英語スキルを測定するテストの1つ「IELTS(アイエルツ)」。海外留学や移住の際の資格として、また大学入試を有利にする民間資格としても、今注目を集めています。IELTSのメリット・デメリットやテスト内容を詳しく解説します。
IELTS(アイエルツ)とは?
IELTSは、International English Language Testing Systemの略で、英語力を測る英語検定の1つです。
ブリティッシュ・カウンシル、IDP:IELTS オーストラリア、ケンブリッジ大学英語検定機構が共同運営で保有する試験で、アメリカ英語が中心のTOEFLと異なり、イギリス英語が多く使われているという特徴があります。
オーストラリア、イギリス、カナダ、アイルランド、ニュージーランドなど、世界各国の教育機関で受け入れられている試験です。
日本のIELTSは、ブリティッシュ・カウンシルと日本英語検定協会が共同で運営しています。
なお、IELTSは受験者について16歳以上を推奨としていますが、合否を判定する試験ではないので、どのような英語レベルの方でも受験は可能です。
IELTSの種類
IELTS Academic Module(アイエルツ アカデミック・モジュール)
IELTS Academic Moduleは、高等教育を受ける環境において必要な英語運用能力を備えているかどうかを測ります。
主に学士や修士の取得を目指して海外の大学に留学をしたい方や、英語圏の専門的機関での就労を目指す方向けの試験です。
IELTS General Training Module(アイエルツ ジェネラル・トレーニング・モジュール)
IELTS General Training Moduleは、日常生活で利用される実践的な英語力を測ります。
学士以下の留学やトレーニング、自国や英語圏での就労やキャリアアップにおすすめの試験です。
英国ビザ申請用IELTS
英国での就学や就業を希望する場合、英国ビザ申し込みのために、
・IELTS for UKVI(Academic/General Training)
・IELTS Life Skills
など、英国内務省が認めたSecure English Language Tests(SELT)での英語能力の証明を求められることがあります。
日本のIELTSの現状は?
東大や外務省でも英語能力の判断基準に採用
IELTSは、日本国内の大学入試や就職でも、合否の判断基準として採用されています。
たとえば東大の推薦入試において、外国語に関する語学力の証明書の1つとして提出できますし、外務省も専門職員として勤務する場合は、TOEFLまたはIELTSで一定のスコアを有していることを推奨しています。
受験者数も増加中
IELTSの受験者数は、世界で年間300万人以上。
日本でも受験者数は増加傾向にあり、受験できる会場も2019年7月現在で全国16都市と増えてきています。
TOEICとの違いは?
日本でメジャーな英検の1つに、TOEICがあります。
TOEICとIELTSの違いは、TOEICはマークシート方式なのに対し、IELTSは記述式であるという点が挙げられます。
単語のスペルミスも減点対象となるため、TOEICとは異なる対策が必要です。
IELTS試験を受験するメリット
入学審査に採用・認定している大学や大学院が多い
IELTSは、世界140か国、合計1万以上の機関が認定している試験です。
入学審査の1つとして採用・認定している大学や大学院も多いため、留学を検討している場合は英語力の証明に役立ちます。
また日本の大学においても、2018年8月現在で250校以上が、IELTSを入試における内申点の加点や試験免除に活用しています。
日本人が高得点を取りやすいテスト形式
スピーキングは1対1の面接
IELTSテストのスピーキングは、1対1での面接官との対面式です。
聞き返したり、相づちをうってもらったりできるので、コンピューターに向かって1人で話す形式のTOEFL iBTに比べると、簡単だと感じる方が多いようです。
TOEFL(トーフル)に比べるとやや受験料が安い
英語検定の1つとして有名なTOEFLの受験料は235USドル。日本円で2万7,000円ほどかかります。
一方でIELTSの受験料は2万5,380円ですから、TOEFLに比べると若干安いですね。
試験実施日数が2日間の場合がある
筆記テストとスピーキングテストは同日に実施するのが基本ですが、東京と大阪の会場では、筆記テストの翌日にスピーキングテストを行う2DAYも選べます。
どちらが良いかは個人の状況や好みによるかと思いますが、2日間に分かれていた方がそれぞれに集中できるという方にとってはメリットがあるかもしれません。
IELTS試験を受験するデメリット
試験会場が少ない
IELTSを受験できるのは、2019年7月現在、札幌、仙台、埼玉、東京、横浜、金沢、松本/長野、静岡、名古屋、京都、大阪、神戸、岡山、広島、福岡、熊本という全国16都市に限られます。
受験可能な都市が少ないのは、大きなデメリットといえるでしょう。
試験実施日が少ない
IELTSは会場によっては、数か月に1度しか試験を開催していません。
全国で月に3~5回試験が実施されているTOEFLに比べると、試験実施日が少なく受けにくいというのも難点です。
IELTSの試験内容
試験科目
試験では、ライティング、リーディング、リスニング、スピーキングという4つの技能をチェックします。
・ライティング(Writing)
2つの課題(Task)に対して英文を作成します。試験時間は60分です。
・リーディング(Reading)
3つの問題文(パッセージ)に対して40問出題されます。試験時間は60分です。
・リスニング(Listening)
4つのセクション(日常会話・日常生活に関する説明・教育現場での会話・学術的なテーマに関する説明)からなり、英語の音声を聞いて設問に答えます。
問題は40問、試験時間は約30分です。
・スピーキング(Speaking)
試験管と1対1で対話し、自己紹介や指定されたトピックに関するスピーチ、ディスカッションなどを行って、会話の内容や主張を理解できているか確認します。
試験時間は11~14分です。
試験方法
テスト結果
合格・不合格はなく、結果は1.0から9.0のバンドスコアで示されます。
リスニング、リーディング、ライティング、スピーキングのパートごとの英語力がバンドスコアで示され、総合評価としてオーバーオール・バンド・スコアが与えられます。
また、IELTSの認定期間は、通常2年間となっています。
2年以上経過した成績は有効と認められない場合があるため注意が必要です。
IELTS(アイエルツ)の受験料は?
IELTSの受験料は2万5,380円です。
なお、イギリスの教育機関や移民局から要請された場合のみに受験するLIELTS for UKVIの受験料は3万600円、IELTS Life Skillsの受験料は2万3,000円です。
IELTSは英語の実践力を鍛えられる検定試験
日本では知名度が低く、情報も少なかったIELTSですが、現在ではさまざまな英語学校でIELTS対策コースが設けられるなど、注目が高まっています。
単純な英語の知識が求められるマークシート形式の検定とは異なり、IELTSのスコアアップを目指すことで、文章の構成力や自分の意見を伝える表現力、アカデミックな語彙力など、実践的な英語力が身につくという点も大きな魅力といえるのではないでしょうか。
また、2019年8月からはJSAF(日本スタディ・アブロード・ファンデーション)が、コンピューターで受験できるIELTSの実施をスタートさせました。
受験方法が増えたことで、日本国内での受験者数もますます増えそうです。ぜひ今後も注目してみてくださいね。