沿って、日本語教育にも力を入れています。反対に、英語が母国語の子どもたちがほとんどなので、第二言語としての英語学習は原則ありません。
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——日本人の方が入りたいと希望される場合はどのような条件があるのでしょうか。

坪谷さん:まず、入園・入学時点で、子どもの英語力が母国語かそれに準じたレベルが必要です。また、両親のどちらかが、英語が堪能である必要があります。また、日本の義務教育から外れるというリスクがあります。また、公的認可や国からの助成金が無いこともあり、必然的に授業料や諸費用は高額になります。無償化や補助などの対象外となるケースも多いです。

インターナショナルスクールは、皆さんが思い描くほど、日本人にとって良い学校ではないと思います。英語は堪能になりますが、では英語さえ喋れればいいのかというと、そうではありません。インターナショナルスクールでは、一般的な日本人の子どもが学習するレベルでの日本語学習や日本の文化・歴史を学ぶことはありません。

海外進学は有利になるかもしれませんが、日本語の能力低下や、日本人として学ぶべき歴史や文化、常識といったものが身に付かない恐れがあります。

もし、「将来は家族で海外に移住する」とか「子どもは中学からヨーロッパのボーディングスクールに入れる」などと決めているなら、インターナショナルスクールへの進学も良いと思います。最終的なご家族の判断も決定も尊重しますが、メリットの他にデメリットもよく理解しておいていただいた方が良いと思いますよ。

英語力だけでもNG!バランスよく力を付けないと意味が無い

21世紀を生き抜く力「グローバル・スキル」

21世紀を生き抜く力「グローバル・スキル」

ーー英語力だけが身に付けばいい、ということでも無いですよね。

坪谷さん:保護者の中には英語の必要性に直面している方もいるのではないでしょうか。今、仕事の取引で英語を使っているけれど、中高大の英語の授業ではモノにならず、卒業後に行ったワーキングホリデー1年で何とかした。けれど、自分の子どもにはもっと早い時から英語力を付ける環境を用意してあげたいと、思う方もいるようです。

ただ、これから求められているのは英語力だけではありません。東京インターナショナルスクールの関連会社である株式会社東京インターナショナルスクールグループで展開しているキンダーガーテン・アフタースクールでも8つの力をグローバル・スキルとして掲げていて、英語力の他にコミュニケーション力や表現力など、さまざまなスキルをバランスよく身に付けるべきだ、とご説明しています。英語力さえあれば評価してもらえたのはもう30年前までの話です。

英語ができても仕事ができなければ意味が無いですよね。とはいえ、将来「国際舞台に出たい」「国連で働きたい」と希望した時に、どんなに頭が良くても英語がまるでできないと仕事にならないのです。バランスが肝心だということですね。

ローカル性を大事にすることが逆にグローバルな時代に

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東京インターナショナルスクールの教室内に貼られていた標語の一部。「リスクをとって挑戦しなさい、失敗することもありますが、リスクを取らないと前に進めないよ」というメッセージは日本の学校ではなかなか教えないものかもしれません。
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ーーこの5、6年で親の英語教育熱が、早期化・低年齢化している印象がありますが、国際感覚も早くから身に付けておくために、インターナショナルスクールへの進学を考えている親も多いようです。

坪谷さん:東京インターナショナルスクールにも日々日本人の保護者からたくさんのお問い合わせをいただきます。ただ、安易なインターナショナルスクールへの進学はおすすめしていません。両親ともに日本人で、今後も日本を中心に暮らしていくのであれば、日本の学校に通い、日本語をきちんと学び、日本の文化や歴史、常識といったものをしっかりと身につけるべきです。そうした日本人としてのアイデンティティや基礎をしっかりと固めたうえに国際性を身につける方が、真の国際人としての力が付くと考えています。

第二言語の上手さは、第一言語がどれだけしっかりしているかに大きく関連します​​。「バイリンガル=日本語も英語も完璧」ではありません。バイリンガルだけれど、どちらも中途半端というケースも見受けられます。こうした理由からも、安易にインターナショナルスクールに入るのはおすすめしません。

日本の学校に通いながら「世界の学び」を受けられるのか

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東京インターナショナルスクールキンダーガーテンの教室。教室の一部にマットが敷いてあり、サークルタイムを行うのが特徴です。サークルタイムはアフタースクールでもあります。
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——東京インターナショナルスクールの関連会社である株式会社東京インターナショナルスクールグループで日本人向けの幼児教育やアフタースクール事業も手がけていらっしゃいますよね。

坪谷さん:我々がなぜ、日本人向けにも事業をやっているのかと言いますと、インターナショナルスクールに関心を持つ日本人家庭のニーズが大きく、それにこたえるためです。

幼児教育やアフタースクール事業は東京インターナショナルスクールの教育内容を反映しつつ、日本人にも適した内容になっています。

ーーインターナショナルスクールを考える方は、語学力以外にも、表現力など、日本の教育に物足りなさを感じている方が多いようですが。

坪谷さん:日本の学校で義務教育を受ける方は、アフタースクール等で確かな英語力と、表現力や考え方を身に付けて欲しいと思っています。

東京インターナショナルスクール本校とアフタースクール事業の2つにおいて、基本的に根底にある理念は同じです。「探究型カリキュラム」をベースにし、子どもに興味関心のあるテーマに沿って学習し、語学以外にも学びがあることを大事にしています。

