「赤ちゃんが夢中になる絵本」として大人気の『お?かお!』の著者・ひらぎみつえさんに独占インタビュー!シリーズで大ヒット中の「動くしかけ絵本」はどんな風に生まれたのでしょうか?大人にも思い出してほしい大切な気持ちがありました。連載『絵本はお友だち』Vol.3です。
絵本作家・ひらぎみつえさんインタビュー
「赤ちゃんが夢中になる絵本」として、テレビや雑誌、webなどでも数多く取り上げられている、今大人気の絵本です。
著者:ひらぎみつえ
出版社:ほるぷ出版
絵本講座生時代からひらぎさんの作品が好きで、その後は書籍のお仕事でイラストをお願いするなど、お仕事をご一緒する機会もありました。
今や絵本作家として大活躍のひらぎさんに、絵本のこと、子育てのこと、いろいろお話を聞いてみたい……ということで、今回のインタビューが実現しました!
まずは前編として、『お?かお!』などひらぎさんの絵本についてのお話をお届けします。
『お?かお!』誕生秘話:子育て中の思い出がきっかけ
ひらぎ ありがとうございます。
ほん 『お?かお!』は、今や置いていない本屋さんはないくらい、本当に大人気ですよね。
この絵本は、どんなきっかけで誕生したのでしょうか?
ひらぎ 絵本コンクールに出品した際に審査員だった編集者さんとの出逢いがきっかけです。赤ちゃん向けのクリスマスのしかけ絵本を出版する企画があり、声をかけていただきました。
ほん それが、絵本デビュー作である『サンタさん どこにいるの?』と『クリスマスパーティーはじまるよ!』ですね。
ひらぎ そうです。その後、「あかちゃんがよろこぶしかけえほん」として次にどういうテーマでやると面白いか、企画を考えていて……。何度か企画を提出しながらも「もっとないかな」と思って、気持ち悪くなるくらい出し切ったところで、このアイデアが出てきたんです。
ほん 気持ち悪くなるくらいアイデアを絞り出すって、すごいです……。
どういうきっかけで、この「顔のしかけ」のアイデアが出てきたのでしょうか?
ひらぎ 娘が赤ちゃんのころ寝かしつけで添い寝していたとき、すごく真剣に私の顔を動かしていたなって、思い出したんです。私の顔のあちこちをつねってぐいぐい。特に笑顔になるわけでもなく、ただひたすら真剣な表情で私の顔を動かしていました。赤ちゃんの薄い爪で容赦なく力を入れるから本当に痛くて……。
ほん 赤ちゃんに爪を立てられると、紙で指を切ったときみたいな痛さですよね。
ひらぎ そうなんです。でも、こんな風に私の顔で遊んでくれるんだな、かわいいな、という思い出があって……。
ほん 「赤ちゃんにとっては顔もおもちゃになるんだ」という思い出が原点なんですね。
ひらぎ そして、半円の形をスライドさせていくのって、顔っぽくないかな?と思いついて。そうすると一気にバババッと「顔のしかけ」のアイデアが5種類、浮かんで出てきたんです。
5種類のうち、表紙としてこちらを選んだ理由はありますか?
ひらぎ 感覚的に、「目が動く顔を表紙にすると一番目を引くのでは」と編集さんも私も思い、これを表紙に選びました。
ほん 本当に小さな赤ちゃんも反応する絵本ですよね。0歳児から楽しめる絵本なので、今私の中で「出産のお祝いに贈りたい絵本ランキング」第1位です!
「動くしかけ絵本」のパイオニアに……!?
ひらぎ はい。「工事車両」「動物」「食べ物」と、3つのテーマになっています。
ほん これらの「動くしかけ」も面白いですよね!
『お?かお!』も含め、ひらぎさんのしかけ絵本は「日本のしかけ絵本ぽくない」と感じました。海外のしかけ絵本っぽいというか……。
ひらぎ 確かに、日本ではしかけ絵本というとポップアップ絵本が多いですね。
ほん そういう意味では、「動く絵本界」でひらぎさんが新たなパイオニアになっているのではないでしょうか!?
ひらぎ どうなんでしょうか(笑)。
ほん もともと、動きが連動したりつながったりするしかけを考えるのが得意だったのでしょうか?
ひらぎ 確かに、からくりやピタゴラスイッチのようなしかけを考えるのは好きでしたね。
頭の中で「こうしたらここにひっかかって、こうしてこうなるんじゃないかな……」というのを考えるのが好きだったかもしれません。
ブルブル ブルドーザー
著者:ひらぎみつえ
出版社:ほるぷ出版
ひらぎ くるくる回してミキサー車からコンクリートを出したり、ショベルカーがごっそりと土をすくったり……。動きと絵がうまく合うように工夫しました。
どうぶつダンス
著者:ひらぎみつえ
出版社:ほるぷ出版
ひらぎ これは、無限ループなんです。一度の動きで完結する遊びも楽しいのですが、ずっと続けてリズミカルに動かすことができたらまた面白いんじゃないかと……。リズムを感じるしかけができないかと考えて、そこから「動物たちのダンスショーにしよう」と思いつきました。
ほん 狙い通りいつまでも遊んでいたくなる楽しさです!
あーおいしい!
著者:ひらぎみつえ
出版社:ほるぷ出版
ひらぎ 「食べる」って子どもにとって身近なことで、きっとすごく好きなことだから、読みながら「パクっ」なんて一緒に食べてくれたらいいなと思って作りました。
ほん どれもおいしそうで食べたくなります!
ひらぎ 表紙は、ペロっとひとなめでアイスクリームがなくなっちゃうようにするために、アイスの大きさ、全体のバランス、なくなったあとに不自然にならないクマのフォルムなど、いろいろとこだわりました。
ほん なるほど……。表紙だからタイトルも入れないといけませんものね、苦労を感じます……!
「プリミティブな気持ちよさ」を追求して
それは、『ブルブル ブルドーザー』でショベルカーが土を掘ってごっそりとなくなる、などにも共通します。
「掘るって楽しい」「あったものが全部なくなるって気持ちいい」というのは、みんなが同じように「気持ちいい」と感じるのではないか、と。
ひらぎ こういうプリミティブなところを追求していくと、赤ちゃんも大人も関係なく共感できるんじゃないかって思うんです。 親子で遊んでいるとき、子どもは笑ってるけど親は「何がおもしろいのかわからない」という状態ってよくあると思うんですが、それってちょっとさみしいかなと……。
できれば、どちらも同じ思いを共有できる方がいいな、と思っているんです。
ほん 親も「気持ちいい」と思えたら、読んであげたい気持ちが増しますしね。
ひらぎ 親子で気持ちいい、という思いを共感し合えたら成功かな、と思って作っています。
ほん ぜひ、多くの方にこの気持ちよさを親子一緒に味わっていただきたいですね!
大人も共感できる絵本なら、親子の時間がもっと楽しく
確かに、大人になるとそんな気持ちよさを意識する機会が少なくなるかもしれません。それよりも理性やルールが先回りしてしまっていることも。
大人ももっと自然に「気持ちいい」という感覚に素直になってもいいのかもしれないですね。ひらぎさんの動くしかけ絵本を見ていると、そんな風に感じてきました。
次回の【後編】では、5歳のお子さまを育てるワーキングママとしてのひらぎさんの日常や子どもにかける思いなどをお届けします。
どうぞお楽しみに!