2020年1月20日 公開

英国のキャリア教育!?ワークエクスペリエンスとは?

日本とは学校・学年のシステムが異なるイギリスの教育ですが、今回紹介するワークエクスペリエンス(職業体験)はなかなかユニークな取り組みです。どんなことをするか、何を学ぶのか?学生の95%(14〜16歳)が経験するワークエクスペリエンスの詳細を現地からお伝えします!

イギリスのワークエクスペリエンスとは?職業体験の詳細を取材

イギリスはプライマリースクール(小学校)を卒業した後にセカンダリースクール(11・12歳から15・16歳までの学生が通う中学校・高校のようなもの)に通います。

セカンダリースクールに通う10年生と11年生(14〜16歳)の学生たちの多くは、「ワークエクスペリエンス(Work Experience)」と呼ばれる職業体験を行います。

英国キャリア教育の一環で、無給のインターンシップです。

筆者の周囲で、実際に体験した学生たちに詳しい内容を取材しましたのでご紹介します。

ワークエクスペリエンスをする場所はどんなところ?

ワークエクスペリエンスができる場所は、オフィス、市役所などの役場、医療現場(病院や獣医など)、店舗、ミュージアム、教育関係など実にさまざまです。

学校側から決まった職場を紹介されるのではなく、基本的に学生たちが自分たちで考えて選びます。

ただし、職業によっては未成年の子どもが働くのに不適切な職場もあります。なので、学生からワークエクスペリエンスを申し込まれて受け入れを決めた職場は「未成年が働くことに適切な職場である」という証明書類を学校へ提出しなければなりません。

周囲で、実際にこんな職場でワークエクスペリエンスを行ったという例を聞くと以下のような場所がありました。

・小売店:楽器店、パソコン修理店、洋服屋など
・役所や教育関係:町役場、図書館、学校や幼稚園、学童の子どもの世話をする施設など
・その他:オフィス(IBM、NHSなど)、銀行などの金融関係、警察など

ワークエクスペリエンスの仕事内容は?どんなことをするの?

図書館で司書のワークエクスペリエンスをした男子学生の仕事内容例をご紹介します。

・1日8時間本の貸出・返却業務
・書架・書庫の整理
・イベントの手伝い

司書の仕事を本格的に体験できたようです。

学童の施設で仕事をした女子学生は……。

・学童の子どもたちへのおやつの提供
・子どもたちの安全面の監視
・一緒に遊ぶ

など、実際のスタッフの仕事と変わらない内容で職業体験を行ったそうです。

体験した学生たちは、仕事を覚え、与えられた役割を責任をもって遂行することを通して、社会で働くことの疑似体験ができ、緊張しながらも大変有意義な時間になったと話してくれました。

14〜16歳で職業体験するメリットは?仕事探しで自分と向き合える

ワークエクスペリエンスは、単に本格的な仕事体験ができるというほかに、実は、さまざまなメリットがあります。
まずは、体験したい職場選びからはじまります。ワークエクスペリエンスは1度きりのチャンスです。また、1週間毎日通って1日中働くので、適当に選ぶわけにはいきませんよね。

本当に有意義な体験をし、行きたい職場を選ぶためには、学生たちは自分自身と向き合う必要があります。ですから、学生たちは自分が興味があること、将来の夢などいろいろな可能性を考えます。それによってぼんやりしていた将来「働く」ということが、少しずつ現実味を帯びてくるのです。

「14~16歳で将来の仕事を考えるのは早いのでは?」という意見もあるかもしれません。しかし、2016年以降、イギリスでは16歳でセカンダリースクールを卒業した後、進学するか見習いとして働くかなど、18歳までは必ず何らかの教育や訓練を義務教育として受けなければならないように法律が変わりました。

早ければ16歳から仕事を始める可能性もあります。進学するなら、大学の専門分野を決定するために、将来何を学びたいか、その後にどんな職に就きたいかは、後回しにできない時期に差しかかろうとしているのです。

自ら社会に接して得た体験は成功も失敗もすべてが糧になる

体験したい仕事先の候補を考えたら、学生自らその職場に「ワークエクスペリエンスをさせてほしい」という問い合わせのメールを出す必要があります(もしくは、なんらかの方法でコンタクトをとります)。

ビジネスメールの書き方を学び、緊張しながらも自分の力で問い合わせすることは、大変良い機会です。

また、人気がある職業や職場は早い者勝ちで決まっていくので、早めに考えて決め、行動することも重要です。体験したいと思った職場に連絡をしたらもうすでに他の学生に決まっていて、別の候補を考えなければならなかった!という体験談は珍しくありませんでした。

他の理由で断られることもあり、中には落ち込む学生もいるそうです。ですが、自分で考え、行動した結果は、失敗も喜びも、最終的にはすべてが実際の社会と接して得る貴重な経験となるのです。

職業体験後の効果は?日々の学習・習い事の意欲UPにもなる!

ワークエクスペリエンスは、実は絶対にしなければならないというものではありません。学校は推奨しますが、あくまで学生自身の選択で行うか行わないかを選べます。また、成績や単位に関わってくるわけでもありません。

ですが、ほとんどの学生がワークエクスペリエンスに挑戦してみると決断するそうです。やはり彼ら自身が職業体験が必ず何かの糧になると信じているからだといえるでしょう。

すでに将来の進路を決めている学生にとっては、憧れの世界を身近に体験できる貴重な時間になります。「体験してみると予想と違った」という場合も、これから進みたい道が見えてくるヒントになるでしょう。

体験後はより一層、学業や習い事の意欲アップにもつながるようですよ。

ワークエクスペリエンスの意義や魅力は

多感な年齢で「どうして勉強するの?」と学習意義や将来の進路を真剣に考える時期こそ、実際に社会に触れるワークエスペリエンスにチャレンジする意義があるようです。

私たちが子どもの頃はなかったと記憶していますが、日本でも、文部科学省のキャリア教育の一環として2005年に中学生の職場体験学習がスタートしています。職業体験の機会は子どもたちにとって、きっと貴重で魅力的な体験になるのではないかと感じています。
取材・文・イラスト:いしこがわ理恵
在英13年目の2時の母、ライター兼イラストレーター。武蔵野美大卒。現在は英国で日本語教育・日本語子ども会活動にも従事。海外生活・育児経験を活かした記事を執筆中。
※いしこがわ理恵さんのイギリス漫画レポートの記事はこちら↓↓↓
イギリスの教育事情を現地発信! 英国すくすくレポ
この記事は執筆時点のものですので、最新情報は公式サイト等でご確認ください。

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WRITER

いしこがわ理恵 いしこがわ理恵  在英11年目ハンドメイド好きの2児の母。武蔵野美術大学卒業。現在は教育に携わる仕事の他に、日本にルーツのある子どもたちを対象とした日本語子ども会活動・児童文庫活動も行っています。興味の範囲が幅広いので、常にいろいろな方向にアンテナをはりつつ情報収集が日課です。ハッピー子育てに役立つ情報をみなさまにお届けできれば嬉しいです。