英語を母国語としない子どもたちへの英語指導カリキュラムを充実させる一方で、ボディランゲージを多用するなど、言葉がわからなくても通じるようにもしています。

東京インターナショナルスクールキンダーガーテン/アフタースクール

英語で過ごす園での1日/東京インターナショナルスクールキンダーガーテン

東京インターナショナルスクールの関連会社である株式会社東京インターナショナルスクールグループは、2013年から日本の子どもへの英語教育を目的として、全国のパートナー企業と共に運営提携するキンダーガーテンやアフタースクールを展開しています。

東京インターナショナルスクールで活用されている「探究型カリキュラム」のメソッドに加え、英語を母国語としない子どもたち向けの英語学習法と、21世紀型学習を組み合わせた独自のカリキュラムで行われます。

昼間は日本の小学校に通って基礎教科を学び、「日本人としてのアイデンティティ」を確立。放課後に「グローバル・スキル」を学ぶのが狙いです。

キンダーガーテン(プリスクール)

年少~年長/週5日(1日5時間)
3年制の幼児園コース。英語の環境で園生活を過ごしながら、探究型学習を中心とした学習を行います。授業前、後の預かりサービスもオプションで利用可能。1クラス14名の少人数制です。英語コミュニケーション能力獲得に必要と考える総2,000時間の学習が、3年間通うことで実現できるように設計されています。

アフタースクール

年中〜小学校4年生/週3日以上(1日3時間)
幼稚園や小学校が終わった後、午後に週3~5日通学し、英語力とグローバル・スキルの獲得を目指すカリキュラム。スクールバス送迎や預かりサービス(宿題サポート、夕食サービス、21時までの延長可)付きの「学童コース」と、習い事として通える授業のみの「カリキュラムコース」があります。英語コミュニケーション能力獲得に必要と考える総2,000時間の学習が、3年間通うことで実現できるように設計されています。

LTE(Learning Through English)

2歳〜小学校4年生/週1日
発達段階に応じて設定されたテーマを英語で探究することで、楽しく効果的に基礎的な英語力とグローバル・スキルを獲得できるコースです。開講時間・対象年齢などは各スクールで異なります。

シーズンスクール(サマースクール)

年少〜小学校4年生/週3日以上(1日3時間)
夏休み(サマースクール)、冬休み(ウィンタースクール)、春休み(スプリングスクール)にシーズンスクールを開校。長期休みならではのアクティビティも充実したスペシャル・レッスンを受けられます。長期休み対応の預かりサービス(8〜21時)も提供しています。
そのほか、アフタースクール卒業生や帰国子女など一定レベルの英語力を持つ小学5年生~中学1年生対象の「アカデミック」コースも開催。

いずれも、東京(中目黒校、南麻布校、勝どき校、駒沢校、都立大校)、北海道(札幌円山校)、兵庫(夙川校)、福岡(大濠校)で展開。他にも今後、開校予定があるとのこと。

お話を伺って……

「将来は英語を自由に使いこなして、世界で活躍して欲しい」。そんな願いを持ち、海外の大学進学や大学留学も視野に入れ、未就学児の頃から英語教育をはじめる方も増えている印象です。中には、「バイリンガルのような英語力を身に付けさせたい」「日本の義務教育への期待感が低い」などの理由で、インターナショナルスクールへの進学を考える方も多いようです。

しかし、今回、東京インターナショナルスクールでお伺いしたお話によると、インターナショナルスクールで学ぶことがすべての人にとって最適な選択では無いようです。海外に拠点が既にある場合や、移住予定がある。または覚悟、理由がしっかりしている場合は別ですが、日本では義務教育から外れてしまうなど、大きなネックもあります。

キンダーガーテンやアフタースクールなど、日本の小学校に通っても、第二言語としての英語力やグローバル・スキルを身に付ける選択肢もあるので、考えてみられると良いかもしれませんね。

取材協力

国際バカロレア初等プログラム(IBPYP)・中等プログラム(IBMYP)、CIS(Council of International Schools)、NEASC(New England Association of Schools and Colleges)認定校。 国際バカロレア日本大使であり、同校の代表である坪谷ニュウエル郁子氏が自身の子どもたちに最適な教育を施す場として立ち上げたのが同校の発端。1995年設立、2013年9月より現在の南麻布に新校舎を建設し、移転。さらに新キャンパスを2024年に開校予定。高等部までの完全な国際バカロレア教育提供を目指す。

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この記事のライター

志田実恵
志田実恵

エディター/ライター。札幌出身。北海道教育大学卒業(美術工芸)。中高の美術教員免許所持。出版社でモバイル雑誌の編集を経て、様々な媒体で執筆活動後、2007年スペイン留学、2008〜2012年メキシコで旅行情報と日本文化を紹介する雑誌で編集長。帰国後は旅行ガイドブック等。2014年6月に娘を出産。現在は東京で子育てしながらメキシコ・バスクの料理本の編集のほか、食、世界の子育てなどをテーマにwebを中心に活動中です。